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Oct. 07 2005
Show must go on !!

NASA - Swift Spacecraft Solves Mystery of Short Gamma-Ray Bursts (NASA)
持続時間の短いガンマ線バーストの正体が判明しました。すばらしいっ!

結論から先にいうと、「持続時間の短いガンマ線バースト」の正体はブラックホール同士、あるいは中性子星同士、あるいはブラックホールと中性子星の衝突によるもののようです。うわぉ!これは大ニュース。いや大ニュースなんですよ。ほんとに。そりゃもう天文学者大騒ぎ。

え、何をそんなに騒いでいるのかって?えーと...

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ガンマ線バースト(Gamma Ray Barst:GRB)というのは、おもにX線、ガンマ線領域でほんの一瞬きわめて明るく輝く天体のことです。ただしこの「ほんの一瞬」も「極めて明るく」も半端じゃありません。ピークの持続時間はたったの数ミリセカンドから数秒、でも明るさは一つの銀河の星を全部合わせたより明るく輝きます。この宇宙でも最も明るい天体現象の一つです。

このガンマ線バーストが発見されたのは1960年代後半、ソ連の核爆発を観測するため偵察衛星が「たまたま」発見し、1973年にこれが宇宙から来たもので、自然現象であることが確認されました。以来30年間以上その正体は分からず、天文学者や物理学者たちがそれこそ喧々諤々の議論を繰り返してきました。結論が出なかった理由は、ガンマ線バーストはなかなか観測が大変だからです。実は平均すれば全天で1日に1個ぐらいのペースで起きているんですが、なにしろ持続時間が短すぎます。ぴかあっ!と光ったと思った時には既に終わっているんですから。それに、X線やガンマ線は大気で大半が吸収されてしまうために、地上からは直接観測することができません(大気との相互作用を利用して間接的に観測することはできます)。

ただ、まったく観測ができないかと言うとそうでもなくて、ガンマ線バーストが起きた後には、X線から可視光までかなり広い範囲で「afterglow」とよばれる残光が残ります。この残光ならば、大きな望遠鏡を使えば地上からでも観測することができます。ただし、この残光も数時間から1日位で消えてしまいます。つまり、大気圏の外で観測をし、ガンマ線バーストの位置が特定されたら、できるだけ早くそこに地上の望遠鏡を向けると言う観測が必要なんです。

そんなわけで、ガンマ線バーストの研究が盛んになったのはつい最近のことでした。まず、観測衛星が上がり、ガンマ線バーストが起きた位置を高精度で測定できるようになったこと。24時間体制で観測/監視が可能になったこと。afterglowを捉えられるだけの高性能の望遠鏡が登場したこと。衛星からの情報を元にすばやく望遠鏡を目標に向けて残光を観測できる世界的なネットワークが整ってきたこと。これらの条件が整ったことで、ようやくガンマ線バーストの系統だった観測が可能になりったんです。

それで分かってきたのは、まず、ガンマ線バーストは全天に均等に分布し、比較的遠くにあるということ。銀河系内の現象なら、発生場所が「天の川」に集中するはずですからね。それから、ガンマ線バーストには持続時間が長いやつと短いやつの二種類があるということ、そして、長い方のガンマ線バーストはどうやら超新星が関係しているらしいということ。

長いガンマ線バーストは全体の70%ぐらいを占め、同じ位置に超新星が観測されてそのスペクトルがほぼ一致したことから、超新星の中でもとびきり激しいやつだろうということになっていました。でも残りの30%、「持続時間の短いガンマ線バースト」はそのシナリオでは説明できず、謎に包まれたままだったんです。

もちろん、仮説はありました。そのなかでも有力だったのは二つ。「やっぱり超新星爆発をでしょう」という説と「中性子星やブラックホールなんかの超大質量星同士の衝突だよ」という説です。まあ他にもいろいろあったんですが、それぞれ難点があったり、反証する観測結果が見つかったりで、ほぼこの「爆発説」と「衝突説」の一騎打ち状態でした。

仮説の証明は、もちろん観測です。もし、短いガンマ線バーストにも超新星が発見されれば「爆発説」に軍配が上がります。もし超新星が存在しない領域でバーストが見つかったり、ブラックホールなどに特有の現象が観測されれば「衝突説」が正しいということになるでしょう。さて...

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今回の発見に繋がったのは、2005年7月9日に観測された「GRB050709」という名前(なんて分かりやすいネーミング)のガンマ線バーストです。このガンマ線バーストの観測はなかなか画期的な出来事でした。何が画期的だったかというと、初めて短いガンマ線バーストのafterglowを可視光で捉えることに成功したことです。これまで、短いガンマ線バーストはafterglowの減衰が速いために、正確な位置が特定することが難しく、観測は長くバーストが続くものに限られていました。しかし、今回はガンマ線観測衛星HETE-2が「GRB050709」のガンマ線バーストを捉えて世界中に警報が出されると、X線観測衛星のチャンドラがX線残光を観測したのを皮切りに、数十時間後にはすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡をはじめとする世界中の望遠鏡がGRB050709に向けられ、可視光領域の残光が観測されました。

まず、第一に残光の位置に超新星は発見されませんでした。ただし、これは衝突説を支持するものですが、これだけでは十分な証拠とはいえません。実は、決定的だったのはガンマ線バースト元の正確な位置と、そこまでの距離です。GRB050709は比較的近くの銀河の、それも外縁部で起きていたんです。これは、長いガンマ線バーストが遠方の銀河の活発な領域で多く観測されているのと対照的です。

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なぜ、このことがガンマ線バーストの原因を探る上で重要なのかを理解するためには、超新星爆発と中性子星やブラックホールとの関係を念頭に置く必要があります。

超新星爆発というのは、巨大な星がその末期に激しい爆発を起こす現象です。そして、"その跡に"、中性子星やブラックホールといった、超高密度の星が残ると考えられています。この順番に注意してください。通常、超新星爆発はかなり遠方の銀河の、星が活発に生成を繰り返している領域で起こります。「遠い」ということはすなわち宇宙がまだ若く、銀河が生まれてからの時間が短いと言うことを示しています。この時に生まれた中性子星やブラックホールは自らを生み出した爆発や、近傍の天体の爆発などにより、銀河の外側へと押し出されます。そして、これらの星が連星を形成するにはさらに時間がかかると考えられます。すなわち、「中性子星やブラックホールの連星」は比較的近い、つまり宇宙が生まれてから時間が経った古い銀河の外縁部に多く見られるはずです。

今回のGRB050709は、「比較的近くの銀河の外縁部」で起きていました。このことが天文学者にとても大きな意味を持っていたのは、もうお分かりいただけるでしょう。GRB050709は、超新星が存在する可能性が最も低く、中性子星やブラックホールの連星が存在する可能性が最も高い場所で観測されたんです。

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もちろん、この結果だけで、超新星爆発説を完全に捨ててしまうのは早急というものですし、もっと別の、超新星でも中性子星でもブラックホールでもない説明があるかもしれませんからね。

あるいは、もしかしたらこの結果は長年続いた議論に終止符を打つかもしれません。でも、ある現象に対して系統だった説明ができたということは、ある学問領域の終焉を意味するわけじゃありません。むしろその現象を武器としてさらに広い領域の現象に対して探求を試みることができるということです。一つの議論の終焉は、次のより大きな議論の始まりに過ぎません。

もし短いガンマ線バーストが中性子星やブラックホールに由来するとすれば、その観測で構造が分かるかもしれません。あるいは銀河の成り立ちが分かるかもしれません。あるいは宇宙の進化の様子が明らかになるかもしれません。あるいは、もしかしたら理論的にしかその存在が予測されていない重力波が観測できるかもしれません。

そう、きっとこのShowはまだまだ続きます。僕たちはわくわくしながら、彼らの次の言葉を待ちましょう。わくわく!

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Reference
謎の短時間ガンマ線バーストの起源に迫る (理化学研究所)
Flashes shed light on cosmic clashes (EurekAlert/ESO)
HETE-2 satellite solves mystery of cosmic explosions (EurekAlert/University of Chicago)
Discovery of the short g-ray burst GRB 050709(MIT/Nature Article)※PDFファイル
HETE Satellite Solves Mystery of Short Gamma Ray Bursts(MIT)※PDFファイル
Scientists solve 35-year-old mystery of cosmic explosions (SpacefligntNow)

(Oct. 07 2005 updated)

by isana kashiwai