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SETI @ ...

2000.03.16 posted

もしかりに、ぼくたちよりも知能の高い人間がいたら、ぼくたちは、彼らを理解することができるだろうか? 何をもって僕達よりも知能が高いと判断するんだろう? 逆に、彼らはぼくたちを知性ある生物と見なしてくれるだろうか?

僕はSETIには懐疑的だ(無駄だとは、これっぽっちも思わない)。宇宙人はいると思う、そのことは否定しない。確率的にもそれはきっと正しい。だが、彼らと人類がコンタクトを取れるかどうかは、極めて怪しいと思う。距離が云々とか時間がどうだとかそういった問題ではなく、生命とか知性とかぼくたちが呼んでるものは、とても恣意的なものだとおもうからだ。

知性の話から始めよう、こういうときにいう「知性」っていうのは紛れもなく人間の「知性」のことだ。例えば、犬は人間のことを「自分達より知性のある生物」と考えているだろうか? イルカはどうだろう? あるいはチンパンジーは? おそらくNOだ。そして、それは彼らに知性が足りないからではなくて、知性という尺度そのものが彼らの中にないからだ。

人間が地球の生物の知的ヒエラルキーの頂点にいるという考え方はとても西洋的だと思う。この宇宙には「知性」という絶対的ななにかがあって、すべからく生命はそれを獲得する方向に進化する。けっ、てなもんだね、えらそうに。科学者達のいう「知性」ってやつは「人間的知性」でしかないことを忘れるべきじゃない。「犬的知性」から見れば人間なんて、へみたいなものだ。へっ!

例えばね、人間の指が3本しかなかったら、どんな文明になっていたと思う? ありとあらゆる物が違う形をしていただろうし、きっと物の数えかたも違っていたから物理法則の捉え方も違っていたかも知れない。あるいは、生物時計の針が今の10倍の速度で動いていたら? 逆に1/10だったら? たとえば、情報の伝達に音声を使っていただろうか? もしも、人間が今みたいな視覚的な生き物じゃなくて、コウモリみたいな聴覚的生物だったら? ぼくらは星の存在をどうやって知っただろう?

同じ環境、同じ進化のプロセスをたどった生命圏でさえ、こんな多様性が生まれるのに、まして大気の組成が違い、重力が違い、恒星のスペクトルが違い・・・そんな世界で生まれた生命とコンタクトが取れると思う? そもそも、彼らを(そう呼んでいいかどうかも分からないが)生命だと認識できるだろうか?

動いてるから? DNAがあるから? 子孫を作る? いずれもこの星の生き物でさえ例外がいる。僕達が普段生命と呼んでいるものの辺縁はうっすらと非生命のなかにフェードアウトしている。人間が名付けたものでさえその状態なのに、まして・・・。

人間は人間の尺度でしか世界を見ることができない。それは、自分が自分という尺度でしか物事を見られないのと全く同じ。ぼくたちよりも頭のいい生き物のことを、ぼくたちは想像できない。

電波でコミュニケートできる相手しか人間にとっては意味がない。われわれが有意だ、と思われる信号しかわれわれにとっては価値がない。SETIはじつは「人間」を探しているのだ。

SETIプロジェクトは人間を再定義する。
宇宙人探しというお題目より、そっちのほうがよっぽど意義があるような気がする。

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SETI : Search for Extra-Terrestrial Intelligence
電波望遠鏡を使って、ただひたすら空に向かって耳を澄まして、地球外生命体の発している電波を受信しよう。という研究活動。うーん、とってもロマンチック。最近話題になったSETI@HOMEというのはこの電波の解析を世界中のHomePCでやってしまおうというプロジェクト、SETIのWebSiteからソフトを落としてくると、自分のコンピューターで宇宙からやってきた電波の解析ができる。

SETI@Home
SETI@Home (jp)

2000.03.26 update

by isana kashiwai
isana.k [at] gmail.com