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May. 16 2003
核爆弾と10万トンの溶鉄、重力波検出器。

Cracking idea gets to the core (nature)
http://www.nature.com/nsu/030512/030512-10.html
地球の内部構造を調査するための全く新しい方法が提案された、というお話。
まず、TNT火薬数メガトンに相当する核爆弾で地面に割れ目を作って、そこに10万トンの融けた鉄を流し込む。鉄は自重でどんどん沈んでいって、一週間ぐらいで地球のコアに達する。この鉄の塊の中にグレープフルーツ大のプローブを入れておけばマントル層とコア層の調査ができるぞ!ということらしい。マジっすか。おー、ほとんどマッドサイエンスの世界だ。個人的にはこういうセンス・オブ・ワンダーに溢れたアイディアは大好きだぞ。

プローブからのデータは極微弱な地震波を発生させて、建設中の重力波検出器LIGO(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)で拾う。確かに重力波検出器なら、4km離れたところに置かれた鏡との距離をナノオーダーで計測する能力を持っているから、地震計で捉えられない微弱な地震も捉えられるはず。まだ出来てないけどね。


さて、いい機会なので、地球の中身についてちょっとおさらいしておきましょう。地球の内部構造は、大きく分けて3つの層からなっていて、表面から「地殻」「マントル」「核」と呼ばれています。

「地殻」は我々が普段見ている主に花崗岩と玄武岩からなる層で、実は平均で30km、厚いところでも100kmほどしかありません。これは地球の半径の2%程度。地球が直径1mの球だとすると3mm〜1cmぐらいです。地殻の一番底の部分で圧力は600MPa、温度は800Kになります。

地殻を越えると「マントル」です。この層は主に橄欖岩(かんらん岩)からなり、厚さは約2‚900km、地球の半径の45%、体積の80%を占めています。マントルの一番底では、圧力140GPa、温度3‚000Kぐらいです。勘違いしている人が多いですが、マントルは決してどろどろした液体状になっているわけではなく、あくまで堅い岩石の層です(底の方は説ける寸前ですけど)。ただ、高温の核の熱で数千年というオーダーで極めてゆっくりと対流しており、これが大陸を動かし、地震を起こす力の源となっているわけです。ちなみにマントル層は、その対流の速度により表面に近いほうから上部マントル(〜400km)、遷移層(〜670km)、下部マントル(670km〜2900km)に分けられます。

じゃあ、火山から噴き出しているのはなんだ?という声が聞こえてきそうですが、あれはマントルが局所的な高温で融けたものです。もうちょっと細かく言うと、下部マントルで局所的に高温になったマントルが浮かび上がり、温度が保持されたまま圧力が下がることで液状化したものです。その融けたマントルが、地殻との間にたまったものがマグマ溜まりとよばれ、これが地殻の裂け目を通って地表に出てくると火山になります。

さて、もう少し潜りましょう。最後の「核」は、主に金属の鉄に若干ニッケルが混じっているといわれています。核の内部は液体金属の「外核」と固体金属の「内核」の二つに分かれます。内核の中心、つまり地球の中心では、圧力360GPa、温度7‚600Kに達します。外核の液体金属鉄は時速10mという速度で流れており、地球の磁場を形成する要因となっています。


こうした地下の様子は、これまで直接知ることはほとんど出来ませんでした。
現在建造中の地球深部探査船「ちきゅう」は水深2500mの海底からさらに7000m掘り抜く能力を持っていますが、これでも地殻の最も薄い部分からようやくマントル層の表層に到達できるにすぎません。でも、これまでマントル層まで到達できる掘削施設はありませんでしたから、これは実は凄いことなんですけどね。

近年、地震波の伝わり方を精密に計測することで、地球内部の構造や組成をかなりの精度で計測することができるようになり、上に書いたような地球内部の大規模構造が明らかになってきました。とはいえ、マントルの深層まで計測器を直接送り込むことが出来れば、地球内部の様子が、それこそ手にとるようにわかるはずです。


でも、核爆弾に10万トンの溶けた鉄、重力波計測装置を受信機にって、やっぱり無理があるよなあ。何しろ危ないし、コストがかかりすぎる。どうやら、プランを立てた本人も「ホントに実現したらビックリだね」とか言ってるらしい。

(May. 16 2003 updated)

by isana kashiwai