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February 2002

2002.2.19 火

「でんわ」
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ミュージカルの公演がもう間近。

やたら電話の多い話で、電話のベル×3、携帯のベル×1、受話器を
上げる音、留守電メッセージ、モデムetcetc。
電話博士と呼んでくれたまえ(意味不明)。

金がないので近所の図書館にCDを借りに行く。目指すはザ・定番、
某レコード会社の効果音シリーズである。
「家庭・人間」というタイトルに「電話のベル」の項目を見つけた。
ついでに「家庭の機械音」というシリーズも見つけたので借りてきた。

家にかえって聴く。

・・・お前はいつの時代の人間やー!!

ええ、確かに「電話のベル」とは書いてありましたよ、でもね、どこの
家でこんな電話が生き残ってるんですか、本当に文字通り「ベルの音!」
のリンリン電話が。

却下。

「家庭の機械音」にはかろうじて聞いた事のあるような音が入っていた。
CDの発売日を見る。1993年。
「家庭・人間」の方は1990年。たった3年の差。でも明らかに使えない。

それから改めてしみじみ思う。
・・・そうか、12年前にはこんな音が電話のベルの主流だったのか。

機械、特に家電には、人が使いやすいように音を出すものが多い。
で、その音にも流行があって、年代によって微妙に違う。
携帯の音なんかが顕著だ。古い携帯の音は鋭く細い。最近のPCM音源を
つんだ携帯は不自然なくらい丸みのある幅広の柔らかい音を出す。あんな
音じゃ、雑踏の中では聞き取れないだろうと思うくらい丸い。

そういう「機械の出す音」の変遷をたどったら面白いだろうなと思った。

ま、めんどくさいからやらないけど。
誰かCDつきで本にしてくれないかな。

ちなみに本業の時はこういうCDは使わない。
ドラマで使う電話はタイアップ品で、本物の音を使ってくれという注文が
つくことがたまにある。そうでなくても、できるだけ同じメーカーの音を
使ったり、色々気を使う。

なんか今回は真面目なはなしでしたねえ。
(え、オチがつけられないだけじゃないかって?)

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BGM:FunkoPhonicSound



2002.2.13 水

「拾得物」
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さおを拾ってしまった。

月末にやるミュージカルの稽古を見に行った帰り。
新宿で乗り換える。ドアのすぐ脇に重い荷物を置いて一息。と。
さお。
(棹が何かわからない人は、Writingsの「さおのこと」を読んで下さい)
1.2メートルくらいの棹が電車の壁に立て掛けてある。

・・・なぜこんなものがここに。

思わず自分の格好を見直す。いや、今日はロケ帰りじゃない。
第一私の棹は70センチくらい、こっちの方が長い。でも二段なので、
ドラマで通常使うものよりは短い。ENGと呼ばれる、よく街でみかける
中継の最小ユニット(テレビカメラ、ディレクター、照明、音声)が
持ってる長さに似てる。そして明らかに手製。

???

辺りを見回す。ふつーに見えるだけで実はこの電車の中で中継中?
・・・んなわけないか。
じゃあ、棹を持っていてもおかしくない人はいないだろうか?
あ、いるいる・・・私かい。

次の候補・・・通路を挟んですぐ側にいた。
ぐったり死んだような目をして座ってる綺麗な姉ちゃん。
黒いジャケットにアイボリーのセーター、洒落たブーツをはいている
のに何故か足元にジュラルミンケース。

効果さんは機材を持って歩くのにこれを使う。
ひょっとして綺麗なカッコしてるだけで効果さんなのか、姉ちゃん!
そして連日のハードワークで疲れ果てて、少し離れた席が空いた途端に
棹のことなんかころっと忘れて座ってしまったのか、姉ちゃん!
わかる、わかるぞ、疲れ果てた効果さんというのは本当にボケてて
使い物にならんからな!!

・・・と独り盛り上がるもむなしく、彼女はさっさと下車。
あー、なんて話しかけるかまで考えていたのにい。
えーい、次の候補!

・・・結局棹を持っていそうな人などいるわけもなく(第一普通の
人はあれが何かもわからないだろう)、自分の下車駅で持って降りて
駅長室に届けた。

六ヶ月持ち主が現れなければ私は二本のさおの持ち主。
・・・別に嬉しくないやい。

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BGM:Fly away from here/AEROSMITH



2002.2.4 月

「選曲後」
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「続きは次回」と書いたものの、まあ選曲話なんてあんな程度で
終わりですわ。
後は本番。毎回役者の声の大きさも客の人数も違う中で、いかに
やりたいことに近い音を聴かせるか。これが醍醐味。
緊張するけど楽しい。

今回はトラブル話。

芝居小屋にトラブルはつきもので、人為的ミスから機材のトラブル、
果ては理由のわからないものまで、挙げればきりがない。
人為的ミスは今回ほとんどなかった。
機材は自分の私物を持ち込んだのでトラブらなかった。
問題は「理由のわからないもの」
もう慣れて驚かなくなったけど、けっこうある。

今回は、アンプのレベルのセッティングが勝手に変わる現象、
というのがあった。

ゲネの直前にアンプをふと見たら、何故かレベルが変わっていた。
直前まできっかけ合わせをやっていたし、スタッフ以外ブースには
入れないので誰かがいじるはずはないのだが。
服や何かでひっかけて変わるような機構のものでもない。
第一、アンプは足元、それも机の下にあるのだ。
その時はめちゃくちゃ押していたので、疑問に思う余裕もなく、
ま、気のせいかーと思って直した。
ゲネの後、念のためアンプゲージをメモった。

次の日の朝。ブースに入ると、またレベルが変わっている。
今度は更に派手に。
何度メモと見比べてもやっぱり違う。
うぎゃー。しまった、気づかなかった。ご挨拶が足りなかったか。

以前ある劇場で、不可解な機材トラブルが相次いだので、それ以来
ブースに入る時にはきちんと劇場の主にご挨拶する事にしている。
我流なので別に酒や塩は供えない。きちんと心を鎮めて、何事も
起りませんように、よろしくお願いします。とお願いする。
そして、ブースに守り神を置く。ただそれだけ。

守り神、という発想は知り合いの照明さんから教わった。
ただのジャンクなゴム人形やロボット、木彫りの動物などでいい。
一つ決めて、ブースから舞台が良く見える場所に置く。本番中ずっと。
これが意外に効果がある。
要は、ちゃんと忘れてませんよ、芝居がうまく行くように見ていて
下さいね、という気持ちを表す事が大切なのだ。

今回は忙しくてそれが後回しになっていた。やばいやばいと、守り神を
置いて、きちんと黙祷をした。

そんなこんなで何事もなく楽日。大楽は110人程度のキャパに180人
近い客がくると予想され、ぎりぎりまで客席増設でばたばたしていた。
客入れ中も何事もなく、芝居が始まるきっかけの曲を流し、それを
フェイド・アウトした途端。
・・・空調が入ってる〜。
準備していた時、客が増えるから上演中に空調を入れるかどうか、という
話を私からふったのだが、演出は、それはしない、と言っていたのだ。

ふと見ると、客席の空調のコントローラーの側に、制作責任者の姿。
お前かー、レベルが全部変わるじゃないかー!!
その劇場の空調はそうとう古く、稼動音がめちゃくちゃ大きかった。
小さなレベルで曲を聴かせる重要なシーンがある上、ブースと客席では
相当に聴こえ方が違う劇場だったので、すごく神経質になってしまった。

どうにかこうにか本番を終え、演出と話をする。彼女によれば、
「客入れが終わって芝居が始まる直前に空調が入った。制作の人が最後に
席についたので、彼が判断してつけたのではないか」
ということだった。
やはりお前かー!と当の制作を捕まえる。事前に言ってくれー!!
すると彼が一言。
「・・・え、俺つけてないよ」
コントローラーは彼の席の脇に二ケ所。他にはない。
・・・じゃあ誰が??

まあ、この二つの話の教訓は、
1) 劇場では時間と心の余裕を持って行動しよう
どちらも気づかなかっただけで単なる人為的ミス(連絡ミスとか判断ミス
とか)の可能性があるからね。
2) 何が起こっても驚かない。謙虚に、できることを真面目にやろう
どちらも気づかなかっただけで単なる非人為的ミス(何とは敢えて言わない
が)の可能性があるからね。

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BGM:La Campanella/Fujiko Hemming






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