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Feb. 22 2003
Columbia Lost 2003.02.22

New data shows Columbia's state in final moments
http://spaceflightnow.com/shuttle/sts107/030221telemetry/
件の「残り32秒」の記録がずいぶん解析が進んだようです。
この間に、姿勢制御スラスターがさらに噴射されていたことは、前回の報告で分かっていましたが、最後の(本当に最後の)記録で、シャトルの油圧システムが稼動していたことが分かったそうです。ただ、油圧はゼロを示しており、機構が本当に動いていたかどうかは怪しい状態です。ただ、フライトコンピューターとナビゲーションシステム、発電機が動いていたことは間違いありません。また、油圧システムはエンジン部と胴体のカーゴベイの床下に配置されていますから、この時点で少なくとも胴体が残っていたのは確かでしょう。

また、シャトルのフライトコンピューターは「機体のロール(左右の傾き)」を警告するメッセージを発信しています。ただ、これがシャトルのコックピットに届いていたかどうかはまだ分かっていません。

シャトルの窓からクルーに見えていたのは、おそらくプラズマ化したオレンジ色の大気だけです。振動も激しかったでしょうし、減速のGもかなりのものでしょう。しかも大気圏突入時のシャトルは自動操縦になっていますから、クルーがシャトルの姿勢を知る方法はコックピット内の計器類だけです。ここに異常が表示されていなければ、彼らは自分たちの身に起きつつあることを知る方法は無かったはずです。センサーの異常は知っていたかもしれませんが、これはこれまでのフライトでも何度か起きていたことです。彼らはそれが機体の破壊を意味するものだとは思っていなかったかもしれません。

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1980 NASA contract issued for tile repair kit
http://spaceflightnow.com/shuttle/sts107/030221tpsrepair/
軌道上でシャトルのクルーが耐熱タイルを修復するためのキットが存在したかもしれない、というお話。1980年1月22日にNASAとマーチンマリエッタがそういうキットを作る契約書にサインをしたというニュースリリースがあるそうな。ただ、実際にシャトルに搭載されたという記録はないとのこと。

このキットは、耐熱タイルの代わりをする160個のシリコンゴムのかたまりと、隙間を埋めるペーストからなり、お風呂の修理に使うコーキングガンのような道具で、シリコンを破損箇所に貼り付けるようです。この非常用の「タイル」は本来のシャトルのタイルとは違う物質です。このシリコンゴムは大気圏突入時の熱で溶けることで、気化熱を利用して温度上昇を防ぐしくみ。使い捨てのカプセルではよくやる手ですね。

ただ、シャトルの外に出て、このキットを使うためには宇宙服以外にMMU(Manned Maneuvering Unit:船外活動ユニット)が必要とのこと。これはでっかいバックパック型の装置で、初めて命綱なしの船外活動が行われた時に使用されたものです。ただ、これは1986年以来使われておらず、いまはSAFER(Simplifed Aid for EVA Rescue)と呼ばれる簡易の装置が使われています。ただし、これは命綱が外れてしまった時の非常用ですね。

たとえ、このようなキットが搭載されていたとしても、シャトルの腹部には作業をする宇宙飛行士の体を固定しておくフックなどが一切無いため、現状の装備では修復することはきわめて難しいはず。我々が地上で作業するときのことを考えてみればこの作業の難しさが分かります。物をぐっと押したり、レンチでボルトを回したりできるのは、重力で体が地面に固定されているからです(意識することはほとんどありませんが)。でも軌道上では、重力がありませんから、ぐっと物を押し付けると、作用反作用の法則にきっちりしたがって、宇宙飛行士の体は反対方向に飛んでいきます。レンチで力任せにボルトを回せば、回るのは宇宙飛行士のほうです。

だから、宇宙ステーションの組み立ての際には、シャトルに搭載されたロボットアームに飛行士を固定したり、作業が必要な箇所にすべてフックと手すりが用意されているんです。え、なぜボルトを回してもシャトルごと回らないんだって?作用反作用の法則を思い出してください。反作用を受ける割合は「質量」に依存します。無重力はその名の通り、重力がなくなるだけで、質量が消えるわけじゃありません。重いものを動かすのが大変なのは宇宙でも同じです。

さて、想像してみましょう。宇宙服を着て、大きな修理キットを抱えて、SAFERを使ってどうにかシャトルの腹部へ回り込んだとしても、手をかけられる場所はひとつもありません。SAFERはあくまで非常用のものでMMUほどの機動性もなければ、推進剤の容量もかなり少なめです。破損箇所までたどり着くだけでもかなり困難な作業になるでしょう。なにしろ掴まるところが一切ありませんから、機体に物を押し付けただけで、体が機体から離れてしまいます。その度ごとに貴重な推進剤を使って体の位置調整をしなければなりません。やっぱり、ちょっと非現実的ですねえ。

(Feb. 22 2003 updated)

by isana kashiwai