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May 2002

2002.5.29 水

「たまにゃー」
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部屋の片付けをしなきゃーと思いつつ、だらだら本読んで挫折。
ようやく口内炎完治。頭痛もどうにか。梅雨前はいつも調子が悪い。

だるい身体を押して、小劇場系の芝居をたてつづけに二つ見に行く。
芝居を見るのはかなり久しぶり。

昨日観に行った方のお芝居の話。
馴染みの劇場がとても斬新な使われ方をしていて驚く。
通常の客席をばらして二面客席に作り直し、床はコンクリート
打ちっぱなし、アクリルのオブジェを天井から下げたシンプルかつ
凛とした空間。わくわくと足を踏み入れる。

迷わず通常の舞台側(=頭上に調光室がない)の中央の席を選ぶ。
そのほうが音の抜けがいいから。
ふと見上げると調光室の音響さんの真正面。おお。
しかも二階よりも一階の方が音はいいに決まってる。
音響さんも聴けない絶好の音像。わー贅沢。

生楽器をさっくりと、てらいなく録音したオリジナルのBGM。
天井の高い空間にぱらぱらとこぼれていく音がとても気持ちいい。

芝居はごく短いものだったが、作り手の色が鮮やかに出ていて、
すっきりと濃い(意味不明)五十分間だった。
堪能しました。

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BGM:Freesoul-colors



2002.5.23 木

「つやつや」
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こないだ久しぶりに今担当しているドラマのオンエアを見た。
本当は毎週見ないと勉強にならないんですがね。
いいのかこんなことで>下っ端M。

それはともかく、現場で見るのと家のテレビで見るのはずいぶん
感じが違う。
オンエアは例えて言うなら、「つや出し寒天をかけたイチゴ」
という感じ。
(つや出し寒天=ショートケーキやなんかの上にのってるイチゴなど
果物の表面に、寒天をかけてキラッとさせること。え、字面通りじゃ
ないかって?)

なんというか、オーラみたいなものが出てる。現場でどんなに下手に
見える(そして実際に下手な)役者さんでも、オンエアで見ると、
あー、まあいいか、って。いい役者さんは、うわかっこいいすげー、
こんな人をナマで見てんのか俺、って感じ。

テレビマジーック・・・つーか、ただダマされてるだけですかね。

でもまー、真面目な話をするなら、「つや出し」をすることこそが
我々ポストプロダクションの仕事だ。
多少難ありな役者さんや台本でも、そのドラマがいちばん伝えたい
ことがきちんと伝わるように、映像を編集して台詞を整え、効果音を
選び、曲を編集する。

大変だけどね。面白い仕事なんでしょうね。たぶん。きっと。

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BGM:The Black Crows GreatestHits



2002.5.18 土

「ダメダメ」
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用事で都心に出たついでに、会社に今週仕込む分の台本と
6mmを届けに行く。
そして何故か台本だけ持って帰ってきてしまう。
明日は完全休みだと思ってたのに・・・しくしく・・・。
またわざわざ届けにいくのか・・・。
ああおバカさん>自分。

それはともかく、やってるドラマの視聴率がいいと嬉しい。
現場の雰囲気が露骨に違うもんです。

知り合いのミキサーさんに聞いた話。
以前その人がやっていたドラマでは、視聴率が20パーセントを
超えると、プロデューサーがでかくてうまい肉マンをスタッフに
差し入れしてくれたのだそうだ。
それが人気のドラマで、毎週のように20パーセントを超え、
スタッフは毎週のように肉マンを食い、しまいには肉マンの肉の字も
見たくなくなったそうだ(変な表現)。
・・・なにも毎回同じものじゃなくたってねえ。
なんか工夫すればいいのに、とにかく本人が肉マン好きだったらしい。
多いんだ、そういう片寄った変わった人、プロデューサーっちゅー
人種には。(偏見?)

昨日はチュッパチャップス(アメリカンな棒付きキャンディー)が
山のように差してあるタワーという謎の差し入れが。
一体いくらするんだろう・・・?
百年ぶりくらいにチュッパチャップスなめました。
監督もカメラマンも記録さんも音声さんもみんなチュッパチャップスの
棒をくわえて撮影してました。
なかなかいい光景でした。

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BGM:Tahiti80



2002.5.12 日

「うつくしき思い出」
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結局「紫外線によるアトピーの悪化」と判明。
ああ哀しきもやし人生。

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先日会社の先輩(というか部長)と話をしていたら。突然、
「いずれ退職しても、6mm見たらお前を思い出すだろーなー」
と言われた。
そのこころはこうだ。

ある日の夜中。珍しく他のスタッフはほとんどおらず、部長は心静かに
美しいドキュメンタリーの選曲をしていた。

すると隣のスタジオから突然、
「うぎゃー!!」
というこの世のものとも思われぬものすごい叫び声が!!

何事かと仕事を放り出し、ばん、とスタジオの扉を開けて叫ぶ部長。
「どうした、なんかあったのか!?」(ここ、刑事物調に渋く)
すると髪を振り乱した下っ端Mがぬぼーっと振り向いて一言。
「・・・どうしても1音切れないんです・・・」
足元には切り刻まれた6mmの山。

部長はざしきわらしかと思ったそうな。

私がまだフルタイムで働いて、番組の選曲をやっていた頃のこと。
今はもうみんなMacで曲編集をするのだが、私はMacのあるスタジオを
使えるほどえらくないので、いつも6mm編集だった。

あ、Macできるよ、できますよ、念のため。(まけずぎらい)

私はしばらくして、選曲から手をひいてドラマ班になってしまった。
その直後にSONYが6mmの生産を中止したので、今後数年以内に6mmは
音響効果の現場から消えてしまう。
私のすぐ下の後輩達は、もう6mmの手切り編集ができない。
そんなこんなで今でも部長は「6mmといえばM」と思い出すのだと言う。

・・・いいおはなしでしょ?
(え、どこがだって?)


-------解説:「1音切れない」とは-------

6mmとはオープンリールのテープの一種。
いわゆるカセットテープの、テープがカセットに入ってなくてむき出しに
なったものを想像して下さい。それを手のひらからはみだす位のサイズに
拡大してください。はい、それが「6mm」。
テープの幅が6mm位なので「6mm」と呼ぶらしいです。計ったことない。
走行スピードは19cm/秒もしくは38cm/秒。カセットにくらべるといかに
音質がいいかわかるっちゅーもんですね。

さて、曲編集をする時は、そのテープの切りたいところにデルマ(色鉛筆
みたいなもの)で印をつけて、はさみで切って、専用のテープで貼るわけ。
結構難しくて、「1音」どころか、ほんの5〜8mm切り損なってもダメ。
19cm/秒のうちの、例えば7mmとすると・・・。
190割る7は約27。1秒の約27分の1。
下っ端Mは、その27分の1秒の世界で格闘してたわけです。

ちなみにテレビでは1秒=29.97フレーム。1秒に約30枚の静止画の、
パラパラマンガということ。

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BGM:Yoshinori Sunahara LoveBeat



2002.5.7 火

「へろへろ」
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じんましんのようなものが出てひたすらかゆい。
急激に日光に当たり過ぎたせいだろうか。
普段暗いところに生息してるからねえ。

ゴールデンウィークの太陽って、普段より気合入ってる
気がしませんか。

昨日の収録中、知り合いのメイクさんに相談したら、
「とにかく良い日焼け止めを買え!あと、まともな生活!」
まともな生活、どこに行けば買えますか。

口内炎も痛い。

そんなわけでふて寝。

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BGM:blow up vol.1



2002.5.4 土

「黄金生活」
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ようやく今日明日だけゴールデンウィークな私。
昼は緑の中をマウンテンバイクで疾走し、涼しい風に吹かれて
夕方寝をし、晩は紹興酒を飲んで幸せな一日。

夜、NHKでローザンヌの国際バレエコンクールを見る。

全く知らなかったのだが、古典、コンテンポラリーの課題曲以外に、
フリーバリエーションもあるのですね。
決勝は計三種類踊るわけ。

フリーだと言ってるのにキトリやカルメンなどの古典を踊る子、
先生が振り付けたオリジナルを踊る子、モダンっぽいものを踊る子
など色々。

なかでも興味深かったのは、自分で振りつけている子がけっこう
いたこと。
カナダの男の子がテクノ系の曲で自作していたが、文法はきちんと
バレエで、でも今の音楽のリズム感や現代の少年の等身大の感性が
出ていてとてもよかった。良い意味で、普通の少年の踊りだった。
彼は二位だった。こういうのがちゃんと評価されるなら、バレエの
世界も捨てたもんじゃないなと思う。いつまでも姫や王子や魔王じゃー
仕方ない。コンテンポラリーな芸術じゃないでしょ。

日本の振付家で、今回コンテンポラリーの課題を作った島崎徹さんが、
いいことを言っていた。
「バレエの技術を五十音に例えるなら、あいうえおがきちんと発音
できなければお話にならない。でも、あ・り・が・と・う・という音が
きちんと発音できたところで、ありがとう、と伝えたい気持ちがなければ
意味がない」
細かい表現は忘れてしまったが、こんなようなことだった。

バレエに限らず何をやるにしても言えることだと思う。
技術しかない人はもちろん、感情がとか人間性がとか、技術をないがしろ
にしたまま芸術のフリをする人(舞踏なんかでいっぱいいたぞ、そういう人)
に聞かせてやりたいですわ。

もちろん自戒の意味もありつつ。くくく。

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BGM:the best of STING



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