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"Columbia, Houston, comm check..."
Columbia Lost - Feb 1, 2003


Discription

2003年2月1日、コロンビア事故の際、ミッションコントロールルーム内で交わされた音声記録。

STS-107のクルー。左からデビッド・ブラウン(ミッションスペシャリスト)、リック・ハズバンド(船長)、ローレル・クラーク(ミッションスペシャリスト)、カルパナ・チャウラ(ミッションスペシャリスト)、マイケル・アンダーソン(ペイロードコマンダー)、ウィリアム・マックール(パイロット)、イアン・ラモン(ペイロードスペシャリスト)。 (Copyright:NASA)

スペースシャトルコロンビア、STS-107は打上げ時に外部燃料タンクから脱落した断熱材が主翼の損傷を与えたことが原因で、帰還途中で大気圏突入時の熱に耐えられずに空中分解を起こし、7人の宇宙飛行士の命が失われました。

この音声記録は、コロンビアの大気圏突入開始(Entry Interface)から、緊急時対応の開始までの40分間に、コントロールルームで交わされた会話をほぼノーカットで記録したものです。

この写真にはミッションコントロールチームと亡くなったSTS-107のクルーが一緒に写っています。中央でミッションロゴを持っているのが、フライトディレクターのリロイ・ケイン。彼の右側にいるのが順に、リック・ハズバンド、ウイリアム・マックール、デビッド・ブラウン、カルパナ・チャウラです。リロイ・ケインの後ろ、左肩のところに写っているのがローレル・クラークです。(Copyright:NASA)

*

この音声記録はFlight Director Loopと呼ばれるもので、フライトディレクターと各セクションのチーフの会話を記録したものです。左チャンネルにはFlight Director Loopを、右チャンネルには報道官の解説が入ったNASA-TVの中継の音声を重ねてあります(このため数カ所でコンマ数秒のタイミング調整をしています)。なお、音声記録の性格上、会話の間にかなり長い無音部分が含まれています。

また、コメントとして事故調査によって明らかになった事故のプロセスを付記しました。これは、コロンビアからのリアルタイムのテレメトリ、事故後に回収された搭載機器のデータ、目撃証言などから再構成されたものです。ただ、煩雑さを避けるため、各イベントについては主要なものだけをピックアップしてあります。

Comment

少し長くなりますが、写真を使って状況を説明しておきましょう。

コロンビア事故の原因になったのは、打上げ時に外部燃料タンクから脱落した断熱材の破片が、左翼前縁部のRCCパネルに損傷を与えたことでした。帰還時に、大気圏突入に伴う高温のガスがこの破損箇所から流入したことで、翼の内部構造が破壊され、空中分解を起こしたのです。

これは、STS-107の打上げ準備中のコロンビアを撮影したもの。断熱材は、外部燃料タンクとシャトルの機首をつないでいるバイポッドランプと呼ばれる部分(機首付近の赤いマーク)から脱落し、左翼前縁部のRCCパネル(下の赤いマーク)に衝突しました。

これは、断熱材の衝突の瞬間を捉えた画像です。衝突した断熱材がバラバラになって飛び散っているのが分かります。事故後の調査で、この衝突によって数センチから数十センチの穴がパネルに開いた可能性があることが分かりました。

実は、断熱材の脱落そのものは、打上げ後のレビューで分かっていましたが、これまでにもしばしば起きており、問題が起きていなかったことから、帰還には問題なしという判断が下されていました。衝突箇所がクルーの乗るキャビンからは死角になっていたため、損傷をチェックすることはできませんでした。

*

そして2003年2月1日、コロンビアは左主翼に損傷を抱えたまま大気圏に突入することになります。軌道離脱噴射が行われたのはアメリカ中部標準時午前7時15分30秒(日本時間同日22時15分30秒)でした。

この音声記録は、シャトルが大気圏に突入する約2分前の時点からスタートします。



Transcript

07:41:51 a.m.
この音声ファイルは、アメリカ中部標準時午前7時41分51秒(日本時間22時41分51秒)からスタートします。
時間はすべてアメリカ中部標準時、日本との時差は15時間です。
コロンビアのクルーによって撮影された大気圏突入前のコロンビアの船内の様子(この音声記録が始まる約1分前の映像)。この映像は事故後に回収されたものです。

奥にいるのがパイロットのウィリアム・マックール、手前が機長のリック・ハズバンド、2人の後ろにカルパナ・チャウラがいます。撮影しているのは、ローレル・クラークです。残りのクルーは下部デッキにいるため、この映像には写っていません。
この音声記録が始まった時点で、クルーは大気圏突入に伴うかすかなGを感じ始めています。
07:41:54 a.m.
PAO:
"This is mission control, Houston. Columbia's altitude is now 90 miles above the Pacific Ocean to the north of the Hawaiian islands, about two minutes away from entering the Earth's atmosphere. All activities continuing to go smoothly en route toward a touchdown at the Kennedy Space Center at 8:16 a.m. Central time."
PAO:
こちら、Houston、ミッションコントロール。現在コロンビアの高度は90マイル(144.8km)。太平洋上空、ハワイ諸島の北を飛行中。大気圏突入は約2分後。ケネディ宇宙センターへの着陸は中部標準時午前8:16の予定です。
07:42:37 a.m.
PAO:
"Columbia is currently targeted toward runway three-three at the Kennedy Space Center, the runway selection continues to be discussed here in mission control, however. But for its approach to runway three-three, Columbia will perform a right overhead turn to align with the runway of about 214 degrees around the heading alignment cylinder, an imaginary cylinder created by the microwave landing system for the shuttle that assists in guiding it for its final approach."
PAO:
コロンビアはケネディ宇宙センターの33番滑走路に向かっていますが、滑走路の選択については、ミッションコントロール内で検討が続いています。33番滑走路へのアプローチのためには、コロンビアは、滑走路上空のHeading Alignment Cylinderに沿って214度の旋回を行わなければなりません。Heading Alignment Cylinderとは、シャトルを誘導して最終アプローチを行う電波誘導装置によって作り出される仮想の円柱のことです。
HACは、滑走路の中心線の延長線上に接する仮想の円柱で、シャトルはこれに沿って旋回することで、滑走路と正対します。
07:44:09 a.m. - EI+0
再突入開始時間(EI:Entry Interface)。これは、シャトルの高度が400,000フィート(121.9km)を切る地点で、大気圏突入のプロセスの基点となる時間です。コロンビアが再突入を開始したのは、北緯30度47分、西経167度37分の地点です。
07:45:16 a.m.
PAO:
"Columbia's altitude now 71 statute miles as it enters Earth's atmosphere above the Pacific Ocean en route to the Kennedy Space Center, its speed 17,000 miles per hour."
PAO:
現在、コロンビアの高度は71マイル(114.3km)。ケネディ宇宙センターに向かって太平洋上空で大気圏に突入しました。速度は時速17,000マイル(27358.8km/h)です。
07:45:42 a.m.
PAO:
"Columbia with wings level and nose angled up at about 40 degrees to control heating as it descends into the atmosphere. It's altitude now 68 miles. As Columbia descends into the atmosphere and approaches the continental United States it'll perform the first in a series of four banks it performs as it approaches the Kennedy Space Center. That first bank to the right, then back to the left, then back to the right and then a final bank to the left as it approaches Kennedy and the Shuttle Landing Facility runway. Those designed to dissipate speed for the shuttle as it descends into the atmosphere toward landing."
PAO:
コロンビアは、温度をコントロールするために、機体を水平に保ちながら機首を40度上げた姿勢で大気圏に突入します。現在の高度は68マイル(109.4km)。コロンビアは、大気圏内を降下しアメリカ大陸に接近しながら最初の旋回を行います。これはケネディ宇宙センターに接近する際に4回行われるものの一つで、最初は右へ、次に左へ、さらに右へ戻し、もう一度左へ旋回してケネディ宇宙センターのシャトル着陸施設の滑走路に向かいます。これは、着陸に際して、シャトルの速度を落とすための操作です。
07:46:11 a.m.
FDO:
"Flight, FDO."
FDO:
"フライト、こちらFDO"
07:46:26 a.m.
Flight:
"OK, FDO, go ahead."
FDO:
"OK、FDO。どうぞ"
07:46:25 a.m.
FDO:
"This data set is a spliced data set. This is my back room's attempt to, uh, get us some data off that first balloon that was broken. And it shows us 11 hundred 60 feet at the close-in aim point."

Flight:
"With the close..."

FDO:
"Yes sir. And we're waiting for our re-release balloon, which was just released a few minutes ago."
FDO:
"このデータはつなぎ合わせたもので、私のバックルームのメンバーが、故障してしまった最初の観測気球から回収したものです。これによると、最も着陸地点に近い場所で1160フィート(353.6m)です"

Flight:
"一番近くてそれか..."

FDO:
"はい。現在我々は、数分前に再度放出された気球からのデータを待っているところです"
ここからしばらく、FlightとFDOの間で交わされる会話は、観測気球が故障し充分なデータが得られなかったことを報告しているものです。着陸地点と気球で観測した地点が離れているために、正確な気象予測ができないことを懸念しています。
07:46:30 a.m.
PAO:
"Just under 30 minutes to touchdown for Columbia now, altitude 64 miles."
PAO:
"コロンビアの着陸予定時間まで後30分。高度64マイル(103.0km)"
07:46:45 a.m.
Flight:
"OK. Now, uh, we lost the balloon at 6,000 feet and, did we get it back at some point? Or when you say 'spliced it together,' I mean, I don't want, I don't know whether I should..."
Flight:
"OK。えーと、6000フィート(1,828.8m)で気球が失われて ... そこまで戻ったのか?それともは「つなぎ合わせた」というのはつまり ..."
07:46:55 a.m.
FDO:
"We did not, we did not get any data beneath 6K, I mean, above 6K, excuse me. And we spliced, basically, a previous data set on top of this one to give us a estimate."

Flight:
"OK. I got you."
FDO:
"いえ、我々は6000フィート(1,828.8m)以下の、失礼、6000フィートから上のデータは取れていません。データは今のデータの上に一つ前のデータをつなぎ合わせて、概算を出したものです。

Flight:
"OK。了解した"
07:47:09 a.m.
Flight:
"Now let's see, from where we're releasing the balloons to, which way... are they going out over the water with the wind direction from the surface on up to about 10,000 feet, the direction is roughly out of the west, isn't it?"
Flight:
さて、気球を放出した場所から考えて ... 海の上へでてしまっているということは、地表から高度10,000フィート(3,048m)ぐらいまでは、大雑把に西から風が吹いていると考えていいかな?
07:47:25 a.m.
FDO:
"Yes, flight, they are going out the water, out over the water, I concur with that, we are..."
FDO:
"はい、Flight。気球は海の上へ出てしまいました。そのとおりです"
07:47:30 a.m.
Flight:
"We start out with them far enough away from where our HAC really is and then they're going the wrong way."
Flight:
"実際のHAC(Heading Alignment Cylinder)の場所から、かなり離れたところから(計測を)始めて、違う方向へ行ってしまったのか"
07:47:32 a.m.
機内で撮影された映像は、この時点で終わっています。

これは、映像のほぼ最後のフレーム。機長の肩越しに、シャトルの前方の窓が大気圏突入に伴うプラズマでオレンジ色に光っているのが見えます。この映像には、機体の異常を示す兆候は見られませんでした。
07:47:34
FDO:
"I would concur, we are seeing, we're definitely seeing some spatial differences here. From the STA (shuttle training aircraft) and this morning. I would that."
FDO:
"はい、そうです。我々はまったく違う場所を見ていたことになります。STA(シャトルの訓練機)のものとは違う場所のものです"
STAは、シャトルの着陸訓練に使用されるNASAが所有する訓練機で、本番の際には天候などの調査を行います。
07:47:41
Flight:
"...OK, well yeah, and the STA, the last dive here - and we're not going to have him do any more - was 1941 (1,941 feet) with close."
Flight:
"OK。STAの最後の降下のときのデータがある。STAはもう観測は行わないな。1941フィート(591.6m)が一番近いのか"
07:47:50
PAO:
"Columbia's course toward Florida will take it across the continental United States, crossing the California coast above the San Francisco bay area and continuing across Sacramento, California, providing a spectacular view for persons in that area of Columbia's descent through the atmosphere. That observation of the shuttle would begin about 5:51 a.m. Pacific standard time and continue for about four minutes, until about 5:55 a.m. Pacific time, with the shuttle at an elevation of about 78 degrees."
PAO:
"コロンビアは、フロリダに向けてアメリカ大陸上空を通過します。カルフォルニア海岸、サンフランシスコ湾岸地域を越え、カルフォルニアのサクラメント上空を通過します。コロンビアが降下してくるルートではすばらしい光景が見えるでしょう。シャトルが観測できるようになるのは、大西洋標準時で5:51頃から5:55までの約4分間です。シャトルは地平線から78度くらいの位置に見えるはずです"
07:47:51
FDO:
"Ummm... Yeah..."
FDO:
うーん、そうですね...
07:47:53
Flight:
"He normalized at 1941 with CLOSE. Did I get that right?"
Flight:
"このデータは1941フィートを最も近い目標地点として正規化した、ということであっているかな?"
07:47:57
FDO:
"X-corrected I heard was 17 84. The X-corrected normalized."
FDO:
"滑走路上の着陸地点の補正を入れると1784フィート(543.8m)です。この補正を入れて正規化してあります"
7:48:07
Flight:
"Yup, we're talking about the normalized."
Flight:
"そうだ、その「正規化」の話だよ"
07:48:10
FDO:
"I think the STA performs a correction on top of the normalization to account for, ummm,
FDO:
"STAのデータは正規化の上限の値としては使えるはずなんですが、うーん"
07:48:17
Flight:
"Yeah, you're talking XCN, I was just saying the normalized is 19 41."
Flight:
"君が話しているのは着陸地点の補正を入れた値のことだな。私が言っているのは、補正を入れない値の1941フィートのことだ"
07:48:15 a.m.
PAO:
"It'll be visible as well through much of the United States' southwest above southern Nevada and northern Arizona and central Mexico as it continues its descent through the atmosphere, trailing a plasma trail left as it heats the atmosphere around it during its descent.
PAO:
シャトルは、アメリカ南西部、ネバダ州南部やアリゾナ州の北部、中央メキシコ等の地域で見ることができるでしょう。シャトルは大気中を下降しながら、高温になり、プラズマの光跡を残します。
07:48:19
FDO:
"Yes, Sir."
FDO:
"はい、そうです"
07:48:22 a.m.
Flight:
"OK, what we've got, the last balloon data to come in before we make our decision."
Flight:
"OK、今手元にあるのは、決定を下す前の最後の気球からのデータだけだな"
07:48:27 a.m.
FDO:
"Yes, Sir."
FDO:
"はい、そうです"
07:48:39 a.m. - EI+270
この時点で、左翼の前縁部分の桁に設置された応力センサーがこれまでのコロンビアの飛行より高い数値を示しました。
これが最初に記録された異常の兆候です。これは事故後に回収された機器に記録されていたもので、地上のコントロールにも送信されず、コックピットにも表示されていませんでした。

これは、断熱材が衝突したRCCパネルの断面図です。高温のガスはパネルの破損箇所からRCC内部の空間に侵入しました。センサーが設置されているのは、RCCパネルと主翼本体を隔てる桁の裏(図中の赤い円の位置)です。このセンサーの異常は、このRCCパネル内部にガスが入り込んだことで、この桁が変形を受けていることを示していると思われます。


07:48:40 a.m.
PAO:
"Columbia's altitude now 54 miles as it continues to descend into the atmosphere, wings level, nose angled up 40 degrees to control heating. Columbia's traveling about 17,000 miles per hour."
PAO:
"コロンビアの高度は現在54マイル。熱をコントロールするために、翼を水平にして機首を40度上げた姿勢で大気圏内を降下中です。速度はおよそ時速17,000マイル(27,358.8km/h)です"
07:49:38 a.m.
Guidance:
"CLG (Closed-loop Guidance) init."

Flight:
"Copy."

Guidance:
"CLG (Closed-loop Guidance)開始"

Flight:
"了解"
この地点まではオービターは事前に定められたコースに従って飛行しています。Closed-loop Guidance Init (CLG Init)というのは、この時点からオービターのフライトコントロールシステムが、外部の変化に合わせて機体のコントロールを始めたことを意味します。
07:49:49-59 a.m. - EI+340/350
ここで、尾翼の付け根にあるOMS(Orbital Maneuvering System)に設置された4つの温度センサーが、通常より低い数値を示しました。
これは、左翼前縁部の破損箇所で空気の流れが乱されたためだと考えられています。
07:50:03 a.m.
GNC:
"Rolling right."
GNC:
"右ロール開始"
07:50:03 a.m.
PAO:
"Columbia's altitude 48 statute miles as it begins the first in a series of four banks to dissipate speed as it descends into the atmosphere, banking to the right now, a steep bank of 60 degrees and approaching the west coast of the United States. Columbia's speed 16,620 miles per hour, range to touchdown at the Kennedy Space Center runway 3,450 statute miles."
PAO:
"現在のコロンビアの高度は48マイル。最初の左バンクを開始しました。バンク角は60度。これは速度を落とすために4回行われるもの1回めです。アメリカ西海岸に接近中。現在の速度は16,620マイル。着陸予定のケネディ宇宙センターまではあと3,450マイル(5,552.2km)です"
07:50:19 a.m. - EI+370
ここで、左翼下面の耐熱タイルの中に設置された温度センサーが異常な温度上昇を記録しました。
これは、左翼前縁部の破損箇所で空気の流れが乱されたためだと考えられています。
07:50:26 a.m.
Unknown:
"I got it."
Unknown:
"了解"
07:50:30 a.m. - EI+381
この時点で、コントロールセンターで大気圏突入に伴う温度上昇を検知しました。
ただし、この温度上昇は通常の範囲内のもので、異常を示すものではありませんでした。
07:50:56 a.m.
PAO:
"Columbia in almost an 80-degree-bank to the right to dissipate speed, the first of four banks it performs as it approaches Florida to slow down as it descends. Altitude now 47 miles or about 248,000 feet. The shuttle's speed is 16,400 miles per hour."
PAO:
"コロンビアは、スピードを落とすために右方向へ80度のバンクを行っています。これは、フロリダへとアプローチする際に4回行われるうちの最初のバンクです。高度は47マイル(75.6km)、速度は時速16,400マイル(26,393.2km/h)です。
07:51:14 a.m. - EI+425
左翼内に設置された2つの温度センサーが異常な上昇を記録。

これは、RCCパネルと主翼を隔てる壁が破れ、高温のガスが翼内に進入し始めたことを示しています。
07:51:26 a.m.
PAO:
"Aboard the shuttle on the flight deck are shuttle commander Rick Husband and pilot Willie McCool, flight engineer Kalpana Chawla and mission specialist Laurel Clark. On the lower deck of the shuttle for entry are payload commander Mike Anderson, mission specialist David Brown and payload specialist, from the Israel space agency, Ilan Ramon."
PAO:
"シャトルのフライトデッキにいるのは、機長のリック・ハズバンドとパイロットのウィリアム・マックール、フライトエンジニアのカルパナ・チャウラとローレルクラークです。また下部デッキには、ペイロードコマンダーのマイク・アンダーソン、ミッションスペシャリストのデビッド・ブラウン、そしてイスラエル宇宙局のイアン・ラモンが座っています。
07:52:05 a.m.
PAO:
"Columbia approaching the Coast of California now, it is predicted to cross the coast and be visible in the San Francisco area about 5:51 a.m. Central time, uh, Pacific standard time rather, and pass almost directly overhead of Sacramento, California. It actually crosses the California coast just to the north of the San Francisco area."
PAO:
"コロンビアはカルフォルニアの沿岸に接近中です。サンフランシスコ近辺からカルフォルニア海岸上空を通過するシャトルを見ることができるのは、中部標準時、失礼、大西洋標準時5:51頃と思われます。シャトルはサクラメントの真上を通過し、カルフォルニア海岸をサンフランシスコの北側で横断します"
07:52:54 a.m.
PAO:
"Columbia is on target for runway three-three at the Kennedy Space Center Shuttle Landing Facility runway."
PAO:
"コロンビアは、ケネディ宇宙センターのシャトル着陸施設33番滑走路を目指して飛行中です"
07:53:00 a.m.
PAO:
"The subject of runway selection has been discussed in mission control, it continues to be discussed some, but in the meanwhile at present the original targeting for Columbia is toward runway three-three... and as it approaches runway three-three, it will perform a right overhead 212-degree turn to align with that runway around the heading alignment cylinder, an imaginary cylinder created by the microwave scan beam landing system at the shuttle runway that assists in the shuttle's guidance toward its final approach to the runway."
PAO:
"滑走路の選択については、ミッションコントロールで検討が続いていますが、現時点ではコロンビアは当初の予定通り33番滑走路を目指しています。この場合、コロンビアは、滑走路と正対するためにHeading Alignment Cylinderに沿って214度の旋回を行わなければなりません。Heading Alignment Cylinderとは、シャトルを誘導して最終アプローチを行う電波誘導装置によって作り出される仮想の円柱のことです"
07:53:10-36 a.m.
ここで、左翼エレボン(主翼後方の動翼)の油圧システムに設置された4つの温度センサーの値が次々と計測不能な値まで低下しました。
これは、主着陸脚収納部の脇を通っていたケーブルが熱で焼ききれたためと考えられます。

これは、ガスの進入経路を示したもの。先ほど主翼前縁部の桁を破った高温のガスは、着陸脚収納部に到達し、そこを走っていたケーブルを焼き切ります。このときにはすでに、温度上昇により翼の変形が進み、タイルが外れたり、接着剤が溶けるなどの現象が始まっていたと考えられます。
07:53:32 a.m.
PAO:
"Shuttle's altitude now 45 miles, speed 15,800 miles per hour, continuing in a right bank with wings angles 70 degrees, the first of four banks it performs to dissipate speed as it approaches landing."
PAO:
"現在、シャトルの高度は45マイル(72.4km)、速度は時速15,800マイル(25,427.6km)です。速度を落とすために、主翼を70度まで傾けて、右バンクを継続中です"
07:53:44 a.m.
この時点で、最初の破片の落下が目撃されました。
07:53:45 a.m.
PAO:
"Columbia crossing the California coast, again, just to the north of the San Francisco area. It's course will take it across Sacramento, California."
PAO:
"コロンビアはサンフランシスコの真北、カルフォルニア海岸上空を通過中です。この後、カリフォルニア州サクラメントの真上を通過する予定です"
07:53:46 a.m. - EI+577
ここで、2個目の破片の落下が目撃されました。
07:53:54 a.m. - EI+585
ここで、3個目の破片の落下が目撃されました。
07:54:00 a.m. - EI+591
ここで、4個目の破片の落下が目撃されました。
07:54:07 a.m. - EI+598
ここで、5個目の破片の落下が目撃されました。
07:54:24 a.m.
MMACS:
"Flight, MMACS."

Flight:
"Go ahead, MMACS."

MMACS:
"FYI, I've just lost four separate temperature transducers on the left side of the vehicle, hydraulic return temperatures. Two of them on system one and one in each of systems two and three.

MMACS:
"Flight - こちらMMACS"

Flight:
"どうぞ、MMACS"

MMACS:
"参考までに、たった今機体の左側の4つの温度センサーの値が消失ました。値が消えたのは油圧装置の温度で、そのうち2つはシステム1、残りの二つはそれぞれシステム2と3です"
コントロールルームで初めて異常を検知
この時点まで、コントロールルームでは異常にまったく気づいていませんでした。
8:54:33 a.m. - EI+624
ここで、、シャトルの光跡に閃光が目撃されました。
これは、姿勢を乱したシャトルが、姿勢制御ロケットを噴射した瞬間だと思われます。
07:54:35 a.m. - EI+624
ここで、6個目の非常に明るい破片の落下が目撃されました。
07:54:46 a.m.
Flight:
Four hyd return temps?"

MMACS:
"To the left outboard and left inboard elevon."

Flight:
"OK, is there anything common to them? DSC (discrete signal conditioner) or MDM (multiplexer-demultiplexer) or anything? I mean, you're telling me you lost them all at exactly the same time?"
Flight:
"4つの油圧装置の温度?"

MMACS:
"そうです、左翼の外側と、左翼の内側のエレボンのものです"

Flight:
"OK、それらに何か共通することは? 信号は、DSC [discrete signal conditioner(個別の信号調節装置からのもの)] なのか MDM [multiplexer-demultiplexer(同一回路から発信され、別々に分離されたもの]か、あるいはもっと他の関連があるのか? つまり、その数値はまったく同じタイミングで消えたのか?"
07:54:58 a.m.
MMACS:
"No, not exactly. They were within probably four or five seconds of each other."

Flight:
"OK, where are those, where is that instrumentation located?
MMACS:
"いや、まったく同じではありません。それぞれ、5秒から4秒の間が開いていたようです"

Flight:
"OK、設置箇所は?それらの機器が設置されていたのはどこだ?"
07:55:04 a.m. - EI+655
ここで、7個目の破片の落下が目撃されました。
07:55:08 a.m.
MMACS:
"All four of them are located in the aft part of the left wing, right in front of the elevons, elevon actuators. And there is no commonality."
MMACS:
"4つ全てが左翼の後部、エレボンとエレボン・アクチュエイターの右前方にありました。それらに共通性はありません"
07:55:18 a.m.
Flight:
"No commonality."
Flight:
"共通性はない、了解"
07:55:22-59 a.m. - EI+673-710
この30秒間に、複数の非常に明るい破片が落下するのが目撃されています。
07:55:38 a.m.
PAO:
"Columbia continuing in a right bank, the wings angled 43 degrees, speed 15,000 miles per hour, altitude 43 miles, 2,090 miles to touchdown at the Kennedy Space Center targeted for runway three-three at Kennedy at present. Crossing the continental United States, now crossing above southern Nevada to the north of Las Vegas."
PAO:
"コロンビアは、右バンクを継続中です。主翼の角度は43度、速度は時速15,000マイル(24,140.1km/h)、高度43マイル(69.2km)です。着陸予定のケネディ宇宙センター、33番滑走路までの飛行距離は2,090マイル。現在、アメリカ大陸上空、ネバダ州南部からラスベガスの北を通過中です"
07:56:02 a.m.
Flight:
"MMACS, tell me again which systems they're for."

MMACS:
"That's all three hydraulic systems. It's... two of them are to the left outboard elevon and two of them to the left inboard.
Flight:
"MMACS,もう一度、どのシステムだったか教えてくれないか"

MMACS:
"油圧システムが3つです。えーと、二つが左の外側のエレボン、もう2つが左の内側のエレボンです"
07:56:12 a.m.
Flight:
"OK, I got you.

GNC:
"Flight, guidance, we're processing drag with good residual."

Flight:
"Copy. Thank you."
Flight:
"OK、わかった"

GNC:
"Flight、こちらGuidance。空気抵抗の値はまだ余裕がある"

Flight:
"了解。ありがとう"
07:56:39 a.m.
GC:
"Flight, GC."

Flight:
"Go."

GC:
"Your air-to-grounds are enabled for the landing count."

Flight:
"Thank you."

GC:
"Flight、こちらGC"

Flight:
"どうぞ"

GC:
"着陸に向けてのカウントのために、あなたからシャトルへの通信ができるようにしました"

Flight:
"ありがとう"

07:56:49 a.m.
PAO:
"Columbia's course continuing across Arizona and the Arizona and Mexico border near the four corners area of the United States. Its course will take it almost directly above Albuquerque, Mexico, it's altitude now 225,000 feet or 42 miles, speed 14,300 miles per hour, 1,785 miles to touchdown at the Kennedy Space Center. It's banking now back to the left, the second in a series of four banks that dissipate speed of the spacecraft as it becomes an aircraft and descends into the atmosphere toward Florida. Wings angled about 75 degrees to the left."
PAO:
コロンビアは、現在アリゾナ州とアリゾナとメキシコの国境付近を通過中です。このコースはメキシコ州、アルバカーキの真上を通過します。現在の高度は225,000フィート(68,580m)あるいは42マイル(68.6km)、速度は時速14,300マイル(23,013.6km/h)、ケネディ宇宙センターまであと1,785マイル(2,872.6km)です。現在シャトルは左にバンクしています。これは、フロリダに向かって高度を落としながら、宇宙船の速度を落として飛行機にするために4回行われるバンクの2回目です。現在の、主翼の角度は左に75度です。
07:57:19 a.m. - EI+790
ここで、着陸脚収納部内のタイヤの空気圧を検知するセンサーの値が異常を示しました。
これは、主着陸脚収納部内に高温のガスが進入したことを示してます。

高温のガスは主翼全体に広がりながら、主翼内の構造を破壊していきます。このセンサーの異常は着陸脚収納部を隔てる前方の壁が破れ、内部にガスが進入したことを示しています。この時点で、すでに主翼内の構造はほぼ全域で壊滅的なダメージを受けていたと考えられます。
07:57:25 a.m.
Flight:
"GNC, Flight."

GNC:
"Flight, GNC."

Flight:
"Everything look good to you, control and rates and everything is nominal, right?"
Flight:
"GNC、こちらFlight"

GNC:
"Flight、こちらGNC"

Flight:
"君のセクションは問題はなさそうだな。 コントロールもレートも他の項目も通常通りだな?"
07:57:28 a.m. - EI+799
ここで、左主翼の下面に設置されたセンサーが計測不能になりました。
これは、翼内の配線が熱で焼き切れたためと思われます。
07:57:35 a.m.
GNC:
"Control's been stable through the rolls that we've done so far, flight. We have good trims. I don't see anything out of the ordinary."
GNC:
"先ほど行ったロールの時もコントロールは安定していました。いいバランスです。異常は見当たりません"
07:57:43 a.m. - EI+814
ここで、左主翼の上面に設置されたセンサーが計測不能になりました。
これは、翼内の配線が熱で焼き切れたためと思われます。
07:57:45 a.m.
Flight:
"OK. And MMACS, Flight?"

MMACS:
"Flight, MMACS."

Flight:
"All other indications for your hydraulic system indications are good."
Flight:
"OK。MMACS、こちらFlight"

MMACS:
"Flight - こちらMMACS"

Flight:
"油圧システム以外は君のセクションも問題は起きていないな"
07:57:53 a.m.
カートランド空軍基地の空軍スターファイア光学観測施設から、ニューメキシコのアルバカーキ上空を通過するコロンビアが撮影されました。

左主翼の前がぎざぎざになって、左右非対称になっているのに注意してください。この画像の歪みは損傷した主翼前縁部によって発生した衝撃波によるものだと考えられます。
07:57:53 a.m.
MMACS:
"They're all good. We've had good quantities all the way across."

Flight:
"And the other temps are normal?"

MMACS:
"The other temps are normal, yes sir."
MMACS:
"問題ありません。全て順調です"

Flight:
"他の温度も問題ないか?"

MMACS:
"はい、他の温度も問題ありません"
07:57:59 a.m.
Flight:
"And when you say you lost these, are you saying that they went to zero..."

MMACS:
"All four of them are off-scale low."

Flight:
"... or off-scale low."

MMACS:
"And they were all staggered. They were, like I said, within several seconds of each other."

Flight:
"OK."
Flight:
"君は数値が消失したと言ったが、数値がゼロになったのか?"[8:57:59AM(EI+830)]

MMACS:
"四つとも計測不能な値まで下がりました。

Flight:
"... それとも計測不可能な値まで下がったのか?"

MMACS:
数値がふらついたんです。さっきも言ったように、数値が消えるのにそれぞれ数秒間の間がありました"

Flight:
"OK"
07:58:03-13
この時点で、機体の傾きを制御するエルロンが急激な反応を示し、続いて機体を右に傾ける姿勢制御ロケット(RCS)が1.5秒間噴射されます
これは、左翼の破損やタイルの脱落などにより空気抵抗が増したために機体が左に傾き始めたのを、シャトルのフライトコントロールシステムが自動的に補正しようとしているものと考えられます。
07:58:20
この時点で、最も西側で発見された耐熱タイルの破片が脱落しました。
07:58:36 a.m.
PAO:
"Columbia continuing toward Florida, now approaching the Mexico-Texas border. Altitude 40 miles..."
PAO:
"コロンビアは現在、メキシコとテキサスの国境付近をフロリダに向かって飛行中。高度40マイル..."
07:58:36 - 39 a.m.
左主着陸脚のタイヤの空気圧を示すセンサーの値が次々と計測不能な値まで低下しました。
07:58:40 a.m.
この時点で、コックピット内に最初のアラームが出ました。
これは、タイヤの空気圧を示すセンサーの値が「0」ないし「L」(計測不能)になっていることを示すものです。また、彼らは左翼の空気抵抗がわずかに大きくなっていることには気づいていましたが、実際に何が起きているのかを知るすべはありませんでした。
07:58:44 a.m.
FDO:
"Flight, FDO."
FDO:
"フライト、こちらFDO"
07:58:48 a.m.
Columbia:
"And, uh, Hou(ston)..."
Columbia:
"And, uh, Hou(ston)..."
07:58:51 a.m.
PAO:
"... speed 13,200 miles per hour. Range to touchdown 1,400 miles. The shuttle in a left bank with the wings banked about 57 degrees to horizontal."
PAO:
速度は時速13,200マイル(21,243.3km/h)。着陸までの飛行距離は1,400マイル(2,253.1km)。シャトルは現在、主翼の角度57度で左バンク中です。
07:59:06 a.m.
Flight:
"FDO, Flight."

FDO:
"Uh, we have the balloon. It is being run through DDS (data display system) right now."
Flight:
"FDO、こちらFlight."

FDO:
"えーと、観測気球からのデータが来ました。今、DDS (data display system) に表示させます"
07:59:06 a.m.
機体右側に4つある姿勢制御ロケット(RCS)のうち2つが再び噴射されます
この時点でシャトルは、左翼の空気抵抗が増加したために、左側に大きく傾いていたと考えられます。シャトルのフライトコントロールシステムは姿勢を回復するために、エレボントリムを増加させ、姿勢制御ロケットを噴射して機体を右に傾けようとしていました。
07:59:15 a.m.
MMACS:
"Flight, MMACS."

Flight:
"Go."
MMACS:
"Flight、こちらMMACS"

Flight:
"何だ?"
07:59:18 a.m.
MMACS:
"We just lost tire pressure on the left outboard and left inboard, both tires."
MMACS:
"たった今、左の外側と内側のタイヤの空気圧が失われました。両方ともです"
07:59:24 a.m.
CAPCOM:
"And Columbia, Houston, we see your tire pressure...

Flight:
"Copy..."

CAPCOM:
"...messages and we did not..."

Flight:
"Is it instrumentation, MMACS? Gotta be..."

CAPCOM:
"...copy your last."
CAPCOM:
""コロンビア、こちらヒューストン。我々は、君達からタイヤの空気圧の ...

Flight:
"Copy..."

CAPCOM:
"...情報を確認した。しかし ..."

Flight:
"計測器の故障なのか、MMACS? きっと、これは..."

CAPCOM:
"...最後の通信内容が確認できていない"
07:59:30 a.m.
MMACS:
"Flight, MMACS, those are...

MMACS:
"...also off-scale low."
MMACS:
"Flight - こちらMMACS、これも...

MMACS:
"...計測不能な値まで数値が下がりました"
07:59:30 a.m.
再びシャトルの姿勢が急激に変化しました
これを補正するために、フライトコントロールシステムは再び姿勢制御ロケットを噴射し、エレボントリムを大きく変化させました。
07:59:32 a.m.
Columbia:
"Roger, uh buh (CUTOFF)"
Columbia:
"Roger, uh buh (CUTOFF)"
コロンビアからの最後の音声通信。
これは、タイヤの空気圧が失われたことに関する報告だったと思われます。数秒後に再びノイズが入り、クルーが何らかの交信をしようとした形跡がありますが、有意な通信は得られませんでした。
この通信が途切れるのとほぼ同時に、左胴体部の複数のセンサー、左主着陸脚の複数のセンサーが計測不能になり、直後にテレメトリのシグナルも消失します。
07:59:34 a.m.
ここで、コックピット内にハードウエアとソフトウエアの両方に起因する重大なトラブルが起きたことを示す警報が鳴りました。
07:59:47-07:00:03 a.m.
再び、コロンビアから複数の破片が落下するのが目撃されます。
この時点で、最終的な崩壊が始まったと考えられます


07:59:58 a.m.
INCO:
"Flight, INCO."

Flight:
"Go."

INCO:
"Just taking a few hits here. We're right up on top of the tail. Not too bad."
INCO:
"Flight、INCO"

Flight:
"どうぞ"

INCO:
"今、こちらで少し信号を捉えました。ちゃんと尻尾は捕まえてます。さほど悪くありません"
08:00:01 a.m.
ここで、パイロットが操縦桿を大きく操作していた形跡がオートパイロットのデータに残っています

08:00:02-04 a.m.
ここで、2秒間だけテレメトリが回復します。これがシャトルから地上に送信された最後のテレメトリです
このときに得られたデータから、この段階で胴体と右翼、右側のOMS(Orbital Maneuvering System)の機器が生きていたことが分かっています。逆に、機体の左翼と左側のOMSに設置されたセンサーのデータはほぼ全て失われていました。
08:00:18 a.m.
Flight:
"MMACS, Flight."

MMACS:
"Flight, MMACS."

Flight:
"And there's no commonality between all these tire pressure instrumentations and the hydraulic return instrumentations."
Flight:
"MMACS、こちらFlight"

MMACS:
"Flight、こちらMMACS"

Flight:
"このタイヤ圧の計測器と油圧の計測器はみんなそれぞれ共通性はないな"
08:00:19 a.m.
事故後に機体の破片から回収されたデータはこの時点で終っています。
少なくともこのときまでは、まだシャトルの胴体は分解しておらず、電源もまだ生きていました。

08:00:21 a.m.
おそらく、この時点でコロンビアの最終的な空中分解が始まったと考えられています。
複数の地点から、バラバラになって落下するシャトルが目撃され、映像に納められています。


(Robert McCullough / 2003 The Dallas Morning News)

08:00:27 a.m.
MMACS:
"No sir, there's not. We've also lost the nose gear down talkback and the right main gear down talkback."

Flight:
"Nose gear and right main gear down talkbacks?"

MMACS:
"Yes sir."
MMACS:
"いえ、それで全部ではありません。機首の着陸脚と右の主着陸脚の展開を確認するための信号も失われています"

Flight:
"機首と右の着陸脚の展開信号?"

MMACS:
"そうです"
08:00:30 a.m.
テキサス州フォートフッド近郊で飛行訓練を行っていたAH-64アパッチヘリコプターから、墜落していくシャトルが撮影されました。

08:00:51 a.m.
EECOM:
"And Flight, EECOM."

Flight:
"EECOM."

EECOM:
"I've got four temperature sensors on the bond line data that are off-scale low."
EECOM:
"Flight、こちらEECOM"

Flight:
"EECOM"

EECOM:
"ボンドライン(主翼と胴体の接合部分)の4つのセンサーの値が計測不能になっていたというデータがありました"
08:01:16 a.m.
PAO:
"Columbia out of communications at present with mission control as it continues its course toward Florida..."
PAO:
現在、フロリダに向かって飛行中のコロンビアとミッションコントロールとの間で交信が出来なくなっています。
08:01:29 a.m.
INCO:
"Flight, INCO, I didn't expect, uh, this bad of a hit on comm."
INCO:
"Flight、こちらINCO。これだけ通信に反応が無いのは予想外です"
08:01:38 a.m.
Flight:
"GC, how far are we from UHF? Is that two-minute clock good?"

GC:
"Affirmative, Flight."
Flight:
"GC、UHFの範囲に入るまでどれくらいかな? 2分ちょうど?"

GC:
"その通りです。Flight"
08:02:00 a.m.
GNC:
"Flight, GNC."

Flight:
"Go."

GNC:
"If we have any reason to suspect any sort of controllability issue, I would keep the control cards handy on page four-dash-13."

Flight:
"Copy."
GNC:
"Flight、こちらGNC"

Flight:
"どうぞ"

GNC:
"もし、コントローラビリティに関わる理由を疑っているのなら、コントロールカードの4-13ページを開いておきます."

Flight:
"了解"
フライトマニュアルのこのページにはシャトルに重大な事故が起こった可能性がある場合の対処の手順が書かれています
08:02:21 a.m.
PAO:
"Fourteen minutes to touchdown for Columbia at the Kennedy Space Center. Flight controllers are continuing to stand by to regain communications with the spacecraft..."
PAO:
"コロンビアのケネディ宇宙センターへの着陸予定時間まで後14分。フライトコントロールチームは、引き続き宇宙船との通信の回復を待っています"
08:02:29 a.m.
Flight:
"INCO, we were rolled left last data we had and you were expecting a little bit of ratty comm, but not this long?"
Flight:
"INCO, 左へのロールを行って、最後のデータを受け取った時、君は通信が乱れると言っていたが、こんなに長くはないな?"
08:02:37 a.m.
INCO:
"That's correct, Flight. I expected it to be a little intermittent. And this is pretty solid right here."

Flight:
"No onboard system config changes right before we lost data?"

INCO:
"That is correct, Flight. All looked good."

Flight:
"Still on string two and everything looked good?"

INCO:
"String two looking good."
INCO:
"そうです、Flight。時々途切れるかもしれないとは言いました。今のこれは、完全に途絶しています"

Flight:
"信号が失われる直前に、機体に搭載されたシステムの設定は変更されていないな?"

INCO:
"はい、されていません、Flight。問題はありませんでした"

Flight:
"回線2になっていて、問題はなかった?"

INCO:
"回線2で問題はありませんでした"
08:03:03 a.m.
GC:
"Two minutes to MILA."
GC:
"MILAまで2分"
MILAはケネディ宇宙センターのすぐそばにあるメリットアイランド追跡ステーションのこと。ケネディ宇宙センターに着陸する際の最後の追跡ステーションで、最終アプローチまでここのステーションが追跡を受け持ちます。
08:03:12 a.m.
CAPCOM:
"Columbia, Houston, comm check."
CAPCOM:
"Columbia、こちらHouston。交信チェック"
08:03:23 a.m.
FDO:
"Flight, FDO."

Flight:
"Go."

FDO:
"Close-end aim point with the one-hour balloon shows us touching down at 1,496, 1,500 feet down the runway. Our crosswind right now is on the left, from the left on the three-three end."
FDO:
"Flight、こちらFDO"

Flight:
"どうぞ"

FDO:
"1時間前の気球のデータによると、タッチダウンのポイントは、滑走路の端から1,496フィート(456.0m)、約1500フィートの地点です。横風は今は左方向から、33番滑走路の端で左から吹いています。"
08:03:40 a.m.
CAPCOM:
"Columbia, Houston, UHF comm check."
CAPCOM:
"Columbia、こちらHouston。UHF 交信チェック"
08:03:45 a.m.
PAO:
"CAPCOM Charlie Hobaugh calling Columbia on a UHF frequency as it approaches the Merritt Island tracking station range in Florida. Twelve-and-a-half minutes to touchdown, according to clocks in mission control."
PAO:
"CAPCOM(通信担当官)のチャーリー・ホバースが、フロリダのメリットアイランド追跡ステーションに接近しているはずのコロンビアにUHFの周波数で呼びかけています。ミッションコントロールの時計によれば、着陸まであと12分半です"
08:03:46 a.m.
FDO:
"Flight, I'd like to stay where we're at."

Flight:
"I copy."
FDO:
"Flight、私はこのまま行きたいと思います"

Flight:
"了解"
ここでは、最終的な滑走路の選択について、予定通り33番滑走路に着陸させるという判断をしています
08:03:53 a.m.
MMACS:
"Flight, MMACS."

Flight:
"MMACS?"

MMACS:
"On the tire pressures, we did see them go erratic for a little bit before they went away, so I do believe it's instrumentation."

Flight:
"OK."
MMACS:
"Flight、こちらMMACS"

Flight:
"MMACS?"

MMACS:
"タイヤ圧の一件のとき、信号が途絶える少し前に不規則な動きをしましたから、計測機器のトラブルだと思います"

Flight:
"OK."
08:04:05 a.m.
CAPCOM:
"Columbia, Houston, UHF comm check."
CAPCOM:
"Columbia、こちらHouston。UHF 交信チェック"
08:04:35 a.m.
FDO:
"Flight, FDO."

Flight:
"Go."

FDO:
"I know this data's a little late, the one-hour balloon protects us for winds...
FDO:
"Flight、こちらFDO"

Flight:
"どうぞ"

FDO:
"このデータは少し前のものですが、一時間前の観測気球のデータからは、風の影響はさほどないと思われます..."
08:04:41 a.m.
CAPCOM:
"Columbia, Houston, UHF comm check."

FDO:
"...I think we're in a smaller wind persistence case than that. In other words, we shouldn't expect as big of a change. I'm comfortable with 1,500 feet down the runway."
CAPCOM:
"Columbia、こちらHouston。UHF 交信チェック"

FDO:
"...おそらく、このときと比べても風はさほど強くなってはいないでしょう。つまり、(気象条件は)あまり変わっていないということだと思います。滑走路から1,500フィート(457.2m)の地点では、条件はまったく問題ありません"
08:04:54 a.m.
PAO:
"Flight controllers are standing by for Columbia to move within communications range of the Merritt Island tracking station in Florida to regain communications with Columbia."
PAO:
"フライトコントロールチームは、コロンビアがフロリダのメリットアイランド追跡ステーションの追跡可能範囲に入って、通信が回復するのを待っています"
08:04:57 a.m.
GC:
"Flight, GC."

Flight:
"Go."

GC:
"MILA not reporting any RF at this time."

INCO:
"Flight, INCO, SPC just should have taken us to STDN-LOW."

Flight:
"OK."
GC:
"Flight、こちらGC"

Flight:
"どうぞ"

GC:
"MILAがまだRF[radio frequency(周波数)]を報告してきません"

INCO:
"Flight、こちらINCO。SPCがSTDN-LOWから発信されているはずです"

Flight:
"OK."
SPC(stored program command)というのはシャトルがある高度、ある速度になると、自動的にSTDN(Spaceflight Tracking and Data Network:宇宙飛行追跡データネットワーク)を通じて発信される一連の命令のことです。
08:05:13 a.m.
Flight:
"FDO, when are you expecting tracking?"

FDO:
"One minute ago, Flight."
Flight:
"FDO、(MILAからの)追跡が可能になるはずの時間は? "

FDO:
"一分前です、Flight"
0805:21 a.m.
PAO:
"Also, flight controllers standing by for tracking data of Columbia that's also received through the Merritt Island tracking station."

PAO:
"フライトコントロールチームは引き続き、メリットアイランド追跡ステーションからコロンビアの追跡データが得られるのを待っています。"
0805:26 a.m.
CAPCOM:
"Columbia, Houston, UHF comm check."

CAPCOM:
"Columbia、こちらHouston。UHF 交信チェック"

08:05:51 a.m.
PAO:
"Ten and a half minutes to anticipated touchdown for Columbia."

PAO:
"コロンビアの着陸予定時間まで後10分半です"

08:06:29 a.m.
GC:
"And Flight, GC, no C-band yet."

Flight:
"Copy."
GC:
"Flight、こちらGC。まだC-bandには反応がありません"

Flight:
"了解"
08:06:56 a.m.
PAO:
"Flight controllers are still standing by for C-band tracking data from the Merritt Island tracking station of Columbia and UHF communications."
PAO:
"フライトコントロールチームは、メリットアイランド追跡ステーションとコロンビアの間でのUHFの通信によってC-バンドの追跡データが得られるのを待っています"
08:07:08 a.m.
CAPCOM:
"Columbia, Houston, UHF comm check."
CAPCOM:
"Columbia、こちらHouston。UHF 交信チェック"

08:07:22 a.m.
INCO:
"Flight, INCO."

Flight:
"Go."

INCO:
"I could swap strings in the blind."
INCO:
"Flight、こちらINCO"

Flight:
"どうぞ"

INCO:
"届くかどうかわかりませんが、こちらから回線を変えてみましょうか
08:07:36 a.m.
Flight:
"OK, command us over."

INCO:
"In work, Flight."
Flight:
"OK、終わったら教えてくれ"

INCO:
"取り掛かります。Flight"
INCOは、本来通信状態が悪い時にシャトル側で変えるべき通信回線が切り替えられていない可能性があるため、地上からこの通信モードを変える命令を送ってみることを提案しています。
08:08:07 a.m.
PAO:
"Eight minutes on the touchdown clock for Columbia, flight controllers continuing to stand by to regain communications with the spacecraft."
PAO:
"コロンビアの着陸予定時間まで後8分。フライトコントロールチームは宇宙船との通信が回復するのを待っています。"
08:08:25 a.m.
INCO:
"Flight, INCO, I've commanded string one in the blind."

Flight:
"INCO?"

INCO:
"I've commanded string one in the blind, Flight."

Flight:
"Copy."
INCO:
"Flight、こちらINCO、届いているか分かりませんが、回線1にコマンドを送りました"

Flight:
"INCO?"

INCO:
"回線1にコマンドを送りました。Flight"

Flight:
"了解"
08:08:34 a.m.
PAO:
"Flight controllers standing by for communications through the Merritt Island tracking station, a ground tracking site in Florida."
PAO:
"フライトコントロールチームはフロリダのメリットアイランド追跡ステーションを通じて通信が回復するのを待っています"
08:09:25 a.m.
GC:
"And Flight, GC."
GC:
"Flight、こちらGC."
08:09:26 a.m.
Flight:
"Go."
Flight:
"どうぞ"
08:09:27 a.m.
GC:
"MILA's taking one of their antennas off into a search mode."
GC:
"MILAがアンテナを(コロンビアを見つけるために)サーチモードに切り替えます"
ここまでは、MILAのアンテナは「シャトルがいるはずの場所」に向けられていましたが、ここで、予定の飛行経路を外れた可能性を考慮して、アンテナを動かしながらシャトルを捜索するモードに移行しています。
08:09:30 a.m.
Flight:
"Copy. FDO, Flight?"
Flight:
"了解。FDO、こちらFlight"
08:09:32 a.m.
FDO:
"Go ahead, Flight."
FDO:
"どうぞ、Flight"
08:09:34 a.m.
Flight:
"Did we get, have we gotten any tracking data?"
Flight:
"見つかったか、なにか追跡データが手に入ったか?"
08:09:36 a.m.
FDO:
"We got a blip of tracking data, it was a bad data point, Flight. We do not believe that was the orbiter. We're entering a search pattern with our C-bands at this time. We do not have any valid data at this time."
FDO:
"追跡データに光点がありますが、これはデータポイントとしては適切ではありません、Flight。これはオービターのものだとは思えません。いまから、C-バンドでの探索パターンに入ります。今のところ有効なデータは得られていません"
08:09:51 a.m.
Flight:
"OK. Any other trackers that we can go to?"
Flight:
"OK。他に追跡可能な方法があるか?"
08:09:58 a.m.
FDO:
"Let me start talking, Flight, to my navigator."
FDO:
"ナビゲーターと相談させてください、Flight"
08:10:07 a.m.
PAO:
"This is mission control, Houston. Flight controllers are continuing to seek tracking data of Columbia. Touchdown clocks countdown to six minutes to touchdown for the anticipated shutdown, touchdown of Columbia at the Kennedy Space Center runway. Tracking data is being sought through the Merritt Island tracking station located near the Kennedy Space Center in Florida."
PAO:
"こちらはヒューストンのミッションコントロールです。フライトコントロールチームは、引き続きコロンビアからのトラッキングデータを探しています。ケネディ宇宙センターへのコロンビアの着陸予定時刻まで後6分です。コロンビアの追跡データはフロリダのケネディ宇宙センターのそばにあるメリットアイランド追跡ステーションを通じて探索されています"
08:10:35 a.m.
PAO:
"Communications with Columbia were lost at about 8 a.m. Central time, about 10 minutes ago."
PAO:
"コロンビアとの通信は中部標準時午前8時、約10分前に途絶えました"
08:12:34 a.m.
PAO:
"This is mission control, Houston. Flight controllers are continuing to stand by for communications from Columbia. The last communications with the spacecraft occurred about 8 a.m. Central time as it was above central Texas. Currently seeking communications or tracking data from the spacecraft through C-band radar and ground tracking sites located at the Merritt Island tracking station in Florida."
PAO:
"こちらはヒューストンのミッションコントロールです。フライトコントロールチームは引き続きコロンビアからの通信を待っています。宇宙船との最後の通信は中部標準時午前8時、テキサス上空で行われました。現在、コロンビアからの通信と追跡データがC-バンドレーダーとフロリダのメリットアイランド追跡ステーションによって捜索されています"
08:12:40 a.m.
このとき、MODのフィル・エンゲローフが、コロンビアが大気圏突入中にばらばらになったことを伝えるテレビの速報を見たという連絡を携帯電話に受けました。彼はこの回線(Flight Director Loop)を使わず直接フライトディレクターのコンソールへ行って、彼にオービターが空中分解したことを伝えました。
08:12:55 a.m.
Flight:
"GC, Flight. GC, Flight."'

GC:
"Flight, GC."

Flight:
"Lock the doors."

GC:
"Copy."
Flight:
"GC、 こちらFlight。GC - こちらFlight"

GC:
"Flight、こちらGC"

Flight:
"ドアに鍵を"

GC:
"了解"

Flightが、非常事態のプロセスに従って、部屋に鍵をかけることを命じています。
08:13:17 a.m.
Flight:
"FDO, do you have any tracking?"

FDO:
"No sir."
Flight:
"FDO、追跡データは得られたか?"

FDO:
"いいえ"
08:13:43 a.m.
MCC-MOD:
"Flight, MOD, on the flight loop."
"Flight、こちらMOD。flight loopに戻りました"
フライトディレクターに直接コロンビアが空中分解したことを伝えにいっていたMODが自分の席に戻ったことを知らせています。
08:13:51 a.m.
FDO:
"Flight, FDO."

Flight:
"Go."

FDO:
"My C-bands have not acquired anything. We are only in track, uh, acquiring false locks at this time."
FDO:
"Flight、こちらFDO"

Flight:
"どうぞ"

FDO:
"C-バンドではなにも取得できていません。今の段階では(シャトルのものではない)不確かな追跡データしかえられていません"
08:14:11 a.m.
Flight:
"I copy, FDO."

Flight:
"了解、FDO"
08:14:26 a.m.
PAO:
"This is mission control, Houston. Flight controllers continue to seek tracking or communications with Columbia through Merritt Island tracking station. Last communications with Columbia was at 8 a.m. Central time, approximately above Texas as it approached the Kennedy Space Center for its landing. Flight director LeRoy Cain is now instructing controllers to get out their contingency procedures and begin to follow those."
PAO:
"こちらはヒューストンのミッションコントロールセンターです。フライトコントロールチームは、メリットアイランド追跡ステーションを通じてコロンビアからの通信ないし追跡データを捜索しています。最後の通信は中部標準時午前8時、その時点でコロンビアはケネディ宇宙センターに向かってテキサス上空を飛行していました。フライトディレクターのリロイ・ケインは管制官たちに緊急時の対応に入るように命じました"
08:14:29 a.m.
Flight:
"OK, all flight controllers on the flight loop, we need to kick off the FCOH (Flight Control Operations Handbook) contingency plan procedure, FCOH checklist page 2.8-5."
Flight:
"OK、この通信に参加している管制官は全員、フライトコントロールマニュアルの2.8-5に記載された緊急時対応プロセスに入ること"
08:14:52 a.m.
Flight:
"FDO, Flight. ... FDO, Flight."

FDO:
"Go ahead."

Flight:
"Do you have any information or reports from Space Command?"
Flight:
"FDO、こちらFlight。FDO、こちらFlight"

FDO:
"どうぞ"

Flight:
"北米防空司令部から何か情報が入っていないか?"
08:15:04 a.m.
PAO:
"Flight dynamics officer reports no tracking data from the C-band radar at the Merritt Island tracking station has been reported of any objects."
PAO:
"フライト・ダイナミクス・オフィサー(FDO)は、メリットアイランド追跡センターのC-バンドレーダーからは追跡データが得られていないという報告をしています"
08:15:05 a.m.

この時間にコントロールルームで撮影された写真。本来ならば、コロンビアは最終アプローチに入っている時間ですが、シャトルの飛行経路を表すオレンジのラインが、テキサス州の上空で止まっています。
08:15:50 a.m.
コロンビアがケネディ宇宙センター33番滑走路に着陸する予定だった時間です。
08:17:57 a.m.
Flight:
"OK, all flight controllers, on page 9, of the FCOH procedure you need to make sure you step through the actions required in step 20, that's for your workstation logs, display printouts, there's a whole list of data collection items we need to make sure we log through."
Flight:
"OK、管制官は全員、フライトコントロールマニュアルの9ページ、手順9から20に従うように。ワークステーションのログやディスプレイのプリントアウトなど、我々が集めるべき全てのデータのリストがそこに書いてある
緊急事態が起こった時には、コントロールルームのメンバーは、後の事故調査で使うために、全てのログや画面表示、ノート、メモなどを記録、プリントアウトし、保存しなければなりません
08:18:20 a.m.
PAO:
"This is mission control, Houston. Flight director LeRoy Cain is instructing controllers to follow contingency procedures. The last communications with the shuttle Columbia during its descent from orbit were at about 8 a.m. Central time as it was descending through the atmosphere..."
PAO:
"こちらヒューストンのミッションコントロールです。フライトディレクターのリロイ・ケインが管制官に緊急時対応プロセスに従うように命じています。スペースシャトルコロンビアとの最後の通信は、中部標準時午前8時、大気圏を降下中に行われたものです..."
08:18:36 a.m.
Flight:
"And GC, Flight?"

GC:
"Flight, GC."

FDO:
"FDO, Flight

Flight:
"We need to take the equivalent of a command server TSU (Trajectory Server Upgrade) checkpoint..."'

FDO:
"Yes sir."

GC:
"Copy."

Flight:
"We don't have the old DSC (Dynamic Standby Computer) checkpoint but we have the equivalent capability that we need to do."

GC:
"We'll get that done."
Flight:
"GC、こちらFlight"

GC:
"Flight、こちらGC"

Flight:
"FDO、こちらFlight"

Flight:
"我々は、TSU (Trajectory Server Upgrade)相当する項目を処理しなければならない..."

FDO:
"はい"

GC:
"了解"

Flight:
"我々は古いDSC (Dynamic Standby Computer)の項目をチェックする必要はないが、これに相当するものと考えるべきだろう、"

GC:
"そうします"
ここでは、フライトコントロールマニュアルに記載されたDSCというサーバが新しいTSUというサーバに交換されていることを受けて、チェック項目に加えることを指示しています
08:18:40 a.m.
PAO:
"...at an altitude of about 207,000 feet en route to the Kennedy Space Center in Florida and a touchdown that was anticipated to occur about two-and-a-half minutes ago. Flight controllers received no further communications with the spacecraft after about 8 a.m. Central time and no further tracking data from the spacecraft was gained from C-band tracking radar at the Merritt Island tracking station in Florida."
PAO:
"...(通信が途絶した時の)高度は207,000フィート(63.1km)、ケネディ宇宙センターに向かっている所でした。現在、着陸予定時刻を約10分半過ぎたところです。宇宙船の追跡データはフロリダのメリットアイランド追跡ステーションのC-バンド追跡レーダーから得られるはずですが、フライトコントロールチームが中部標準時午前8時に最後に通信を受けてから、これまで一度も取得できていません"
08:18:58 a.m.
Flight:
"GC, Flight."

GC:
"Flight, GC."'

Flight:
"You understand how to do the end-of-file log tapes we need...in the checklist? OK.

GC:
"Yes sir."

Flight:
"GC、こちらFlight"

GC:
"Flight、こちらGC"'

Flight:
"君は、チェックリストにある「最後のログファイル」をどうすればいいかわかっているか?"

GC:
"はい"
08:19:14 a.m.
PAO:
"Contingency procedures in effect in mission control require all operators to conserve all their data and logbooks and notes that have been taken, that being instructed by flight director LeRoy Cain for controllers to begin following those steps and secure all information."
PAO:
"緊急時のプロセスではミッションコントロールの管制官が、全てのデータ、日誌、メモなどを保存するように求められます。フライトディレクターのリロイ・ケインがメンバーにこれらの手順に従い、全ての情報を確保するように指示しました"
08:19:34 a.m.
Flight:
"And folks, listen up again on the flight loop. No phone calls off site outside of this room, our discussions are on these loops, the recorded DVIS (digital voice integrated system) loops only, no data, no phone calls, no transmissions anywhere, into or out."
Flight:
"みんな、フライトループを聞いてくれ。この部屋から外へ電話をしてはいけない。議論は記録に残るDVIS通信だけですること。どこに対しても、データ通信や電話、通信をしたり受けたりしないように"
これは、外部の人間と議論をしてしまうと、彼らの記憶がゆがめられてしまう可能性があるからです。緊急時のプロセスでは、彼らは記憶が新しいうちに、これまでに見たものや聞いたことを記録に残すように指示されます。この記録が外部からの情報によって汚染されてしまうことを防ぐために、外部からの電話や通信などをシャットアウトします。
08:19:54 a.m.
GC:
"Flight, GC."
GC:
"Flight、こちらGC"
08:19:56 a.m.
Flight:
"GC."
GC:
"GC."
08:19:57 a.m.
GC:
"We have no way of disabling the black phones."
GC:
"許可を受けていない電話を阻止する方法はありません"
08:19:59 a.m.
Flight:
"I understand."
Flight:
"わかった"
08:20:10 a.m.
PAO:
"Again, flight director LeRoy Cain has declared a contingency. Flight controllers here in mission control are securing all their information, notes and data gathered from the spacecraft. The last communications with Columbia at 8 a.m. Central time as it was descending toward Florida for its landing. At that time, about 207,000 feet above central Texas traveling approximately 12,500 miles per hour, 1,192 miles from its touchdown at Kennedy Space Center. Since 8 a.m., no communications were received with Columbia and no tracking data received through the Merritt Island tracking station, those efforts made. The flight dynamics officer reports no objects tracked through that tracking data."
PAO:
"フライトディレクターのリロイ・ケインは再び緊急事態を宣言しました。ミッションコントロールのスタッフは、彼らの持っている全ての情報や記録、メモ、シャトルからのデータなどを保護するように指示されています。コロンビアとの最後の通信は中部標準時午前8時、着陸に向けてフロリダへ降下しているときに行われました。その時点で、コロンビアはテキサス中央部の上空207,000フィート(63.1km)を時速12,500マイル(20116.8km/h)で飛行中でした。ケネディ宇宙センターまで1,192マイル(1918.3km)の地点です。回復の努力が続けられていますが、午前8時以降コロンビアからは一切通信が届いていません。また、メリットアイランド追跡ステーションからも追跡データが得られていません。フライト・ダイナミクス・オフィサーは追跡データには飛行物体の形跡はまったくないと報告しています"
08:20:18 a.m.
Flight:
"GC, Flight."
Flight:
"GC、こちらFlight"
08:20:20 a.m.
GC:
"Flight, GC."
GC:
"Flight、こちらGC"
08:20:22 a.m.
Flight:
"Bill, have you sent out the TWX? We're supposed to notify the other NASA centers via the TWX. And the TWX is on 2.8-3."
Flight:
"ビル、君はTWXを送ったか?他のNASAの施設にTWXで通知を出す必要があるはずだ。TWXのことは2.8-3に記載されている"
TWXはいわゆる「テレックス」のことです。
08:20:33 a.m.
GC:
"We'll work it, Flight."
"そうします、Flight"
08:20:34 a.m.
Flight:
"OK. That one I'd like to do as soon as we can, Bill."
Flight:
"OK、できるだけ早くやってくれ、ビル"
08:20:38 a.m.
GC:
"Copy."
GC:
"了解"
08:21:40 a.m
Flight:
"FDO, Flight."
Flight:
"FDO、こちらFlight."
08:21:52 a.m
Flight:
"GC, Flight."
Flight:
"GC、こちらFlight"
08:21:53 a.m
GC:
"Flight, GC."
GC:
"FlightこちらGC"
08:21:54 a.m
Flight:
"Is the command system still armed?"
Flight:
"コマンドシステムはまだONになったままか?"
08:21:57 a.m
GC:
"Affirmative."
GC:
"はい"
08:21:58 am
Flight:
"Let's safe it."
Flight:
"切ってくれ"
08:21:59 a.m
GC:
"Copy."
GC:
"了解"
08:22:00 a.m
Flight:
"INCO, we're going to safe the command system."
GC:
"INCO, コマンドシステムを切ってくれ"
フライトディレクターがもう必要がないと判断し、シャトルへとコマンドを送るシステムを切るように指示しています。


Glossary

Flight:Flight DirectorLeroy Cain
MMACS("Max"):Maintenance, Mechanical and Crew Systems EngineerJeff Kling
GNC:Guidance, Navigation, and Control Systems EngineerMike Sarafin
FDO("Fido"):Flight Dynamics OfficerRichard Jones
CAPCOM:Spacecraft CommunicatorCharles "Scorch" Hobaugh
GC: Ground Control OfficerBill Foster
EECOM:Emergency, Environmental and Consumables Systems EngineerKatie Rogers
INCO:Instrumentation and Communications Systems EngineerLaura Hoppe
MOD:Mission Operations Directorate rep.Phil Engelauf
Columbia:Orbiter CrewRick Hasband(Commander)
PAO:NASA TV Commentator at MCC, HoustonJames Hartsfield


Reference

NASA - Columbia - Home
Coliumbia Loss FAQ - Home Page
STS-107 Entry Timeline - Compiled by William Harwood CBS News
コロンビア事故最終報告書 非公式日本語版

Audio file info.

Audio file URL: http://www.lizard-tail.com/isana/podcast/comm_check.mp3
Podcast URL: http://www.lizard-tail.com/isana/podcast/feed.xml

Title : Columbia, Houston, comm check... - Columbia Lost - Feb 1, 2003
Dulation : 00:40:15
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Copyright : NASA

by isana kashiwai
isana.k [at] gmail.com