ノースロップN-205B
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計画
1960年代初頭、MOL(有人軌道周遊実験室)、X-20ダイナソアと独自の有人宇宙活動を計画していた米空軍は、宇宙飛行士の選抜・育成の為、1962年、エドワーズ空軍基地にARPS(航空宇宙研究パイロット学校)を創設し、チャック・イエーガー大佐を校長に任命した。
同校では、訓練機材として、F-104B/NF-104A等を使用していたが、有翼宇宙往還機による成層圏での機体取り扱い・滑空での帰投技術の取得により適した、専用の訓練機材としてノースロップ社より提案されたのが、同社のT-38高等練習機をベースとした本機(社内名称N-205B)である。
開発
FY63に発注されたT-38-50-NOの中から、63-6191~61196として、試作機2機、4機がX-20要員訓練用として、秘密裏に発注・製造された。
3基のロケットエンジンを装備して、地上より自力で離陸、マッハ3の最高速度で成層圏域に到達し、弾道飛行によるパラボリックフライト、RCS姿勢制御、再突入、滑空による帰還等のシミュレートが可能である事が要求された。
その後、1963年にダイナソア計画の中止と宇宙飛行士グループの解散により、機体の運用は中止となったと推測されるが、その後の所在・活動共に不明である。
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構造
米空軍の高等練習機として採用された、T-38Aをベースに、J85ターボジェットエンジンの代わりに、3基のロケットエンジンを装備、インテイク前方にチャインを延長する形で、酸化剤・冷却用アンモニアタンクを収納、動翼駆動・電源用に、インテイク部分の空間を利用してガスジェネレイター・APUが配置された。
又、機首にピッチ・ヨー、主翼翼端にロール方向の、成層圏での機体姿勢制御用RCSが各2基配置された。
更に機体後部下面には、減速用のドラグシュート収納部が設けられた。
コクピットは、耐熱・耐圧仕様として丸い舷窓部分を残して覆われたキャノピーを備え、ロケットエンジン・RCSの制御パネル、通常の操縦桿に加えて、RCSによる姿勢制御用の操縦桿が右側面に取り付けられた。
性能
N/A
実績
ARPSに於ける試験・訓練飛行の詳細が、現在までも未公開の為、その実態は明らかになっていない。
しかしながら一部では、マッハ3クラスの自力離陸・帰投可能な機体として、当時脅威となりつつあった、対マッハ3クラスの超音速爆撃機/偵察機用の迎撃機として白羽の矢が立ち、 投棄可能パイロンに70mmロケット弾ポッド、コクピットにF-5戦闘機用のリード・コンピューティング・サイトを装備した機体による、サブ・オービタル迎撃シミュレーション"Chotto Tiger"が、ビール空軍基地所属のU-2/SR-71に対して実施されたという、未確認情報が有る。