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Mar. 10 2003
Columbia Lost 2003.03.10

ちょっと間があきましたが、この間の情報をアップデートしましょう。

先日、シャトルの主着陸脚のドア及びタイヤの写真が公開されました。左が左翼のタイヤ、真ん中が右翼のタイヤ、右が右主着陸脚のドアです。左翼のものは明らかにバーストしてますね。左翼の方は、以前から熱の流入が示唆されていた方です。またひとつ、それを裏付ける証拠(かもしれないもの)が見つかったことになりますね。

また、回収した破片の多くに溶けたアルミニウムが付着していたとのことです。アルミニウムはシャトルの主構造材に使われている物質です。

http://www.caib.us/news/photos/index.html

 
Columbia Accident Investigation Board


もしかしたら、左主着陸脚収納部への熱の流入がタイヤのバーストを引き起こし、収納部のドアを吹き飛ばしたのかもしれません(これは、あるエンジニアが事故以前にメールで指摘していた「最悪のシナリオ」というやつです)。

タイヤの破裂、というのはあれぐらいのサイズになるとかなり破壊的です。なにしろ、90tもあるシャトルの重量を8本で支えられるタイヤです。シャトルの着陸は後ろの主着陸脚が先に接地しますから、片側4本、両側8本の着陸脚でほとんどの衝撃と重量を支えることになります。まっすぐ着陸できない場合を考えれば、数本のタイヤでほとんどの重量を支えることも想定されているはずです。そんなタイヤが、高熱に晒され、膨張→破裂したとすれば、かなりの爆風が発生したはずです。密閉された収納部で起きれば、収納部のドアを吹き飛ばすことも十分に考えられます。

タイヤの空気圧というのは、なかなか侮りがたいものがあります。実は、車のタイヤの空気入れというのはかなり危険な作業なんです。空気の入れすぎや、タイヤの裂け目などに気付かずに空気を入れるなどして、タイヤチューブが破裂し、「爆風」で吹き飛ばされて亡くなられる方が、日本だけでも毎年数十名いらっしゃいます。あ、絶対に素人がやっちゃダメですよ。自転車ぐらいまでにしといた方が身のためです。
参考)2001年度、空気充填作業時の事故調査
http://w2332.nsk.ne.jp/~t.kumiai/faq/a3.htm

ただし、注意しなければいけないのは、このタイヤの破裂が本当にシャトルの飛行中に起きたものなのかどうかは、まだ不明だということです。敢えていえば、この破裂したタイヤの写真は「タイヤの破裂による構造破壊の可能性を否定するものではない」という程度です。早とちりはいけません。

個人的な感想は、逆に、「高熱に晒されたにしちゃあ原形を保ってるなあ」という感じですね。だって「ただ破裂した」みたいに見えませんか?以前公開された、熱で溶けている耐熱タイルの写真と比べると、なんというか、普通ですよねえ。ゴムなのに。本当に、ここから最終的な破壊が始まったんでしょうか?ま、ただの憶測なので真に受けないで下さいね。


さて、とりあえずまとめておきましょう。今のところ、最も有力なプロセスは以下の通りです。
1.シャトルの左翼のどこかからか、何らかの理由で、大気圏突入時の高熱のプラズマが流入。一連のセンサーの破壊を引き起こす。
2.シャトルの左翼に何らかの構造的な破壊が起こって、空力的に不安定になり、空中分解。
見ての通り、まだほとんど何も分かっていない状態です。なぜ、いつ、どこからプラズマが流入したのか?プラズマの流入と構造破壊を結びつけるのは何か?構造破壊は、なぜ、どこで起きたのか?これらが、今後の調査の焦点になります。

まだ、回収されたパーツは全体の13%程度とのことです。まだ、先は長そうですね。

(Mar. 10 2003 updated)

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さて、この写真と同時にちょっと面白い写真が公開されていました。


Columbia Accident Investigation Board


なんだかよく分かりませんが、これはシャトルの主着陸脚収納部の内側の写真です(墜落したシャトルのものではありません)。「収納部」という名前から、なんとなくただの箱のようなものを想像してしまいますが、実情はこんな感じです。これは、翼の各部へ伝えられる配線や配管を、いったんこの着陸脚の収納部を通すことでメンテナンス性を上げているんです。余分なドアなどを極力作らないで済ませるために、こういう工夫がされているわけです。逆にいえば、この収納部のドアがウィークポイントだといわれるゆえんでもあります。

今回ここに熱が流入したこととで、配線がここを通過しているセンサーが左主翼の各所で機能喪失を起こした可能性が指摘されています。この写真をみるかぎり、頷かざるを得ませんね。

(Mar. 10 2003 updated)

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Shuttle flight plans in works(FloridaToday)
http://www.floridatoday.com/columbia/columbiastory2A45954A.htm
NASAが早ければ、今年の7月以降、遅くとも来年(2004)の夏までには、シャトルの打上げ再開を目指しているというお話。うぉっ、早っ!

まあ、今回はチャレンジャーの時と違って、ISSがありますから、あまりのんびりしていられないということですね。NASAではコロンビアの事故原因究明と平行して、シャトルの改修、打上げの準備を進めているそうです。現在、事故前から『ディスカバリー』のオーバーホールが行われていますし。引き続いて、『エンデバー』のオーバーホールも来年予定されています。

国際宇宙ステーションは、すでに、ロシアのソユーズによるクルーの入れ替えと、普段よりも一人少ない宇宙飛行士2人での『維持』が決まっていますが、この人員では実験やISS建築の継続はかなり難しい状態です。

事故原因が特定されても、このままシャトルが廃棄されることはまずありませんから、多少無駄が出ても、今のうちにできることをやっておこう、ということのようです。

(Mar. 10 2003 updated)

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手動への切り替え試みた形跡か 米シャトル事故(CNN.JP)
http://www.cnn.co.jp/science/K2003031001533.html
解析が進められていた最後の32秒のデータから、操縦桿に入力があったためオートパイロットから手動操縦に切り替わった形跡があることが分かった、というニュース。

SpaceFlinghtNowにもう少し詳しい記事が出ています。
Telemetry shows autopilot on through last transmission(SpaceFlightNow)
http://spaceflightnow.com/shuttle/sts107/030309autopilot/

誤解のないように、説明しておきましょう。シャトルに限らず、旅客機の自動操縦などでも、操縦桿にちょっとでも触れればフライトコンピューターの自動操縦よりも操縦桿のからの入力が優先されるようになっています。手を離せば、機体はまた自動操縦に戻り、指定のコースを維持しようとします。記録に残っていたのは、このような動作です。操縦士が何かのスイッチを切ったわけではありません。ですから、記事にもあるように、操縦士が機体のコントロールを取り戻そうとしていたのか、ただ、ちょっと手が触れてしまっただけなのかは分かりません。

もちろん、操縦士が必死に機体のコントロールを取り戻そうとしていた可能性もないわけではありません。しかし、おそらくあの状況下では、操縦士がコントロールするよりフライトコントロールシステムの自動操縦のほうが的確な操縦をしていたはずなんです。突入時のシャトルは、機首を若干上に向けて飛行していますから、操縦士からは水平線を確認することは出来なかったはずです。つまり、操縦士は目視では機体の姿勢を把握できません。彼らが知り得たのは、機体各部の異常を示す警告と、機体の姿勢の異常を示す計器の表示だけです。おそらく、あの状況下で機体が今どういう姿勢にあって、なにが起きているのかを、操縦士が感覚的に把握できていたとは思えません。

明らかにあの時、乗務員よりもフライトコンピューターの方が状況を的確に状況を捉え、機体の姿勢を回復すべく「操縦の努力」をしていました。実際、通信途絶の数十秒前から、空力的なバランスが崩れたのを補正するために、フライトコンピューターはエレボンを操作し、姿勢制御スラスターを噴かしています。このとき、乗務員はまだ異常に気付いていませんでした。上の記事に、「切り替えの操作が実行されたとすれば、乗員は最後の瞬間まで操縦の努力を続けていたことになる」とありますが、もし本当に操縦しようとしていたとすれば、それはあまり適切な対応とは言えません。あの状況下で、操縦士に出来たことは、すでにフライトコンピューターがやっていたはずです。

シャトルは、打上げから2分間、個体燃料ブースターが切り離されるまでは、事故が起きないことを想定して設計されていました。実はこの2分間は脱出方法が定められていません。この間は何か異常が起きても手の打ちようが無いんです。知ってのとおり、チャレンジャーが爆発したのはこの2分間の間でした。この2分が過ぎれば、打ち上げを途中で中止して帰還する手順が決められていますし、軌道上からミッションを中止して帰還する方法もあります。ただもう一つ、打上げ時と同じように、シャトルが大気圏突入時に最も高熱になる約10分間に事故が起きたら、やはりなす術がありません。中止することも、脱出することも出来ませんし、乗務員は外で何が起こっているか把握することがほとんど出来ません。今回の事故は、この10分間の間に起きました。そう、チャレンジャーが事故を起こしたあの2分間を除けば、唯一、事故が起きることが想定されていない時間だったんです。

(Mar. 11 2003 updated)

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月が変わったので、再掲載しておきます。

Shuttle-Track 日本語版(PDF/633k) 2003.02.26更新
※筆者がNASAの発表を元に再構成したものです。公式のものではありませんのでご注意ください。

もう、一ヶ月以上たったんですねえ。
毎日追いかけている身にとっては、あっという間でしたが、世間的には、もう遠い昔の事故みたいですね。
まあ、乗りかかった船ですから、慌てず、騒がず、いけるところまで行きましょうか。

更新頻度は、事故当初ほどではないかもしれませんが、『Columbia Lost』は、まだまだ続けます。
いつか、本当のまとめを書く日が来るんでしょう。それまでは、どうぞ気長にお付き合いください。

(Mar. 11 2003 updated)

(Oct. 02 2006 updated)
ミスタイプを修正 「右翼」→「左翼」

by isana kashiwai