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Sep. 09 2002
H2A-F3の立っている場所

さて、明日の打ち上げを前に、ちょっと現状のおさらい。日本のロケット開発が置かれているポジションについて。最後にいつもの付録つき

コストは半分、搭載量は3割増 「ポストH2A」で目標
http://www.asahi.com/national/update/0908/031.html
H-2Aはこの3号機が成功すれば、来年度からの打ち上げは民間主導で本格的な商業打ち上げに移行する予定。そのあと宇宙開発事業団(2004年度より、宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所と統合され、宇宙航空研究開発機構と改称される)はH2Aの後継機開発に入る予定。

文部科学省の宇宙開発委員会では、今後日本の宇宙開発は再利用型への移行を進めるという決定がなされているけれど、その前にもう1機、H2の技術の延長線上にある使いきりロケットの開発をするみたいですね。

個人的には大賛成。予算切られて目処の立っていないHOPEを進めるよりは、H2Aのさらなる低コスト化と信頼性の向上を進めるほうがビジネス的には絶対に有利。だって、新規開発の再使用型より、技術の枯れた使いきりの方がどう考えても安いんだから(HOPEは正確な意味での再利用タイプじゃないしね)。

え、スペースシャトル?あれはぜんぜん安くないよ。衛星1基当たりのコストは85億円と安いけれど、スペースシャトル計画全体では赤字なんじゃないかな?だって1回の打ち上げに500億かかるんだよ、あれ。

当初、机の上ではスペースシャトルは年間50回打ち上げる予定だった。この打ち上げ回数が実現できれば、打ち上げコストは通常のロケットの1/2〜1/3(一時は30億円という試算がされていた)という数字が出せたはずだったが、実際はその半分にも満たない数字しか出せていない。なにしろ、オービターのメンテナンスには平均で3ヶ月かかる。耐熱タイルのチェックと張り替え、磨耗パーツの交換、故障箇所の修理、膨大な量のチェック。固体燃料ブースター(左右についてる鉛筆みたいなやつ)も回収とメンテナンスのコストを考えると一から作ったのとほとんどかわらないそうな。

しかも、スペースシャトルはチャレンジャー以来商業目的の打ち上げをやっていない。科学実験に相乗りというかたちでしか商業衛星を打ち上げてはいけないという決まりがあるから(99年頃からこの協定の撤回を巡って色々動きがあるようだけど、その後の経過を聞かないなあ)。現在NASAでは商業衛星は普通の使い捨て型のロケットで打ち上げている。

だから、スペースシャトルとH2Aを同列に扱うのはちょっと無理がある。H2Aが目標にしている85億円というコストは同クラスの商業機としては破格の値段。本当にこのコストでの運用ができるようになれば、宇宙ビジネスでかなりいい位置に食い込める可能性は高い。ま、アリアンと比べると実績が段違いだし、有人飛行ではアメリカとロシアに分があるから、「日本のロケットの独自性」を探る必要があるかもしれない。とことん「早い、安い、上手い」でもいいような気もするけどね。

それが、日本の宇宙開発の生きる道だとしたら、やっぱり無理して再利用型を開発するより、安定性の高い高性能の使い捨て型の方がはるかに現実的な気がする。NASAがこの10年スペースシャトルの後継機の開発をしようとして、コストが合わずに次々に計画を棒に振ってきたのは周知の事実。再使用型は作ることはできても採算ベースに乗せるのがものすごく難しい。開発のための開発ならばそれでも問題はないけれど、ビジネスをやるつもりなら考えた方がいい。ちょっと寂しい気もするけどね。

明日打ち上げられる予定のH2A3号機は初の実用機。これは商業打ち上げへの第一歩となるもの。日本の宇宙開発がどこへ行くのかあの一発で決まる(前回のときも同じことを書いたような気がするが・・・)。


さて、理屈はこれくらいにしよう。結局、理屈なんでどうでもいいんだから。
ちょっと、こっぱずかしいけど。何度でも言うって宣言しちゃったし・・・。


ほら、あそこにぼくらの未来が、少なくともその一部が立っている。さあ、手に汗を握りながらカウントダウンを待とう。ぼくらがロケットを大好きなのは、あの機械がいつも夢を見せてくれるからだ。だって、あの機械は宇宙へ行くんだぜ。それだけでも、ぼくらを興奮させるにあまりあるじゃないか。

子供の頃、「宇宙」と「未来」は同義だった。きらきら光る宇宙船に乗って星の世界を旅する夢を何度見ただろう。いま、ぼくらはその未来に手を掛けようとしている。あの頃とはずいぶん形を変えてしまったけれど、それでも確かに、あそこに「ぼくらの未来」が立っているんだ。

何度も言うようだけど、ロケットは想像力を乗せるための最良の乗り物だと思う。


あああ、いまから、どきどきしてきたよ(早いって)。

(Sep. 09 2002 updated)

by isana kashiwai