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ステレオ耳とモノラル耳
その2:ステレオ耳

さて、「ステレオ耳」。

ステレオ耳ってなんでしょう。うまい定義が見つからない。
色々あるし。「定位を聞く耳」とか「音像を聞く耳」とか。
そこで今回は、「実践ステレオ耳!ベースを聞ける耳になる!」とでも題してみましょうか(笑)。


<基礎知識その2>
「ベース」というのは、ベースノイズ、つまり「その場所でいつもしている音」のこと。


例えばよく使う音に、街ベースというのがある。
想像してみよう。
新宿や渋谷のような繁華街、もしくは大手町のオフィス街。大きな街の交差点に立ってみる。
どんな音が聞こえるだろうか。

休日、昼間の繁華街。
車の量が多い。乗用車と商用車が半々くらい。この道はトラックはあまり通らない。
遠くで時折クラクションが聞こえる。路上駐車が多くて通りにくいのかも知れない。
信号が青になった。よく晴れていていつもより人出が多い。
延々繰り返される電器屋の店頭BGM、大売り出しの呼び込みの声。
通り過ぎていく中国語らしいイントネーションのかん高い会話。ミュールをはいた女の子。
ぺたぺたかつかつ、足音の汚い人が増えた。
あちこちから着メロ着メロまた着メロ。

例えば新宿の紀伊国屋(古い方)の前で聞こえる音といえばこんな感じだろうか。

これを読んで、知らない音はないだろう。頭の中の風景にひとつひとつはめていってみよう。
・・・着メロ着メロまた着メロ、と。完成。

が、なにか足りないと思いませんか。

今あなたの頭の中にある音風景を例えて言うなら、白い画用紙に車や中国語や着メロの形を
した色紙を切り抜いてぱらぱらと置いてみた感じではないだろうか。
色紙と色紙の間は、当然まっしろ。白い背景の部分を埋める色がないとリアルな風景にならない。

その「背景の色」、つまり「音と音の隙間にある音」が、ベースの重要な要素なのだ。

交差点に立ってどんな音がしているか聞くことは、誰にだってできる。
あまり聞くのが得意でない人も、「こういう音がしている」と言われればまあわかるだろう。
これは「普通に音を聞ける耳」

そこに「どこからその音が聞こえるか」という要素を足してみよう。実は誰でも無意識にやっている
のだが(だって目の前を車が右から左へ通ったかその逆かは、目をつぶっていてもわかるでしょう)
広い場所に立って、意識して「この方向でこの音がしている」という風に聞くのは少し慣れがいる。
これが「定位の聞ける(わかる)耳」。ステレオ耳への第一歩。

だがもう一段階レベルを上げて、「隙間の音」、つまり「これこれの音」と名前のつけられない音を
きけるかどうかというと、それはなかなか難しい。

我々は普段、聞いた音を何の音か判断している。わからない音については、危険を感じるなど、何か
必要に迫られなければ意識から排除されている。大抵の場合には。
が、「隙間の音」を聞くには、意識からこぼれ落ちている音を聞かなければならないのだ。

・・・以下次号。




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