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Feb. 03 2003
Columbia Lost 2003.02.03-2

ここまでに分かっている情報をまとめましょう。
※この情報は既にアップデートされています。最新記事をあわせて参照してください(Feb.04.2003)

更新途絶までにシャトルに起こっていた現象について(SpaceFlightNowの記事抄訳)
http://spaceflightnow.com/shuttle/sts107/030202investigation/

8:53(EST)
左翼の4つエレボン(大気中でシャトルを操縦するために使う主翼の後端の動翼)を制御する油圧装置の温度計の値が計測不可能な値まで低下します。

左着陸脚のストラット・アクチュエイターとアップロック・アクチュエイター(着陸脚を引き出すための装置)の温度が5分間で20度から30度まで上昇します。これらの温度計は左着陸脚を収めている空間に設置されているものです。

※ここで重要なのは、最初に機能を失ったエレボンの温度計の配線が、この左着陸脚を収める空間を通っているということです。

8:54(EST)
胴体中ほどの左翼と胴体の境目に設置された温度センサーの値が通常ではありえない数値を示します(この温度センサーは翼の上部に設置されているものです)。温度は5分間で60度まで上昇しています。逆に、反対側のセンサー(右翼上部)は通常値の15度までしか上昇していません。

※ここで興味深いのは、温度が上昇した左翼の温度センサーのすぐ内側、ペイロードベイ(貨物室)内の極低温タンクの温度センサーは通常値を示していることです。これはペイロードベイ内の温度が通常と同じ値だったことを示しています。

8:58(EST)
エレボンのロールトリムが上昇します。これはなんらかの原因で、左翼の空気抵抗が上がったことを示しています。これはタイルの破損か脱落を示唆するものかもしれませんが、はっきりしたことは分かりません。

ほぼ同時に、左着陸脚のタイヤ圧と温度計の数値も消失します。これは、タイヤそのものが失われたのではなく、計測器が機能を失ったことを示していると思われます。なぜなら、計測値の消失に若干の時間差があるからです。

8:59(EST)
再びエレボンのロールトリムが上昇し、エレボンが動作します。これは、左翼の空気抵抗の増加を打ち消すために、フライトコントロールシステムがシャトルを右へロールさせようとしていることを示していると思われます。

この直後、シャトルは通信を途絶します。



もう一つ、今回の事故と関係が深いとされているのは、1月16日のシャトルの発射時に起きた、外部燃料タンクからの剥落物がシャトルの左翼に衝突した事故です。発射の約80秒後に、最大20インチ(50cm)幅ほどの物体が外部燃料タンク(中央のオレンジ色のタンク)から剥がれ落ち、シャトルの左翼下面に衝突しています。この件については、その後数日間に渡って検討され、再突入に問題なしとの結論が出されました。

この2つの事故を結びつけるのは、早計かも知れませんが(軌道上のゴミの衝突の可能性も残されています)、もし、発射の際の剥落物がシャトルの右着陸脚を収めるドア部分に衝突して、大気圏突入時のシャトル腹部の温度が3000度を超えたとしたら、このような事故がおきる可能性があります。

着陸脚を収めている場所は、シャトルの中でも熱に最も弱い部分です。しかし、かつて行われた分析では、この部分のタイルが一枚失われただけでは、機体の破壊には至りません。何らかの構造的な破壊がなければ、このような事態が起きるとは考えにくいのです。

※ここに記載した情報は、筆者が上記サイトの記事を再構成したものです。誤読などの可能性が無いとはいい切れません。正確な情報が得たければ、原文を参照してください。

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いま分かっている事実はこれだけです。色々な憶測が乱れ飛んでいますが、まだはっきりしたことは何も分かっていません。とりあえず、NASAの正式な発表を待ちましょう。正確な情報はあそこからしか得られません。

「タイルが一枚でも失われたら・・・」と言っていた航空評論家もいました。1枚や2枚はがれたぐらいでは、燃え尽きたりしません。「耐熱タイルは爪で引っかくと傷がつくぐらいやわだ」と書いていた記事もあります。当たり前です、気泡を大量にふくんでいるから断熱効果があるんです。タイルを硬くしたら熱を伝えてしまいますし、なによりとても重くなってしまいます。一つ一つ反論するのは馬鹿馬鹿しいので止めておきますが、大手のメディアにも、ずいぶんいい加減な憶測混じりの記事が目立ちます。

ちなみに、シャトルが大気圏突入時に高温になるのは「空気との摩擦」のためではありません(ほとんどのメディアがこう書いていますが、これは嘘です)。これは「空力加熱」と呼ばれる現象です。空気中の物体の速度があまりに高くなると物体の前面で空気が逃げ場を失って急激に圧縮されます。このとき圧縮された空気が周りの空気と熱を交換することが出来ない状態になります(これを「断熱圧縮」と呼びます)。圧縮された気体中の分子は激しくぶつかりあい、その運動エネルギーを熱に変えます(ボイル・シャルルの法則ですね)。熱の逃げ場がありませんから、結果として温度がどんどん上がっていくことになります。これが、大気圏突入時のシャトルが高温になる理由です。「空気との摩擦」だけではあんな温度になることはありません。まあ、いいんですけどね。

(Feb. 04 2003 updated)

by isana kashiwai