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Jul. 30 2002
計算機と理科年表で遊ぶ

※今回は、数式や数字が沢山出ます。苦手な方はごめんなさい。ま、たまにはこんなのも。

あけてくれカネゴン氏経由でMuPADという数式処理ソフトを知る。いやー面白いわこれ。
まあ、そうそう使いこなせるほど簡単なソフトじゃないんだけど、超高性能の電卓として使う分にはすごく面白い。方程式を解いたり、グラフを書いたり、三角関数、指数・対数関数、微積分、行列計算・・・。算数をやる分には思いつく限りのことはたいていできる(ちなみに式がわかっていて、値がわかっているものを数学とは言わない。たぶん)。

さて、理科年表を片手に、ちょっと遊んでみよう。とりあえず目標は「木星の静止軌道から見た風景」ってとこで・・・。地球の静止軌道は高度3万6千Km。これはちょっと調べればどこにでも載っている。じゃあ、木星の静止軌道はどれくらいの距離なのか?木星は直径が地球の10倍以上あるのに1日が9.4時間しかない。木星の静止軌道からはどんな光景が見えるだろう?

※ここから先はうだうだと計算が続きます。結論が知りたい方は記事の末尾へどうぞ。


まず、人工衛星のスピードから始めよう。人工衛星はどうやって飛んでいるのか?はい、「重力に引かれて落ちる力と外へ飛び出そうとする遠心力がつりあっている」というのが正解(ホントか?)。

バケツに水を入れて振り回す」のを想像すればわかるように、スピードが上がれば上がるほど遠心力は強くなるし、一方で重力は両者が離れれば離れるほど弱くなる。これが釣りあっているわけやね。じゃあ、どれくらいのスピードが必要なのか?

はい、公式です。覚える必要なんかありません。そこら中に落ちてますから。

重力の公式(高校で習ったっけ?)
距離r離れた、質量M?mを持つ2つの物体に働く重力は次の公式で求めることができる。Gは万有引力定数で、6.672*10^-11(10^-11というのは10の-11乗という意味)。


F=-G*((M*m)/r^2) ・・・(MuPADでの記述です。以下同)

遠心力の公式(これも高校で習いますね)
質量mの物体が速度v、半径rで円運動するときに受ける遠心力は次の公式で求められる。



F=(M*v^2)/r

この二つがつりあうんだから、イコールでむすんでしまえばいい(いいなあ、大雑把で)。



(M*v^2)/r=-G*((M*m)/r^2)

これをvを求める式に変形すればOK。



v=sqrt(G*m/r)

これが、質量mの惑星の周りを半径rで回る人工衛星の速度を求める式。

ちょっと遊んでみよう。理科年表をめくって・・・。
地球の半径は6.37*10^6(m)、質量は5.974*10^24(kg)、Gは6.6726*10^-11(m^2/kg^2)なので・・・。

sqrt(((6.672*10^(-11))*(5.98*10^24))/(6.37*10^6))=7914.234141(m/s)
=7.9(km/s)

つまり地表すれすれを飛ぶ人工衛星があるとすると7.9km/sになる。音速が0.33145km/sだから
・・・音速の23.8倍。この速度のことを「第一宇宙速度」という。物体が円軌道を描くために必要な最低速度のことです。

ちなみにスペースシャトルだと高度400kmぐらいだから・・・

sqrt(((6.672*10^(-11))*(5.98*10^24))/((6.37+0.4)*10^6))=7676.871593(m/s)
=7.6(km/s)

ふむ、あまり変わらないねえ。

を、この数字でスペースシャトルが地球を一周するのにかかる時間が出せるなあ。



中学生でも解けますな。

(2*3.14*(6.37+0.4)*10^3)/7.67=5543.1(s) はい、92分。



さて、本題に戻ろう。静止軌道というのは、人工衛星が軌道を一周するのにかかる時間と惑星が1回転する時間(1日)がぴったり一致しているために、地上から見ると、まるで天空の一点に衛星が静止しているように見える軌道のこと。

さっきの「v=sqrt(G*M/r)」が軌道上の衛星の速度だから、この速度で惑星を一周する時間がきっかり一日になればいい。時間と距離と速度の関係式は小学生でも知ってます。

速度(v)=距離(D)/時間(T)をこの式に代入。



変形してrを求めます。



r=(GmT^2/4π^2)^(1/3)

さて、やっぱり地球を例に計算してみよう。なにしろ、答えがわかっているので検算する必要がないからねえ(^^;

地球の一日(恒星日)は23時間56分4秒(8.616*10^4秒)。
恒星時というのは、惑星が太陽系外の恒星に対して一回転する時間のこと。逆に太陽に対して一回転する時間を太陽日という(当然、24時間)。地球が太陽の周りを公転しているために、この両者にずれが生じる。地球が1回転する間に、太陽と地球の位置関係が微妙に変化するわけですね(4年に一回うるう年で調節するのはこのため)。

では、さっきの式に値を入れて、地球の静止軌道の高度を求めよう。
(((6.6726*10^-11)*(5.98*10^24)*(8.616*10^4)^2)/(4*(float(PI))^2))^(1/3)
=42177675.35(m)

これは地球の中心からの距離なので、地球の半径を引く。
42177675.35-6378000=35799675.35(m)
=35799.675(km)
を、いい感じ。地球の静止軌道は3万5799km。だいたいあってますね。

地球の静止軌道上での衛星の速度は・・・
2*42177675.35*float(PI)/(8.616*10^4)=3075.790971
3.075(km/s)ぐらい。


では本番にいってみよう。木星での計算。

木星のデータ
質量:1.900*10^27(kg)
1平均恒星日:9時間56分(35760s)
半径:71492000m

(((6.6726*10^-11)*(1.900*10^27)*35760^2)/(4*(float(PI))^2))^(1/3)
=160138095.3(m) 

これから半径を引くと
160138095.3-71492000=88646095.3(m)
=88646.0953(km)

木星の静止軌道は高度8万8646km。
んー、遠いような、近いような・・・。

ちなみに、この軌道での軌道速度はこんな感じ。
2*160138095.3*float(PI)/35760=28136.94987(m/s)
=28.136(km/s)

参考までに、木星の第一宇宙速度
sqrt(((6.6726*10^(-11))*(1.900*10^27))/(7.1492*10^7))
= 42111.0066(m/s)=42.11(km/s)

自転速度
(2*float(PI)*(7.1492*10^7))/35760
=12561.45089(m/s)=12.56(km/s)



さて、実際に静止軌道から木星を見たら、どんな感じに見えるんだろう?

惑星の中心から軌道までの距離を底辺、惑星の半径を高さとする直角三角形を考えると、単純な三角関数で換算できる。



tanθ=a(高さ)/b(底辺)

静止軌道から見た木星のサイズの比率を求めてみる。
tanθ=71492/160138.0953=0.4464396799
てきとーなサイズに直すと、
15/0.446439679=33.59916402
直径30cmの円を約30cm離れたところから見たサイズとだいたい同じ。

ちなみに、静止軌道から見た地球のサイズは・・・
tanθ=6378/42177.67535=0.1512174378
15/0.1512174378=99.19490912
同じように直径30cmの円を約1m離れたところから見たサイズとだいたい同じ。

結構遠いねえ。

(Jul. 30 2002 updated)

今回、数式(赤字の画像)の作成にはmozillaのMathML作成ツールを使ったけれど、どうやってもソースが保存できない。仕方なく、画像に落して張りつけた。なんででしょう?

(Jul. 30 2002 updated)
あ、数式のMとmが途中から逆さになってるなあ。まあ、答は変らないからいいか。

by isana kashiwai