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Nov. 01 2003
Columbia Lost 2003.11.01

コロンビア事故最終報告書 非公式日本語版

ここの更新がずいぶん間が開いてしまいました(はてなDiaryのほうは継続していたんですけどね)。この間ずっと、最終報告書の翻訳のほうに集中していたものですから・・・。2ヶ月近く開けてまたそのネタかい、といわれそうですが、どうぞご勘弁ください。

つい、先ごろコロンビア事故調査委員会から、最終報告書の残りが公開されました。これでようやく最終報告書が完結したことになります。公開されたのはAppendixに相当する5つのセクションで、約60の文書からなっています。そのほとんどが、調査委員会の元で調査を行った専門家・専門機関が作成したかなり専門性の高い報告書とデータ集です。

NASA:CAIB Report


さて、この2ヶ月間再びシャトル事故の話題にどっぷり使っていましたが、その中でずいぶんいろんなことを考えました。今日はちょっとそのご報告をしたいと思います。

シャトルの物理的な事故原因はさほど複雑ではありません。
打上げ時に外部燃料タンクとオービターの接続部分から脱落した断熱材の破片が、左主翼に衝突。大気圏突入時にその損傷部分から高温の大気が流入し、翼の構造が破壊されて空中分解を起こした。これが今回の事故の直接的な原因です。これまで何度も報道されてきた内容ですから、いまさら繰り返すまでも無いかもしれません。

では、問題はどこにあったか?断熱材を吹き付ける行程での作業員のミスか?それとも、断熱材の構造と材質そのものが問題なのか?議論がこのレベルですんでいるなら、僕は今回の事故報告書を翻訳しようとは思わなかったでしょう。今回事故調査委員会が出した結論はもっと根本的な部分に焦点が当てられていました。彼らは、「シャトルはそのプランの段階から既に間違った道を歩み始めていた」と指摘したんです。この事故は、その間違いに端を発すると。報告書にはこうあります「調査はテキサス東部から始まったが、結局、30年前の過去にたどり着いた」

僕は、事故報告書という形でこの指摘が明確に示されたことに衝撃を覚えました。実は、この指摘そのものはずいぶん昔からシャトルに対する批判として行われてきたもので、議論そのものはさほど目新しいものではありません。今回外部機関とはいえNASAのごく近くの公式機関からこの報告が出たことで、NASAだけではなくアメリカの宇宙開発そのものがこの問いに直面しました。僕はその問いかけにとても驚いたんです。

「我々は間違っていたのかもしれない」

物理的な欠陥や組織上の問題点を指摘する厳しい声の合間に、彼らはこの報告書のそこかしこで、そうつぶやいています。物理的な欠陥なら改良すれば済みます、組織的な問題点も対策の方法はあるでしょう。でも、このあまりに根本的な問いに答えるのはそう簡単なことではないはずです。

近い将来、シャトルミッションは再開されます。アメリカはきっと勝利宣言をするでしょう(ブッシュが「我々はもう一度月へ行く」と近々宣言するというもあります)。一時的な停滞はあったとしても、大きな流れとしての宇宙開発が止まることはないと思います。でも、その根元のところで、この答えのない問いが通奏低音のように響き続けるはずです。

夢を語るのは難しいことではありません。でも、それを実現していく過程で、描いていた理想は徐々に形を変えていきます。シャトルの開発はまさしくその過程の中でゆがんでいきました。シャトルの次に来るプロジェクトが、シャトル計画そのものが、もう一度その道を辿らない保証はまったくありません。成功への道はさほど多くはありませんが、崩壊への道はいくらでもあるんです。

理想と現実の狭間で、その問いは何度も発せられることになるはずです。我々は間違っているのかもしれない。夢と希望はいつも僕達の前にあるとは限らない。もしかしたら、僕達は後ろを向いているのかもしれない。

このつぶやきは、きっと耳を傾けるに値する言葉です。

(Nov. 01 2003 updated)

by isana kashiwai