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Feb. 06 2003
Columbia Lost 2003.02.06

http://spaceflightnow.com/shuttle/sts107/030205foam/

記者会見があったようです。ここまでの情報をアップデートをしておきましょう。今回も目新しい事実はありません。今回の会見の焦点は、打上げ時の剥落物についてです。調査チームは、この剥落物は事故の直接原因ではない可能性が高いという見方を強めています。

会見全文 (NewYorkTimes要登録無料)
http://www.nytimes.com/2003/02/05/national/nationalspecial/06NASA-FULL-TEXT.html

外部燃料タンクの外壁に使用されている物質は、打上げ時の空力加熱からタンクを保護するためのもので、非常に軽くてもろいために、衝突による衝撃ではシャトルの耐熱タイルを破壊することは出来ないだろうとのことです。剥落物が氷である可能性も指摘されていましたが、当日シャトルへの着氷の事実はなく、またこの高度まで上昇すると、過熱で解けてしまうとのことです。

また、今回打上げ時のシャトルを裏側から撮影した映像が公開されました(リンク先参照)。これを見るかぎりは、剥落物が衝突したことによる外見上のダメージは認められません。

現在、調査は大きく分けて3つ方向で進められています。
・テレメトリーデータの解析
 シャトルから送られてきたデータの解析です。これには、通信途絶後も32秒間に渡って続いていたといわれる、送信データを各通信ノードからの復帰する作業も含まれていますが、今のところノイズのレートが高すぎて有意な情報は得られていないとのこと。

・シュミレーション/実験
 最終段階で起きていた、シャトルの左側の空気抵抗の増加がどれくらいのものだったのかを、姿勢制御用ロケットの噴射のデータから逆に推測するシュミレーションを行っているそうです。また、打上げ時の剥落物がシャトルの左翼に与えた影響についても、追試実験を行っているとのこと。

・シャトルの破片の回収および分析
 現在、回収された破片をケネディ宇宙センターに移送して分析することを検討しているとのこと。また、当初予想されていたより広範囲にわたって破片が飛散しており、調査のエリアを拡大しているとのことです。

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個人的に注目したいのは、残り32秒間のテレメトリデータというやつです。これが復帰できればかなりの事実がわかるんじゃないでしょうか。どうやら、通信衛星を経由して送られてきていたはずのデータを、経由したサーバ等からパケット単位で回収を試みているようです。す、すごい。

シャトルの運行開始当時、この最も熱をもつ着陸20分前から12分前の約8分間は『ブラックアウト』と呼ばれ、熱によってプラズマ化した大気の影響で地上との交信が一切出来ませんでしたが、現在はシャトルの背中に搭載されたアンテナを使用し、衛星を経由させることで通信を可能にしています。

シャトルの破片の回収はかなり進んでいるようです。今回調査範囲がカルフォルニア州のほうまで広げられたことは、これまで考えられていたよりずいぶん早い段階から破壊が始まっていた可能性があることを示しています。

破片の回収が進み、機体のどの位置のものなのかが特定できれば、落下していた位置によって、どの部位から破壊が始まったのかを特定する手がかりになるでしょう。もしかしたら、破壊の原因を特定できる、何らかの証拠が破片に残っているかもしれません。


黙殺しようかと思ってたんですが、まだ一部で騒いでいる人がいるようなので、コメントを。
昨日、一昨日ぐらいにかけて、「シャトル翼面の傷」と称される映像があちこちで公開されていました。あれは、かなり意図的に流されたデマです。件の映像はシャトルの腹部ではなく、カーゴベイ内部のカバーのクローズアップのようです。知っていれば見た瞬間に違うと分かるんですけどね。変な突起物が見えているし、色も黒くないし、形もスケールもシャトルの翼と一致しないし・・・。

付け加えておくと、STS-107のミッションは科学実験でした。国際宇宙ステーションとのドッキングはありませんし、そもそも、軌道の高さがぜんぜん違います。また船外活動を行うことも考えられますが、これには作業用のアームや遠隔操作システムが必要です。今回その予定がなかったため、これらの機材は搭載されていません。軌道上でシャトルの腹部を撮影する方法はなかったんです。

ちなみに、現在シャトルの耐熱タイルを軌道上で交換する方法はありません。たとえ予備を積んでいっても、軌道上、真空中ではくっつきません。シャトルのタイルはかなり厳密な温度管理の元で職人が一枚一枚手で貼っているんです(その管理体制に問題があったことが、指摘されています)。

では、かりに大気圏突入が不可能なほどの傷をシャトルが負っていたとして、それを軌道上で知ることが出来たら、彼らに何が出来たか?ほとんどできることはなかったはずです。NASAには、数週間で打ち上げられるような予備のシャトルやロケットはありませんし、ロシアのソユーズやプログレスも同じです。前にも書いたように、いま宇宙に人を運べる乗り物はスペースシャトルとソユーズだけです。ちなみにソユーズには7人も乗れません(大きいほうで3人、小さいほうで2人です)。

今回の場合、国際宇宙ステーションの軌道はずっと上です。そこへたどり着く方法も、迎えに行く方法もありません。もし仮に、上手く転用できるプログレスがあったとして、補給物資を打ち上げても、シャトルとドッキングする方法がありません(ドッキングベイは必要に応じて積んでいくんです)。さっき書いたように、今回は船外活動を行うために必要な機材も積み込まれていませんから、取りに行くのも難しいかもしれません(外に出ることはできるはずですから、不可能ではありませんが・・・)。


一歩外は真空、無重力、太陽の直射熱、放射線・・・、生身では1分と持たないはずです。水も食料も空気も地上から持って上がる以外の方法は今のところありません。宇宙飛行はずいぶん日常化したような錯覚に捕らわれますが、所詮は薄皮一枚の日常なんです。ちなみに、シャトルのクルーは打上げ前に遺書を書くのがきまりになっています(公開はされていませんが、家族のもとにはもう届いているでしょう)。あそこはまだ、そういう場所なんです。

(Feb. 06 2003 updated)

追加情報です。
http://www.cnn.co.jp/science/K2003020500877.html
先日ロシアから打ち上げられた、無人補給船のプログレスが国際スペースステーションに無事到着したようです。これで、とりあえず、6月までは大丈夫です(これは、事故の前から予定されていたものです)。ただ、まだCrewを降ろす目処は立っていません。本当は、次のミッションで交代要員が上がるはずだったんですが・・・。

ただ、あまり指摘している人がいませんが、国際宇宙ステーションの高度だと衛星はかすかな空気抵抗を受けます。放っておくと一年以内に落ちてくるはずです。まだ建設途中のスペースステーションは自力で高度を維持することが出来ません。確かこれまではドッキングしたスペースシャトルのスラスターを使っていたはずなんですが・・・。

まあ、ミールはソユーズやプログレスを使ってやっていたはずなので、ロシア機でもできるはずですけどね。

(Feb. 06 2003 updated)

※その後、シャトルの運用マニュアルを見直したところ、今回のミッションでもエアロックは使用できたかもしれません。SpaceLabと排他使用だと思っていたんですが、どうやら併用できるようです。大変失礼しました。

(Feb. 07 2003 updated)

by isana kashiwai