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Feb. 10 2003
Jacob's Ladder

さて、シャトル事故関連も、公式発表も含めアクティビティが徐々に落ちてきたので(まあ、まだむこうは日曜日ですからねえ)、久しぶりに違うネタを行きましょう。

宇宙空間へ物資や人を運ぶ「宇宙エレベーター」、実現は15年後?(HotWired)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20030210302.html
えー、15年はないでしょう。ちょっと楽観的すぎやしませんか?

リンク先の記事にはちゃんとかかれていないので、ちょっと宇宙エレベーターの説明をしておきましょう。
静止衛星は地上から見ると、ずーっと空の一点にとどまっているように見えます(衛星放送のパラボラアンテナは衛星を追いかける必要がありませんよね)。つまり、地球の自転と衛星が地球をまわる周期が一致しているわけです。じゃあ、静止衛星から3万5000kmのロープをたらせば地面に届くじゃないか、というのが「宇宙エレベーター(軌道エレベーター)」の基本的な考え方です。「スカイフック」なんて言い方もしますね。

当然、エレベーター全体の重心が静止軌道になきゃいけないので、下ろしたロープとの重量のバランスを取るために、静止軌道を挟んで地球と反対方向にもロープを延ばすか、さもなければでっかい錘をつないでおく必要がありますけどね。

ロープがつながってしまえば、あとは燃料なんか積まなくても、エレベーターと同じようにえっちらおっちら登っていけばいいし、降りてくるときに発電して、登る時にその電気を使えば、ずいぶん省エネにもなります。確かに、こいつができれば革命的に宇宙へいくのが簡単になるでしょう。でも、実は宇宙エレベーターはそうそう簡単にできるわけじゃありません。上の記事には15年なんて書いてあるけれど、これはずいぶん楽観的な意見です。個人的には死ぬまでにできてくれればいいなあ、たぶん無理だろうなあ、という感じ。

最大の問題点が材料問題です。現在、地球上には3万5000kmの自重を支えられる材料は存在しません。茹ですぎたソーメンみたいに、自分の重みで切れちゃうわけです。ロープに「テーパー」をつけて先細りにすれば(一番力がかかる静止軌道で一番太く、両端に行くにしたがって細くなるように作る)ずいぶん重さを低減できるんですが、それでも、その張力に耐えられる物質は今のところひとつしかありません。

じつはこれが上の記事で述べられている「カーボンナノチューブ」というやつです。平たく言えば、規則的に並んだ炭素分子がチューブ上になったものです(実は発見者は日本人です)。最近色々なところで応用製品が開発されていますね。これは凄く丈夫な上に凄く軽い。仮に、カーボンナノチューブで3万5000kmのロープが作れれば(まあ、形を工夫しなきゃいけませんが)、静止軌道から垂らしても切れないはずです。

でも、ここに問題点があるんです。実は「カーボンナノチューブ」は長さにして1/1000mm程度のものがようやくできるようになっただけです。自由に形状をいじったり、つないだりする技術は今のところありません。実は応用製品も数ミクロンという長さのものを半導体として使用するものがほとんどです。この「カーボンナノチューブの加工技術」が生み出されないかぎり、宇宙エレベーターは夢の夢です。上の記事で「後は作るだけだー」なんていってますが、ちょっと大げさですねえ。

まあ、他にも摂動をどうやって押さえるんだとか、デブリ対策はどうするんだとか色々細かい疑問は色々あるんですけど、まあこのあたりはどうにかなるんでしょう、きっと。ものの本には「ロケット噴射して避ける」とか書いてあって、仰け反りそうになるんですが・・・。

まあ、できっこないぜ!という予測は、大抵外れることになっているので、この文章の内容が15年後に笑いものになっていることを心から祈りたいと思います。ああ、早くできないかなあ・・・。


宇宙エレベーター関連もなかなかよい本がありますのでご紹介しましょう。
石原藤夫・金子隆一『軌道エレベータ―宇宙へ架ける橋―』裳華房 ポピュラーサイエンスシリーズ(amazon)
アーサー・C・クラーク『楽園の泉』ハヤカワ文庫SF(amazon)※SFです。品切れ?

(Feb. 10 2003 updated)

by isana kashiwai