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Jun. 25 2002
太陽系に似た惑星系が初めて発見される

http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20020617304.html(hotwired)
少し、旬を外しているけれど、なんだか誤解している人が多いみたいなので・・・。

実は、これまでも太陽系外の惑星は結構沢山見つかっている(記事にもあるようにもう80個ぐらいになる)。でも、これまで見つかっていたのは、距離にすると地球と太陽の間よりも近い距離を回っている、公転周期(要するに1年)が数日から数週間という惑星ばかりだった。今回見つかったのは、木星の距離ぐらいを巡る、木星ぐらいのサイズの惑星。だから「太陽系に似た」という但書きがついているわけですね。

これまでの経緯を知っていると「やっと見つかったか」という感じ。


さて、ちょっと太陽系外惑星の見つけ方を書いておこう。
今一番メジャーなやり方は、ドップラー効果を使って早さを測る方法。惑星が周りを回ると、中心の恒星はぶるぶる震える。このぶるぶるの速さを測るわけですね。具体的には、ドップラー効果のせいで、恒星がこっちに近づいているときはちょっとだけ青く、遠ざかっているときはちょっとだけ赤く見える。この差を測るわけ。

分かりやすいから太陽と木星を例にとろうか。「太陽の周りを木星が回っている」という風に学校で習うけれど、実はこれは正しくない。正確に言うと、この両者は「太陽と木星の重心を中心に回っている」。えーと、たとえば、天秤の左右に太陽と木星を載せると、当然、重心の位置はものすごく太陽に近くなるよね(太陽のほうがものすごく重いから)。でも、当然この重心は太陽の中心とは絶対に一致しない。この天秤をつるしてぐるぐる回すと、太陽のほうはぶるぶる震えているみたいに見えるはずだ。

太陽系でいうと、木星や土星みたいな重い星は太陽を大きく動かす。例えば木星はちょうど太陽の半径くらいの振幅で太陽を揺らしている(結構揺れてるんですねえ)、揺れの周期は要するに公転周期だから11年とちょっとでひと揺れっていう感じ。もちろん、地球だって太陽を揺らしているけど、軽いからほとんど影響を与えていない。

この揺れを何十光年先から観測するわけだから、その精度はかなりのもの。今や、速度差にして秒速15m(時速54km)の動きも検知できるらしい。


そんなこんなで、1995年に太陽系外惑星が始めて発見されたとき、世界中の天文学者がそのデータに目を疑った。スイスのジュネーブ天文台のメイヤーとケロッツが発見した「ペガサス51」を回っていた惑星は木星の半分ぐらいの重さがあるにもかかわらず、公転周期が4日しかなく、中心の恒星からの距離が0.05AU(地球から太陽までの距離の1/50)しかなかったからだ。

なにしろ、みんなそんな所に惑星が安定して存在できるとは、これっぽっちも思ってなかった。なにしろ、太陽系で言えば、太陽に一番近い水星のさらに内側、距離にして1/5ぐらいのところを、ものすごい勢いで回っていたんだから。要するに科学者たちは、木星みたいな惑星を見つけようとしてデータを解析してたわけやね。つまり、公転周期が10年以上で恒星までの距離が地球の5倍前後の惑星。そりゃ見落とすって、タイムスケールがぜんぜん違うもの。

実は、メイヤー&ケロッツとまったく同時期に、同じように太陽系外惑星を探していたチームがあった。彼等の方が観測していた期間も、対象としていた恒星も数が多かったけれど、スイスチームに先を越されてしまった。実は、その可哀想なチームというのが、今回太陽系に似た惑星系を発見したカルフォルニア大のマーシーとバトラーだったりする。をを、ドラマチック。

その後、同じように、恒星のすぐ近くをものすごい勢いで回る惑星「ホット・ジュピター」は次から次へと見つかった(実はそのうちの半分以上がマーシー&バトラーによるもの)。でも、その大半が地球の内側ぐらいの軌道を回る奴ばっかりだった。しかも、ほとんどが楕円軌道。シュミレーションによると、こういう環境では地球のような小さな星は安定して存在できない。

なぜ、これまで、木星によく似た軌道を持つ太陽系外惑星が見つかっていなかったかというと、一つには検証にとても時間がかかるから。仮に周期が10年だとすると、ドップラー効果で周期を確定するのに最低でも5年かかることになる。それが、他の天文現象じゃないかどうかを確定するためにはさらに時間がかかるはずだ。それにひきかえ、ホットジュピターはせいぜい数日から数週間で周期が確定するからずっと検証しやすい。一度データの見方が分かれば、ほいほい見つかるのも道理というものですな。


さて、この発見が素晴らしいのは、太陽系が普通の惑星系と比べて、どれくらい特殊で、どれくらい一般的な形をしているのかが分かるかもしれないという事。これまで、観測の対象はたった一つしかなかった(もちろんこの太陽系)。だからこそ、ペガサス51の「凄い勢いでぐるぐる回る巨大惑星」が、なかなか見つけられなかったわけやね。どうやら、僕らが見ている太陽系は、「あたりまえ」じゃないのかもしれない。常識がぐらつくっていうのは、スリリングで、なかなかめでたい事じゃないだろうか。


最近、この分野でいい入門書が2冊も出た(しかも新書だ。小さい!安い!)。どっちを読んでもOK。微妙に守備範囲が違うので2冊とも読めばさらに吉ですね。いや、新書だと勧めやすくていいなあ(だって科学書って高いんだもの)。

井田茂『惑星学が解いた宇宙の謎』洋泉社新書 (bk1
こちらのほうがちょっと専門的(宇宙論の解説は必要だったんだろうか?)。我々の住む太陽系がどうやって形成されたかっていう、太陽系形成論に関する記述が詳しい。

井田氏のインタビューは以下のサイトで読める。こちらもおすすめ。
Netscience Interview Mail
http://www.moriyama.com/netscience/Ida_Shigeru/index.html

観山正見『太陽系外惑星に生命を探せ』光文社新書 (bk1
どちらかというと、こっちの方は浅く広くという感じ(字も大きいし)。
敢えて難をいえば、タイトルにある「生命を探せ」の部分は前書きにしか出てこない。あとは、ずっと太陽系外惑星を探す話。編集の方針かもしれないけど、どーかと思うぞ。

(Jun. 25 2002 updated)

うは、ドップラー効果の青と赤が逆だったよ。>ありがとう、M氏。
(Jun. 25 2002 updated)

by isana kashiwai