Junkyard Review     index     top


Apr. 07 2003
Dear Dr.T

博士、覚えていますか?

あの頃、『ロボット』は特別な言葉でした。僕たちは、その言葉を口にするたび、耳にするたびに、理由もなくどきどきしたものです。それは、星空へと向かうロケットや、透明なチューブの中を走るエアカーや、音よりも速く飛ぶ超音速旅客機なんかと同じ世界の言葉でした。そう、その言葉は、明らかに未来に属していたんです。

彼らはいつも、テレビや漫画の中にいました。とても力強く、スマートで、カッコよくて、人間なんかよりずっと賢く、そしてずっと優しい。僕たちは、彼らに憧れ、彼らと共に生きることを夢見ていました。そして、彼らが僕たちの傍らに立つ日のことを、心から信じました。

そう、あの頃、現実のロボットたちは、まだ不恰好で、鈍重でしたよね。歩くことさえまともにできず、せいぜい腕を振り回したり、決められた台詞をバカみたいに繰り返すのがやっと。あんなものはロボットなんかじゃありません。だって、空を飛ばないロボットなんて!

あれからずいぶんたちました、その間に、あの頃想像もしていなかったようなものが次から次へと生まれたように思います。コンピューターも、インターネットも、携帯電話も。でも、あの頃僕たちが想像していた世界は、まだ、ここにはありません。

博士、あなたはいつか『私を、2003年4月7日に、彼が生まれた日に帰してくれ』と言っていました。もう一度やり直したいという言葉の裏で、あなたが、本当に何を望んでいたのか、僕たちには知る由もありません。

博士、聞こえますか?今日はあなたがあんなに帰りたいと望んだ、2003年4月7日です。

そこから何が見えますか?今、僕たちのそばには、彼はいません。ロボットたちは、まだようやく立ち上がり、歩き始めたばかりです。ロケットも、エアカーも、超音速旅客機も、僕らの日常からはまだずいぶん遠くにあります。博士はお嘆きかもしれませんね、あるいは笑っているかな。僕たちも、それなりに、ずいぶん頑張ったんですけどね。

いざ、やってきてみると、未来ってずいぶん普通です。まさか、未来がこんな風だとは思ってもみませんでした。僕たちは、まるで当たり前のことのように、小型通信機で連絡を取り合い、電子頭脳を操りながら仕事をし、海の向こうの戦争をリアルタイムで見つめながら心を痛めたりしています。そう、まるで当たり前のことみたいに。これは、きっと喜ばしいことなんでしょう。ずいぶん形は違ってしまいましたが、あの頃の未来の一部は、確かにいま、ここにあるんですから。

そしていつの日か、僕らの傍らに彼が立つ日が来ることを、僕たちは今でも心から信じています。少し遅れますが、きっともうすぐです。たぶん、きっと。

そうそう、最後に彼におめでとうをいいましょう。何しろ、今日は記念すべき日ですから。


お誕生日おめでとう。

おめでとうございます、博士。


(Apr. 07 2003 updated)

by isana kashiwai