2005-03-01
§ [clip] Daily Clipping
Virgin Atlantic Global Flyer : Home Page
昨日の段階で、今日飛べるかも、なんていう予告が出ていたGlobal Flyerですが、本日00:47UTC(日本時間9:47)に無事飛び立ったようです。がんばれー。途中、日本上空を通過する予定。高度4000mとのことですので、上を通れば見えるかもしれません。
最新情報は、以下のページでどうぞ。
Virgin Atlantic Global Flyer : Flight Tracker
知らない人のために書いておくと、グローバルフライヤーは無給油単独無着陸世界一周を目指すプロジェクト。名前を見れば分かるようにスポンサーはバージンアトランティックです。
機体を設計したのは、初の無着陸世界一周を成し遂げたボイジャーの設計を行ったバートルータン率いるスケールド・コンポジット。最近では初の民間有人宇宙飛行で有名になりましたね。
パイロットはスティーブ・フォセット。2002年にこれまたヴァージンアトランティックのスポンサードで気球による単独世界一周を成功させた人です。
2005-03-03
§ [clip] Daliy Clipping
Virgin Atlantic Global Flyer : Flight Tracker
燃料切れが懸念されていたようですが、ハワイを通過して、飛び続けることにしたようです。あと、もう少し!
H2Aロケット打ち上げ成功率と理科教育【埼玉県】 (livedoor)
日本のH2Aロケットの打ち上げ成功率は78%であり、欧州、中国、アメリカなどの海外の打ち上げ成功率約90%と比べて劣っている。その理由の一つとして、日本の理科教育において、宇宙への興味やロマンをかきたてられるような授業内容が不足していることが挙げられよう。
挙げられないと思います。
「みんなが宇宙のことを考えるようになれば、予算もたくさん回されるようになって、失敗が少なくなると思います!」ってことかなぁ?H2Aロケットの打ち上げ成功率が低いのは、単純に打ち上げ数が少ないからだと思いますが...。
H2Aは今回でまだ7機目。この1機種だけ、しかも開発から7機目という「技術が枯れていない」状況での成功率と、数十年にわたって打ち上げ続けているアメリカやロシアのロケット全部の成功率を比べるのはナンセンスでしょう。
たとえば、ESAアリアンVの初飛行から10機を見ると、完全な成功は7機だけ。1機はコントロールエラーで発射後40秒で爆破、残りの2機はトラブルで予定の高度に達しなかった。初期の頃なんかもっとひどくて、ロシアのプロトンシリーズやアメリカのレッドストーンは最初の10機のうち5機が失敗しています。ちなみに、レッドストーンは初の有人飛行に使われたんだけど、その前までに71回中13回失敗。アランシェパードは、成功率81.6%の機体に乗っていたんですねえ。
まあ、もう少し成功率の高い機体もあるんだけど、技術的に新しいことに挑戦した機体っていうのは最初の頃はだいたい成功率が低い。確かに、7回のうち2回失敗は決していい数字とはいえないし、失敗を正当化する理由にはならないけれど、純粋に数字だけ比べるならさほど驚くほどのことじゃないと思う。
2005-03-04
§ [clip] Daily Clipping
Aviation history has been made! (GlobalFlyer)
無事飛び立ったSalinaに着陸したようです。わーい。おめでとうございます!
2005-03-07
前回の報告(2/24)以降、以下の機能を追加しました。
・readmeを作りました。
・月を追加しました
・月の満ち欠けを再現しました(ただし、傾きは再現していません)
・木星を追加しました
・新月を丸く切り抜きました(日食対策なので新月だけです)
ちなみに、次に全国で日食が見られるのは2009年7月22日のお昼前です。
§ [clip] Daily Clipping
Twin Mars rovers in instrument mix-up (NewScientist)
メールでタレこんでいただいたニュース(yamaさんありがとうございます)。
予定の観測期間を大幅に超えて元気にデータを送り続けている2台のローバーですが、オポチュニティに組み込まれるべき機材がスピリットに、スピリットに組み込まれるべき機材がオポチュニティに組み込まれていたようです。
ほとんど同型のローバーのまったく同じ機材が入れ替わっていただけなので、一見何の問題も無いような感じがしますが、同じ機械であっても、微妙に癖が違うため、得られるデータが違ってきます。つまりこれまで公表されていたデータはかなりの誤差を含んでいるということになります。
生データが残っているので、両者の違いを補正するのは難しくないとのことですが、発表されたデータを元に研究をしていた世界中の研究者の心境やいかに、という感じですね。まあ、「かつて火星に水が存在した」という事実が覆されるとは思えませんが...
2005-03-08
§ [clip] Daily Clipping
運輸多目的衛星新1号(MTSAT?1R)の静止化完了及び愛称について(国土交通省航空局・気象庁)
http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jma/press/0503/08a/nickname.pdf
先日H2A-F7で打ち上げられたMTSAT-1Rですが、無事静止軌道に乗ったようです。一時期はもめていたようですが、愛称は「ひまわり6号」とすることに決まったそうな。回ってないけど...
気象衛星としての運用開始は早ければ5月、遅くとも夏ごろまでにはという感じでしょうか。航空管制衛星としては、来年頭に運用開始の予定です。
関係者の皆さん、おめでとうございます。
H2A補助ロケットの捜索中止…現場海域のマグロ漁で (YOMIURI ON-LINE)
打ち上げ成功で、政府内に「失敗原因を究明するわけでもないのに、数千万円をかけてまで探す必要があるのか」という雰囲気が強まったことも、捜索断念の流れを後押しした。
ある!おおあり!多少予算かけてでも回収するべきだと思います。
ロケットっていうのは、基本的に打ち上げたら終わり。本番でなにがおこってるかを知る方法がほとんど無い。失敗したときに部品を回収するのは当然だけど、成功したときのデータが無ければ、改良するにも効率が悪いし、万が一失敗したときの原因究明が難しくなる。まして、今回は改良後最初の打ち上げだよ。改良にちゃんと効果があったかどうかを検証するためにはSRBを拾ってくるのが一番いい。ここで数千万円かけたものが、後で数億円を救うかもしれないのに...
意思決定をする人たちは、事故から何を学んだのかな?それとも、あの事故が起きるに至った膨大なフォルトツリーの中に、自分たちの意思決定が含まれていることに思い至っていないのか。いないんだろうなあ。どんなに無駄にお金が使われていたとしても、予算を切れば何らかの変化が起きる。そのリスクを読んだ上でコストカットしているなら同じ予算カットにしてもこういう風潮にはならないはず。「リスクに対する読みの確かさ」が政治家の力量だと思うけどなあ(っていうか他にあるかな?)。
危機意識は、つねひごろから「危ない、危ない」といい続けていることじゃないし、危機管理は危うさを0%に下げることじゃない。むしろ、危機意識というのは「危うさ」は決してゼロにはならないということ受け入れた上で、その「危うさ」とどうにかうまくやっていく、というマインドセットのことじゃないか?危機管理というのは、その危うさをなるべく分散させて、いったん発現してしまったときのリソースの損失を最小限にとどめることじゃないだろうか?「事故を起こすな」という一言だけで済ませるのは、まさしく危機意識の無さの露呈でしかないし、危機管理の放棄でしかないよ。
New Horizons (via 星が好きな人のための新着情報)
探査機にあなたの名前を乗せようキャンペーン。今度は冥王星!
2005-03-16
§ The Hitch Hiker's Guide to the Science
「サイエンスを楽しむためのリソースガイド」このサイトは、他の誰でもなく、僕が一番欲しかったサイト。ずいぶん待ったけれど、誰も作ってくれそうにないので、自分で作ることにした。
実は一年ぐらい前に立ち上げて、ずーっといじっていたんだけど、そのまま腐ってしまいそうなので、とりあえず公開(映画も公開されるみたいだし)。さて、どこまで行けるだろうか。
何度も言ってきたことだけれど、「科学を楽しむ」ことは「科学を楽しく学ぶ」こととは違う。サッカーをプレイするのに必要なスキルと、サッカーを観戦するために必要なスキルはまるで違う(もちろん一部は重なっているけれど)。ボールをうまく蹴るのはなかなか大変だけれど、観客席から選手を応援するのはそこまで難しくない。ボールが蹴れなくても、サッカーを楽しむことは出来るはず(もちろん蹴れた方がもっといいのかもしれないけどね)。僕がこのサイトでやってみたいのは、ボールを蹴ることじゃなくて、サッカーを見て楽しむことの方。
トップページにも書いたけれど、このサイトは「科学を分かりやすく」とか「便利で役に立つ」とか「すべてを網羅」なんてことはこれっぽっちも考えていない。ただ、そこに書かれたリンクの先で何か面白いことがおきていること、そしてそれに対して誰かがわくわくしていることだけは保証できる。
ここからどこへ行くやら分かりませんが、どうぞごひいきに。
実は、もう編集に参加してくださっている方もいます。ありがとうございます。
「後ろのtheはいらないのでは」という指摘がどこからともなく聞こえてきたよ。
うー、元ネタにそろえたんだけど、やっぱり変か、変だよねえ。
うー、よし、取ろう
2005-03-18
§ [clip]Daily Clipping
土星の衛星エンケラドスに大気 「生きた衛星」の可能性 (asahi.com)
えええ、ほんとに!
これが本当なら、太陽系で2つ目の大気を持つ衛星ということになる。何で土星ばっかりなんだ?
しれっと、「火山の噴火や間欠泉の噴出のようなものがあるとすれば...」なんて書いてあるけど、直径500kmじゃ小さすぎて地熱を維持できずにとっくの昔に冷えているはず。もっとも疑わしいのは氷の火山。
エンケラドスは、太陽系で最も高い反射率を持つ天体。なんと、太陽光の90%を反射する。どうやら「氷でつるつる」だかららしい。土星のE-リングの元になった物質を放出したのではないかと言われていて、氷の火山の存在する可能性が高い。ただし、そのメカニズムについてはよくわかっていない。
もうちょっと詳しい記事は以下を参照のこと
Cassini finds an atmosphere on Saturn's moon Enceladus (SpacefligntNow)
Atmosphere found on Saturn moon (BBC)
VLTI First Fringes with Two Auxiliary Telescopes at Paranal (via 星が好きな人のための新着情報)
南米チリにあるヨーロッパ南天天文台が1.8m補助望遠鏡による光学干渉に成功というニュース。ニュースリリースによると、もし仮に補助望遠鏡を最大幅まで展開すれば200mの距離をとることができて、そうすると月面の宇宙飛行士が見られるほどの解像度が得られるそうな。えー、これは「解像度だけなら」という話なのかな。補正光学と光学干渉の合わせ技でほんとに見えたりするんだろうか。
えーと、分解能は116÷口径だから、口径200mで月までの距離を38万キロとすると...
atan(((116/200000)/3600)*degree)*380000000 = 1.06852935 (Googleで計算)
確かに、分解能だけなら月の上の1mの物体が見分けられることになるね。
でも、分解能0.00058秒って...こんな精度で大気の揺らぎを補正できるのかな。
参考)Astronomy/大型望遠鏡(h2gs)
2005-03-23
§ [clip] Daily Clipping
NASA'S Spitzer Marks Beginning of New Age of Planetary Science (SpaceRef)
宇宙赤外線望遠鏡スピッツアーが太陽系外の惑星からの光を直接観測することに成功した、というニュース。ひょー!
えーと、これはものすごい進展。どれくらいすごいかというと、「冷蔵庫があるかどうか分かる」という状態から、「冷蔵庫の中身が見える」という状態になったぐらいにすごい。
追記)
h2gsにdtomono氏による解説記事がアップされています。
http://www.lizard-tail.com/h2gs/index.php?PlanetarySciencewithSpitzer
なるほど、明るさが変化したのの差分を取っただけなんですね。
宇宙ステーション、来春から日米の利用ピンチ (YOMIURI ON-LINE)
2000年に発行されたロシアの大量破壊兵器と弾道ミサイル技術のイランへの流出を防止する「イラン不拡散法」には、国際宇宙ステーションを通じた技術拡散を防ぐために、ロシアの宇宙開発機関がイランにミサイル技術を拡散させないという確約をしない限り、ロシアへの資金提供をしない、という条項が含まれている。
イランをはさんで米ロの関係が焦げ臭くなっている上に、今秋でロシアとのソユーズ無償運用の契約が切れるというかなりバッドタイミング。このまま関係悪化が続くと、ソユーズには金出さんもーん、ということになるかもしれない。しばらくはシャトルが飛んでいるから何とかなるかもしれないけど、2009年のシャトル退役から次世代機が飛ぶ2014年までの5年間、ISSへ行く方法がなくなってしまう。
解決手段は二つ。
アメリカが法改正をする→ブッシュ君が強硬そうなので、難しいかも。
ロシアが拡散させませんと確約する→これができないのは、やっぱり大人の理由なのかな。
*1 リンク先は、法律制定時のNASAからのコメント。「アメリカの勝手でロシアへの資金をカットしたら、他の国の資金負担が増えて、みんな逃げてまうで」という内容
「夢や希望じゃロケットは飛ばない」というのは分かってるつもりだけど、やっぱり、げんなりするなあ。
で、日本の宇宙開発はというと...まるで間に合いませんね (YOMIURI ON-LINE)。補給機は何とか間に合うかな?ていうか、無人機を有人機に改造なんていうばかなこといってないで、最初から有人目指して開発すればいいのに。無人機を有人機に改造するのは、たらいを風呂桶に改造するようなもんだぞ。新しく作った方が早いって。
2005-03-28
§ [clip] Daily Clipping
フリーマン・ダイソン、宇宙開発計画の継続を訴える (ITmedia)
ああ、ダイソン先生まだ元気なんだ。最近話題がなかったので、すっかり隠遁生活をしているんだと思っていたけど...。大言壮語は相変わらずだなあ。個人的に「最も尊敬する科学者」の一人なので、元気な言葉が聞けただけでも大変うれしい。
How to Waste $300,000 (NASA Watch)
Astronaut Space Safety 2005 という報告書の出自が非常に怪しげだというお話。どうやら中身もでたらめらしい。続報1、続報2。もしかしたら、スペースシャトル事故に便乗した詐欺事件かもしれない。
この報告書はSpace Shuttle Children's Trust Fundから300,000ドルの資金を得て作られたとされている。でも、この基金の公的な記録を見ると、「災害援助」と「孤児院などの子供たちへの援助」を目的として設立されたにもかかわらず、これまでコロンビアとチャレンジャーの遺族にわずかな金額が支払われただけで、ほとんど支出が計上されていない。なのに、突然30万ドル(約3200万円)ものお金が、報告書を作るためだけに支出されているのは、かなりおかしいんじゃないの?ということらしい。
しかも、続報によると、この報告書にはまったく新しい事実が含まれていないうえに、あまりに間違いが多く、きわめてお粗末な代物だという。
うーん、限りなく黒に近いような気が...
2005-03-29
3月31日(3月30日深夜)午前0時台から1時台にかけて、月がさそり座のアンタレスを隠します。月を見つけるのは、えーと簡単ですね。南東の空の低いところに出ているはず。1等星が月に隠されるのは、14年ぶりの出来事。次におきるのは11年後のアルデバランになります。かなり貴重な機会なので、晴れていたら外に出てみましょう。ただ、月の位置が低いので開けたところに行かないと見えないかもしれません。
月に隠されるアンタレスはとても赤く、さそりの心臓であるとされています。ちなみに、あの星を称して「ルビーよりも赤く透き通り、リチウムよりも美しく酔ったようになってその火は燃えている」といったのは宮沢賢治。
僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
いつぞや書いたような気もしますが、あの星を見上げて、オリオンを刺し殺した蠍や、火星に反抗する星(アンタレスの語源、アンチ・アーレス)の姿ではなく、2人の少年の旅路とその勇気を思うことが出来るのは、とても幸せなことだと思います。