■ under warter ■
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風もなく、波の立たない真っ黒な水面は、
雲一つない空をうつして、まるで満天の星空のように見えた。

かれの手が"いってらっしゃい"と動く。"いってきます"。
ライトが消える。わたしは独りになる。

ゴムボートは滑るように、湖の中ほどを目指す。
巨大な円筒形のシルエットが徐々に近づく。水の中にそそり立つ5本の柱。



わたしはたどり着く、その場所に。
うしなわれたものたちの記憶。あの日々の名残。

ほこりっぽい風と、よどんだ水の匂い。たちのぼる工場の煙、塩分を含んだ湖からの風。
友人たちの笑い声、地下水を汲み上げるポンプの音、わたしの名前を呼ぶあの人の声。
何百年も昔だといわれれば、そんな気もするけれど、まるで昨日のことのような。

涙が、あふれだす。悲しみではなく、もっと透明な何か。

わたしを呼ぶ声が聞こえる。
わたしが最後に聞いた、あの声が、今もわたしを呼んでいる。
ごめんなさい、世界が壊れてしまったのは、わたしのせいなのかもしれない。

涙は、とめどなく流れつづける。何も見えなくなる。

ごめんなさい。

でも、ありがとう。



inspired by 蝸牛都市(劇団天使エンジン)



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