2006-07-01
§ **総合
NASA - STS-121(NASA)~
NASAのSTS-121公式ページ
国際宇宙ステーションの利用補給フライト ULF1.1(STS-121) - JAXA(JAXA)~
JAXAのSTS-121関連情報ページ。ミッションの概要、プレスキットの翻訳など。
§ **Webストリーミング
NASA-TVの打上げ中継は現地時間1日10時(日本時間1日23時)、打上げの約6時間前から始まりま す。~
なお、ストリーミング中継は、サーバやローカルでバッファリングされるため、実際の時間から数十秒〜数分遅れて配信されることがあります。ご注意ください。
NASA - NASA TV Landing Page(NASA)~
NASA-TV公式サイト
NASA-TV(JAXA)~
JAXAのNASA-TVミラーサイト
宇宙開発関連のビデオストリーミング(主にNASA-TV)などをアーカイブしているサイト。NASA-TVのミラーもある。
NASA - KSC Video Feeds(NASA)~
動画ではありませんが、ケネディ宇宙センター内外の固定カメラからの映像を配信。天気予報もここから。
§ **速報
NASA - NASA's Launch Blog - Mission STS-121(NASA)~
NASA公式打上げBlog、スタートは打ち上げ6時間前から。
Spaceflight Now | STS-121 Shuttle Report | Mission Status Center(SpaceFlightNow)~
おなじみ、SpaceflightNow の Mission Status Center。こちらはもう始まっていますね。
The Flame Trench space blog by Florida Today(Florida Today)~
地元紙Florida Todayのブログ
The Write Stuff (Orlando Sentinel)~
こちらも地元、Orlando SentinelのMichael Cabbage氏のブログ
CBS News Space Place - STS-121 Status Report(CBS News)~
アメリカの宇宙開発関連のニュースならこの人、CBSのWilliam Harwood氏の速報ページ
Forum : Discovery (STS-121 and STS-116)(NASA SpaceFligt.com)~
NASA関連ニュースサイトNASA SpaceFligt.comのフォーラム、ディスカバリー(STS-121)スレッド。
§ **打上げシーケンス
STS-121 Discovery Mission Timeline : Launch Phase~
打上げ準備段階から、着陸までの主要イベントをJavaScriptでカウントダウン
Space Shuttle Launch Sequence~
打上げシーケンスの解説。
略語対照表
§ **Launch Site
Kennedy Space Center(Google Maps)~
Launch Complex 39, Pad B(Google Maps)~
今回使われるのは、2つあるシャトル用の発射台のうち、北側の方です。STS-114と同じですね。
§ **Misc.
世界の主要ロケット発射場の現在時刻を表示。夏時間補正済み。~
自動更新はしないので、時間が知りたくなったらリロードしてください。
ISSの現在位置をGoogleMapを使って表示。
コロンビア事故報告書の日本語訳
Columbia, Houston, comm check... - Columbia Lost - Feb 1, 2003~
コロンビア事故の時の音声ファイルとそのテキスト起こし、および事故のプロセスの解説。
2006-07-02
§ **0:20
打ち上げまで後5時間、すでにNASA-TVでは中継が始まっています。~
燃料の充填は順調に進行している模様。懸念されていた外部燃料タンクの燃料枯渇センサー(ECOセンサー)も問題なく稼働しているようです。クルーは既にオレンジ色の気密服に着替え終わり、発射台に向かうのを待っています。彼らが建物から出てくるcrew walkoutは午前1時30分頃の予定。現在発射台周辺では、IceTeamと呼ばれる検査チームが、シャトルへの結氷をチェックしています。現在の天気予報では、打ち上げが可能な天気になる確率は60%とのこと。~
また、軌道上でオービターの姿勢をコントロールするスラスターのうち1つのヒーターに不具合が出ているようです。大丈夫かな?
§ **1:00
クルーがO&C(Operations and Checkout)ビルディングをでて、発射台へ向かいました。建物に書かれた、"We're behind you, Discovery!"の文字がいい感じです。~
O&Cビルディングの位置はここ(GoogleMaps)、ズームアウトしていくと、北の方に発射台が見えてきます。発射台までは約20分の道のりです。
§ **2:20
固体燃料ロケットブースターを回収する、2隻の回収船、Freedom Starと Liberty Starが大西洋上で所定の位置に着いたとのこと。発射台上では、クルーの乗り込みが続いています。
§ **2:45
クルー全員がシャトルに乗り込みを終えました。~
バーニアスラスターのヒーターの不具合の件については、天候さえ許せば打ち上げる方向で、検討しているようです。不具合が起きているのは6つあるうちの1つ。このスラスターがなくても、問題なくミッションはこなせるとのこと。
§ **2:55
ディスカバリーとコントロールルームの間で無線のチェック(Air to Ground com check)が行われています。
§ **3:03
フライトに使用しない物がすべてシャトルから片付けられ、ハッチが閉じられました。これから約30分かけて気密のチェックが行われ、安全が確認されると地上作業員は発射台を離れます。
§ **3:15
カウントダウンは順調に進んでいますが、天気予報があまりよくないようです。雷雲が接近しているとのこと。現状では天気予報のステータスは”No Go”です。
§ **3:34
T-20min holding、ここから10分間カウントダウンが止まります。これはあらかじめスケジュールに組み込まれているもので「ビルト・イン・ホールド」と呼ばれます。この10分間にコントロールルームでは打ち上げに向けて各セクションのチーフとフライトディレクターが最後のミーティングを行います。
§ **3:48
打ち上げまであと1時間です。シャトルのキャビンの気密テストは無事終了。カウントダウンは順調に進行中です。ただ、上空の雲が心配ですね。天気予報のステータスはまだ"No Go"のようです。~
地元紙Frolida Todayによるとチェイニー副大統領が打ち上げの見学にきているそうな。ついさっき到着して、いまシャトルの組み立て施設を見学中。この忙しいときに...
§ **3:50
どうやら、スラスターの不具合の件は打ち上げに問題なしとの判断が下されたようです。問題は天気ですね。
§ **3:50
T-9min holding、最後のビルトインホールドです。約45分間続きます。
§ **4:35
コントロールルームで、Go/No Go判断のコールが行われました。問題はやっぱり天気。ホールド時間を延ばすという判断が下されたようです。ラウンチウィンドウが閉まるのは、4:53:14(日本時間)です。 ~
§ **カウントダウンスクリプトをアップデート
STS-121 Discovery Mission Timeline~ 打ち上げ延期に合わせて、カウントダウンスクリプトを更新しました。*1~ が、中止後のスケジュールは変更されているので詳細リストの方はあまり信用できません。*1 といっても、データファイル上の打ち上げ時間を1行更新しただけ。我ながら便利な物を作ったものだ。
2006-07-03
§ *STS-121 打ち上げ 2nd attempt 07.02 04:26 JST
本日の打ち上げは、天候不順のため中止になりました。~
次の打ち上げ予定は、7月5日午前3時38分(日本時間)の予定です。
§ *Daily Clipping
§ **[clip] Ares: NASA's New Rockets Get Names(NASA)
NASAがシャトルの次世代機として開発している2種類の打上げ機に名前がついた、というお話。人間を乗せる方が「Ares I」、荷物を載せる方が「Ares V」。アーレスというのはギリシャ語で「火星」のこと、荒ぶる軍神でもある。「I」と「V」は、アポロ計画の2つのロケット、サターンIとVにちなんだんだそうな。これは、あくまでも最終目標は月じゃなくて火星なのだ、というNASAのアピールかな?~
(ブロガー(志望)さん、情報提供ありがとうございます)
§ **[clip] NASA Issues Hubble Space Telescope Status Report(NASA)
先日来、故障していたハッブル宇宙望遠鏡のメインカメラが復旧したよ、というお話。わーい。トラブルは許容量を超える電圧がかかって回路がシャットダウンしたというもの、要するにブレーカーが落ちたんですな。電源回路を別なものに切り替えて再起動したら直った、という感じ。さすがに、軌道上に16年も置いてあると、あちこち不具合がでるのも仕方がないのかもしれませんねえ。補修ミッションが飛べるといいけど...~
(zataさん、情報提供ありがとうございます)
2006-07-04
§ *STS-121関連
§ **外部燃料タンクから断熱材の脱落がありましたが、予定通り打上げるとのこと
2度にわたり打上げが延期されていたSTS-121ですが、現地時間3日の朝、機体への氷結をチェックする"Ice Team"が、発射台上に、断熱材の破片が落ちているのを発見。また、タンクの一部に亀裂が入っているのを発見しました。どうやらこの亀裂、低温になった断熱材の表面で雨が凍り、打ち上げ中止後に燃料を抜いたことでタンクが膨張、氷と一緒に断熱材の一部が「ひきつれる」ことで亀裂が入ったものとのこと。破片のサイズは長さ7cm弱、幅3mm弱、重さが2.5gぐらい。このサイズの破片なら、飛行中に衝突してもまったく問題はないとのこと。~ Space Shuttle Discovery: ET Foam(NASA) で、打上げチームは、現地時間7/4午後に予定されている打ち上げを延期して調査を行うかどうかの検討を進めていましたが、どうやらこのまま打ち上げることになったようです。え?ほんとに? すでに断熱材に亀裂や脱落が確認されている箇所については、打上げ時の熱の影響はほとんどない部分なので問題ない、ということのようです。新たな脱落の可能性については、リリースでは明言されていませんが、上のような理由で亀裂ができたのなら、さほど大きな破片にはならないだろう、ということでしょうか。うーん、ちょっと不安ですね。 物理的、工学的な面から見て安全かどうか?ということについては、上にもあるように「安全です」ということなので、この言葉を信じることにしましょう(これを疑うと何も話が進みませんからね)。さて、次にNASAが考えるべきなのは、この問題に対してどういうスタンスをとるかです。大きく分ければ二つ。「全然問題なし」と発表しそのまま打上げを決行するか、それでも一応調査をするよ、といって打上げを一日延ばすか。 これはなかなか難しい選択です。ただでさえ、断熱材の脱落の可能性が指摘されていた燃料タンク、そのタンクに規模は小さいにせよ実際に脱落が起きていた。ふつうは、「おいおい大丈夫なのかよ?」といいたくなります。全然大事じゃないんですよ〜、とかるーくスルーするか、いやいやそれでも慎重に慎重を重ねて、とやるか。前者は「また安全軽視」とそしりを受けかねません、でも後者も「そんなに深刻なのか」という印象を与えかねないでしょう。加えて、5日より4日の方が天気いい、という予報が出ています。 ただ、実際打上げを一日伸ばしたところで、発射台上にいる限り破損箇所には手が届きませんから、実は何の解決にもなりません(もしやるとしたら、発射台の上にやぐらを組むことになりますね)。本気で対応するなら一度組立棟まで戻さないとダメです。しかも、これはこのタンク固有の問題じゃありませんから、新しいタンクに変えてもまったく同じ現象が起きる可能性があります。そうなると、再開のめどが立たないということにもなりかねませんね。 なるほど、「一日伸ばして調査しても、組立棟まで戻しても、すぐには対策の取りようがない」「機体を破損するリスクはまったくない」この二つの条件が揃っているなら、ことさら騒ぎ立てるのは得策じゃないのかもしれません。まあ、この条件が揃っていれば、ですが。 が、見ている人間にとっては不安はぬぐえませんね。氷結程度でぱらぱら落ちる断熱材が、ほんとうに打上げの負荷に耐えられるんでしょうか。まあ、今回そのリスクは織り込み済みということなんですが... (追記) Trackbackによりご指摘。見出し修正「どうり→通り」。お恥ずかしい。2006-07-05
§ *STS-121打ち上げ 3rd attempt 2006.07.04 14:38 EDT
STS-121の打上げは、日本時間7月5日午前3時38分の予定です。~
関連URLは、2006.07.01のエントリを参照してください。~
以下のエントリでは、特に断りがない限り、時間はすべて日本時間で表記します。
ref. STS-121 Discovery Mission Timeline : Launch Phase : 主要イベントカウントダウン~
ref. Space Shuttle Launch Sequence : 打上げシーケンスの解説。
§ **2:10
打ち上げ1時間30分前、クローズアウトクルーが、ハッチを閉め気密テストを終えて、発射台からおりてきました。これで打ち上げまでは、発射台周辺は乗組員以外は無人になります。
§ **2:16
T-20 min holding、これはあらかじめスケジュールに組み込まれた、10分間のホールドです。この間に、フライトディレクターと各セクションのチーフが最後のミーティングを行います。天気予報、固体燃料ロケットブースター(SRB)の回収船の配置等が確認されます。
§ **2:35
カウントダウン再開。カウントダウンは順調に進行中。今回は天気のステータスも"Go"です。
§ **2:42
T-10 min counting、ちょっとKSCの滑走路の横風が強いみたいですね。
§ **2:43
T-9min holding、ここで再びカウントダウンが止められます。45分続きます。このホールドで、打ち上げ時間の最終調整が行われます。また、コントロールルームでは"Go/No Go"のコールが行われるはずです。
§ **2:48
今日のTAL(Transatlantic Abort Landing)のターゲットはスペインとのこと。これは、上昇中にトラブルが発生した際、大西洋を越えて緊急着陸する際の目的地のこと。現地の天候などから、当日打ち上げ寸前に決定されます。
§ **3:05
FloridaTodayによると、今回T-31秒にもう一度ホールドを入れるかもしれないとのこと。液体酸素の温度が通常よりも若干高い数値を示しているようです。
§ **3:18
打ち上げまで約20分、カウントダウンは「おおむね」順調に進行中。
§ **3:20
nasaspaceflight.com のフォーラムにポストされた情報によると、液体酸素の温度の件はターボポンプにごくわずかに負荷をかける程度、とのこと。打ち上げには全く問題がないレベルだそうな。
§ **3:25
コントロールルームでGo/No Goコールが行われました。打ち上げは"Go"です。
§ **3:29
カウントダウン再開。ターミナルカウントダウン。
§ **3:30
オービターアクセスアーム収納
§ **3:33
APU(油圧装置を駆動する電源)スタート
§ **3:36
2分前
§ **3:37
インターナルパワー
§ **
打ち上げ!
§ **
MAX-Q
§ **
SRB切り離し
§ **
ネガティブリターン
§ **
ロール開始
§ **
メインエンジン燃焼終了
§ **
ET切り離し
2006-07-06
§ **[prog] GoogleSatTrack 2 - STS-121 Special Edition
恒例の、期間限定スペースシャトルバージョンをアップしました。~
GoogleMapAPIもGMap2にアップデート、内部コードも若干いじってあります。~
(FireFoxで見た時のアイコンのちらつきが解消されているはず)
§ **[sts121] STS-121 STS-121 Flight Day3
さて、本日のハイライトはなんといってもISSとのドッキングです。~
以下は全て日本時間です。~
22:18 - アプローチ開始~
22:51 - ISSの真下で宙返りをして破損箇所のチェック~
23:52 - ドッキング~
01:13 - ハッチオープン(たぶんまた鐘が鳴ります)
まあ、今日は逐次更新はせずに、のんびり見ようかな。
追記)~
どうやら、スケジュールが変更になっていたようです。スクリプトを修正しました。
2006-07-08
§ **[sts121] STS-121 Flight Day5
本日のメインイベントは、EVAの第1回目です。~
開始が日本時間の22:13、終了が翌9日の4:28の予定です。今回は、OBSSというロボットアームを延長するブームの先に飛行士が乗った場合のテストと、EVA2に向けての準備が行われます。
ちなみに、 赤いストライプの付いた宇宙服をきているのがピアース・セラーズ (EV 1)、ついていないのがマイケル・フォッサム(EV2)。船内からサポートするのがパイロットのマーク・ケリー。リサ・ノワックとステファニー・ウィルソンがロボットアームの操作をします。
2006-07-11
§ **[sts] STS-121 Flight Day8
ミッションの延長に伴い、スケジュールを更新しました。~
ミッション8日目の今日は、引き続き補給物資の運び込みと、明日の追加された第3回目の船外活動に向けての準備が行われます。
§ **[prog] GoogleSatTrack 2 - STS-121 Special Edition
http://www.lizard-tail.com/isana/lab/googlesat/googlesat2.php?terminator=on
調子に乗って、新しい機能を付けてみたけれど...ちょっと重くなってしまった。それに、見栄えもいまいち(精度もいまいち)。デフォルトとして組み込むかどうかは思案中。ただ、このままお蔵入りさせるのももったいないので、とりあえず同機能をONにするURLを公開します。URL末尾の"?terminator=on"を削れば、これまでと同じです。
これは、「明暗境界線」(ズームアウトすると見えるかも)。というとなんだか仰々しいけれど、要するに地球の上で朝を迎えている場所と、夜を迎えている場所に線を引いたもの。白が朝で、黒が夕方。なんということはないけれど、今ここに朝が来ているのか、と思ってみていると結構楽しい。
ちなみに、ISSからだと地平線は2000km向こうなので、この線のずっと手前で明るくなり始めます。
2006-07-12
§ **[sts] STS-121 Flight Day9
今日は、追加された3回めの船外活動(EVA)、シャトルの主翼先端部や機首に使われているRCCパネルの修理のデモンストレーション、赤外線カメラでの撮影テストなどが行われる予定です。飛行士たちがエアロックから出てくるのは日本時間20時13分、船外活動を終えエアロック戻るのが2時28分の予定です。
2006-07-15
§ **[podcast] Good luck and Godspeed, Discovery - STS-121 Launch - July 4, 2006
ひさしぶりに、Podcastの更新です。今回は月曜日に帰還が予定されているSTS-121の打ち上げ時の音声記録。もちろんトランスクリプト付きです。ふふふ。実はまだ翻訳などの作業中なんですが、このままだと時機を逸しそうなのでとりあえず公開します。
今回は元になるドキュメントがなかったので、音声ファイルから直接起こしました。一部聞き取れなかった部分や、意味が通っていない箇所がありますが、どうかご了承ください。
§ **[sts] STS-121 Flight Day12
最後の船外活動を終え、一日の休息日を挟んで、14日にすべての物資を運び込んで役目を終えたレオナルド多目的補給モジュールが、シャトル内に回収されました。いよいよ本日、日本時間15日19時8分にISSからシャトルが切り離されます。
今回は、いつも行っているISSの周りを一周してのチェックは行わず、いったんISSから離れた位置で再びシャトルの主翼前縁部、機首部分などに破損がないかのチェックが行われます。これは軌道上でスペースデブリや微小隕石などによって新たな破損が起きていないかをチェックするもの。このようなチェックが行われるのは今回が始めてです。もし、破損が発見された場合は再びISSにドッキングし対応が検討されることになっています。
2006-07-16
§ **[sts] STS-121 Flight Day13
今日は、順調に行けば軌道上で過ごす最後の一日、明日はいよいよ帰還、大気圏突入です。今日は一日、帰還のための準備。物を固定したり、機器のチェックをしたり。ちなみに、上記ページには、すでに帰還時のタイムスケジュールも加えてあります。
さて、昨日行われた機体の損傷チェックは問題なしとのこと。ただ数日前から燃料タンクの圧力がわずかに下がっている補助動力装置(誤:補助電源ユニット)(APU:Auxiliary Power Unit)がちょっと心配ですね。APUというのは、シャトルの油圧装置を動かすための装置です(下記、別項参照)。メインエンジンの首振り機構や大気中に入ってからシャトルをコントロールするエレボンやラダー、着陸脚の出し入れ(ただ、シャトルの場合着陸をやり直すことができないので「入れる」ことはまずありませんが)など、油圧で動いているものは、シャトルのフライトでとても重要な役割を果たすため、壊れてしまうとちょっと困ります(というか、帰れません)。
現在、バックアップも含め3台あるAPUのうち1台の燃料タンクにわずかな圧力低下が見られること。現状の圧力低下のレベルなら、そのまま使ってもまず問題ないとのこと。ただ、リークが現状のレベルで留まっているかどうかは分かりません。APUは一台あれば、帰ってくることはできますが、予備がないというのはちょっと心配です。
それに、故障したAPU1は着陸脚を出すために使われるため、動作しない場合は火薬の力で強制的に着陸脚を展開するバックアップシステムを使うとのこと。使わないにこしたことは無いんですが...。
§ **APUとは
コメント欄にて、シャトルのAPUは電源供給のための物ではないのでは?というご指摘を受けて改めて調べてみました(月影さんありがとうございます)。確かにご指摘の通り、シャトルのAPUは電源ではなく直接油圧を供給する物です。なんだかすっかり勘違いしていたので、改めてまとめておきます。
APU:Auxiliary Power Unitというのは上にも書いたように、シャトルの油圧装置を駆動するためのものです。一般的APUというのは、航空機用のエンジンを始動するための電力や飛行中に使用する電気を供給する発電機を指しますが、シャトルの場合は電力を供給するのではなく、燃料を燃やしてタービンを回し、その回転力を直接油圧ポンプの駆動力として使っています。いわば小型のロケットエンジンでポンプを動かしているという感じですね。また、これらのポンプの潤滑油や油圧装置の油を冷却するために、Water Spray Boilerと呼ばれる冷却器がAPUに付属しています。シャトルのAPU、Water Spray Boilerは機体後部、ペイロードベイのすぐ後ろあたりに置かれていて、尾翼の付け根に排気口があります。
これらの装置は打ち上げの5分前にスイッチが入れられ、軌道投入噴射が行われるときに止められます。基本的に軌道上では帰還前日のテストを除き使用されません。そして、大気圏突入のための軌道離脱噴射の後、スイッチが再び入れられます。~
Auxiliary Power Unit(NASA)~
APUの配置図(NASA)~
APUの取付けの様子(NASA)~
Auxiliary Power Unit(Wikipedia)
このAPUで燃料として使用されているヒドラシンは可燃性に加え毒性も高く危険性が指摘されていました。そのため、これをバッテリー駆動に変えようという計画もあったようですが、いまだ実現していないようです。~
2006-07-17
§ *[sts121] STS-121 Discovery Mission Timeline : Landing Phase
さて、今日はいよいよ帰還の日です。懸念されていたAPUの不具合も、昨日のテストで問題ないとの判断が下され、あとは帰ってくるばかりです。 今日、最初の帰還のチャンスは、日本時間21:07に軌道離脱の噴射、約一時間後の22:14にケネディ宇宙センターへ着陸です。天候などで着陸が延期される場合には、次が軌道離脱22:42、着陸23:50の予定。今日はエドワーズ空軍基地など他の着陸候補地は使わない予定です。 関連URLは打ち上げ時のリンク集がたいてい使えるはず(NASAの公式着陸BlogだけがURLが違いますね)。~ Garbege Collection(2006-07-01)~ NASA's Landing Blog - Mission STS-121§ **20:50
Go/NoGoの投票が行われ、天候を除きすべてのセクションでGOが出たとのこと、着陸予定地のKSCの北で軽く雨が降っているため、天気の状況を継続してチェックしているようです。
§ **20:57
"Go" for De-orbit burn. 軌道離脱に向け最終的なGOが出ました。
§ **21:07
軌道離脱噴射開始。シャトルは進行方向にお尻を向けた姿勢でOMSを噴射し、大気圏突入に向けて速度を落とします。
§ **21:10
軌道離脱噴射終了。"Good burn."
§ **21:43
Entry Interface. シャトルが高度40万フィートに到達。~
NASAでは便宜上ここからが「大気圏突入」ということになっています。ちなみに、かつては大気圏突入の際に通信が途絶える領域がありましたが、現在ではシャトルの背中についているアンテナで衛星経由で通信を行っているため、通信の途絶はありません(軌道によってはわずかに途絶することもあるそうですが)。
§ **21:54
着陸予定のKSCの滑走路付近に雲が出てきたため、最終的なアプローチのルートを若干変更するとのこと。
§ **21:57
最も機体の温度が高くなる領域を飛行中。
§ **21:59
シャトルは順調に飛行中。着陸まであと15分。現在、中央アメリカ上空。
§ **22:04
シャトルが地上施設による誘導を始めました。
§ **22:15
タッチダウン!おめでとうございます。
2006-07-21
§ **[clip] 太陽観測衛星SOLAR-B/M-V-7の打上げについて(JAXA)
M-V-7による太陽観測衛星SOLAR-Bの打上げが9月に行われることが決定しました。打上げ日は公式には発表されていませんが、最短でも9月23日以降になる模様(え、根拠?Solar-B(NASA)、ここにそう書いてあります)。
が、M-Vシリーズはこれで最後とのこと、ありゃ、ちょっと残念。これで生産分は全て使い終わり新たな発注はしていませんでしたから、予測された事態ではあるんですが。やっぱりちょっと寂しいですねえ。~
M5ロケットことしで廃止 宇宙機構、後継機開発へ [CHUNICHI WEB PRESS]
次世代機はMVの打上げコストが70億円だったのを、ペイロードを低軌道500kgに限定して28億円まで落とすそうな。これはうわさのH2Aの固体燃料ロケットブースターが1段目、2段目にMVの3段というあれかな?それにしても、低軌道500kgというのはなかなか厳しい数字。ちなみにはやぶさは打上げ時510kgあった(もちろん、小惑星ミッションだから10kgダイエットしても全然足りない)。大型の科学衛星はH2Aで上げましょう、ということなら中小規模のロケットを作るのは意味があることだと思うけど...。
2006-07-23
§ **[clip] SOFIA Project Gets Green Light for Go-Ahead (SpaceRef)
ボーイング747に望遠鏡を乗せて、成層圏で天体観測をやろうというNASAのプロジェクトSOFIA(Stratospheric Observatory for Infrared Astronomy)に最終的なGOサインが出たとのこと。わーい。
先月行われた振動テストの結果を受けて、これは行けそうだということで改めて認可が下りたみたい。一時期は、NASAが推進している「月とか火星とかへ行くぜ計画」のあおりを食って予算が削られそうになったけれど、これで一安心。今年の後半には初飛行が行われるそうな。
§ **[clip] A plane you can print (NewScientist)
ロッキードマーティンの秘密道具開発チーム「スカンクワークス」が開発中の「印刷して作る無人機」の話。えーと、紙飛行機?いや、どうやら製品のプロトタイプなんかに使われる「3Dプリンタ」を実機のパーツ作りに使ってしまおう、というアイディアみたい。ほら、やっぱり秘密道具だよ。
3Dプリンタというのは「紫外線で硬化する樹脂」や「樹脂や金属の粉に強力なレーザーを当てて溶かして硬化させる」といった方法で、CADの図面から直接パーツのコピーを作り出す機械のこと。現在開発中のPolecatと呼ばれる高高度無人偵察機では、実機のパーツの90%がこうした「3Dプリンタ」の技術を使って作られているそうな。
なにがすごいって、このPolecatは設計開始からフライトモデルの製作まで18ヶ月しかかかっていないらしい。風洞実験はコンピューターシミュレーションでやれるし、特殊な形状のパーツをわざわざ外注して作らせる必要もない。図面を引いて、3Dプリンターに入力すれば数時間後には実際のパーツができている。このスピード感は確かに開発者に取っては夢のような環境かもしれない。車なんかにはすぐ応用できそうだねえ。
ref.LOCKHEED MARTIN'S SKUNK WORKS REVEALS HIGH ALTITUDE UNMANNED SYSTEM(Lockheed Martin)
2006-07-26
§ **[clip] Titan may be a land of lakes after all(NewScientist)
土星探査機カッシーニがタイタンに"湖"を見つけたかも、というお話。うゎお!ただし、メタンかエタンの湖だけどね。カッシーニが搭載しているレーダーが、土星の衛星タイタンの極地方にレーダーをまったく反射しない領域が点在しているのを発見。これは、地表が非常に滑らかであることを意味していて、最も可能性が高いのは「広範囲にわたって液体が表面を覆っている状態」つまり"湖"とのこと。きゃー!
ある、絶対ある、といわれていたけれど、とうとう発見か?もしこれが本当に湖なら、地球以外の天体の表面に液体が存在することが直接観測されるのは初めて。そう、初めてなのだ。「液体」という相は宇宙では結構珍しい存在なのかも(超高圧下なら液体金属ってのはあるか)。
ref.Cassini-Huygens: Multimedia-Images(NASA)
§ **[clip] Shuttle edges to night launches(BBC)
NASAがシャトルの夜間打上げを再開することを検討中、というお話。
コロンビア事故以後、上昇中のシャトルを地上や空中から撮影するために夜間の打上げが禁止されている(安全基準の中に「昼間に打ち上げること」という項目が盛り込まれているため"禁止"なんです)。ただ、そのせいで打上げウィンドウが制限されて、ISS完成に向けてのスケジュールがぎりぎりになっているのも事実。NASAでは、もう一回昼間のフライトをやって様子を見た上で夜間の打上げを再開することを検討しているらしい。
個人的には、悪くない選択だと思う。前回と今回のフライトでテストしたみたいに、軌道上でシャトルの状態を仔細にチェックすることができるのなら、上昇中のシャトルを撮影する必要性はスケジュールを犠牲にするほどは高くないんじゃないだろうか?もちろん、何かあったときにその原因を特定するという意味では、とても重要なプロセスかもしれないけれど、それでスケジュールが圧迫されてスタッフに負荷がかかるようなら本末転倒なんじゃないかな?スケジュールが圧迫されることで高まる事故のリスクと、何か起きた時に原因が特定しやすいというメリットなら、前者のほうがずっと重いよね。
2006-07-27
§ **[clip] Russian rocket fails(SpaceFlightNow)
日大のCubeSat「SEEDS」を含む18機の衛星を乗せたロシアのドニエプルロケットが打上げに失敗した、とのこと。打上げ85秒後にメインエンジンが停止したらしい。がーん。~
原因は調査中。ロケットの破片は射場から16マイル離れた地点に落下、現在のところ被害は出ていない模様。夜間の打上げだったため、破片の回収は朝を待って行われるとのこと。~
ref. CubeSat Community Website - Home~
ref. NihonUniversity CubeSatProject OfficialWebSite~
ref. SEEDS - weblog -
2006-07-28
§ **[clip] GAO: NASA's Current Acquisition Strategy for the CEV Places the Project at Risk of Significant Cost Overruns, Schedule Delays, and Performance Shortfall(SpaceRef)
米国会計検査院が発表したNASAのポストシャトルの有人宇宙計画に関する評価。曰く「予算はオーバーしそう、スケジュールは伸びそう、性能も要求を満たさないものになるかも」大雑把にまとめると、まだあまりに不確定要素が多いのに、コストやスケジュールが楽観的過ぎるんじゃないか?という指摘。
指摘されている問題点は、こんな感じ。
「なんだか、開発に必要な金額が予算を上回っている年があるけど大丈夫?他の年の余剰を回すって言っているけど、スケジュールが遅れたり予算が超過したらどうするの?それはちょっと余裕がなさすぎなんじゃない?」~
「それに、設計や技術仕様、コストなんかがはっきりする前に、コンストラクターと長期契約を結ぶっていうのはどういうこと?それって仕様の変更やスケジュールの遅れが出るんじゃないの?」~
これに対してNASAからは「きちんと予測を立てた上でコストを見積もっているから大丈夫だよ」との回答があったけれど、GAOはさらに再反論しています。~
「だって、当初の計画からもう何度もプランが変更されているじゃないか」
これに対する対応策としては、NASAには「もう一度ちゃんと予算の範囲内でやるべきことと出来ることを考えたほうがいいよ」という提案が、そして政府に対しては「設計段階での評価が終るまでは当該予算を制限したほうがいいんじゃない」という提案がされています。
わはは、コテンパンですね。このプロジェクトは素人目に見てもスケジュールとコストの見積もりが大雑把過ぎましたから、いつかツッコミが入るだろうと思ってましたが、案の定あちこちから「見直せ」という声が上がっているようです。
ref. NASA予算案を読んでみる(Junkyard Review)
§ **[clip] Unaffordable and Unsustainable: NASA's Failing Earth-to-orbit Transportation Strategy - A Policy White Paper of the Space Frontier Foundation(SpaceRef)
ほぼ同時期に民間団体からも批判が出てますね。これは、民間宇宙開発を促進する目的で設立された"Space Frontier Foundation"も、NASAが現在進めている有人宇宙計画は「無理が多く、持続性も無い」とするホワイトペーパーを発表した、というお話。GAOのレポートと同じく「今のままじゃ、スケジュール的にも予算的にも絶対続かないよ」、ということみたい。
彼らが提示している対案はこんな感じ。
「大統領のステートメントには、"経済、国家安全保障の面での利益を最大化するように計画しろ"と書いてあるのに、NASAは既存のコンストラクタとばっかり仕事をして、ちっとも経済の活性化に寄与してない。政府はもっと民間企業にお金を落とすことを考えてよ。ファンドを作るとか、賞を設立するとか、税金を優遇するとか、色々あるでしょ?」~
「それから、新しい有人機だけど、あれちょっと大げさすぎるよ。コストも時間もリスクもちょっと高すぎるよね。既存のAtlasVとかDeltaIVを使うプランをもう一度検討してみるべきだよ」~
「それに、ISSが退役する前に新機種を投入するのは無理がある。ISSに使うのをあきらめれば予算的にもスケジュール的にも余裕が出るよね。地球周回軌道のことは民間企業に任せて、NASAはそれを買えばいいよ。むしろNASAは最初から月を目指す、でいいんじゃない?」
まあ、要するに「もっと僕らにやらせてくれ」ということみたい。いいたいことはよく分かるし、ありえないとは思わないけれど、上のGAOの報告書を読んだ後だと、ちょっと見劣りがしますね。この文書には「NASAにはできないけど、民間企業ならできる」という肝心の主張を裏付けるものが何も提示されていません。現状分析の部分も要するに「無理」と書いてあるだけ。具体的な数字もなければ、プランも無い。ただ、僕たちにもっと仕事を、もっとお金を、もっと優遇をと書いてあるだけ。さすがにちょっと虫が良すぎる感じ。提案書としては弱い気がする。
2006-07-31
§ **[clip] イタコの「口寄せ」に癒やし効果…青森県立保健大調べ : 科学(YOMIURI ONLINE)
まあ、そりゃあるだろうなあ。「癒して欲しい」という人と「癒してあげる」という人が出会えば、何らかの効果があるのは当然だもの。でも、それを医療の現場でのメンタルケアと同列に論じるのは、かなり気をつけてやらないと危ないんじゃないかな。
藤井教授は、多くのイタコが死亡した親族や友人らの“言づて”として、悩みを抱えた患者らに、問題の解決時期を示し、「そこまで我慢すれば良くなる」などと述べる点に注目。「現代医療は患者にリスクを説明し、自己決定を促す傾向にあるが、患者は医師や看護師に『見通しをつけてほしい』と願っている。イタコの口寄せには安心感や前向きに生きる力を与える効果があり、学ぶべき点がある」と話している。
記事を読む限り、この研究は「医師や看護師が悩みを抱えた患者らに問題の解決時期を示す」ことを提案しているみたい*1。それってどうなんだろう?相談者がイタコに求めているものと、患者が医療に求めているものは全然違う。それを混同するのは、ちょっとまずいんじゃないかな。
イタコの言葉を信じるか信じないかは、相談した人の問題だし、その正否は多くの場合解釈の問題だ。だから僕たちは安心して“言づて”を聞ける。“言づて”が間違っていたからといって、イタコを訴える人はあまりいないんじゃないかな?それはどこかで、相談者が「間違えていても恨みっこなし」ということを納得しているからだ。でも、人々が医療に求めているのはそういうものじゃないよね。
確かに、自分が病気になった時に知りたいのは、確実に直るのか?いつまで続くのか?という予測であることは事実だ。でも、もし、それを言ったのが「イタコ」や「占い師」なら、間違えても「やっぱり口寄せは迷信なのか」で済む話かもしれない(あるいは「日ごろの行いが悪いからだ」かな)。でも、「3ヶ月我慢すれば、きっと良くなりますよ」というお医者さんの言葉が間違えていたら、「やっぱり医者って当てにならないよね」と諦められるかな?
この世の中には確実なことしか言わないからこそ安心できることもある(僕はこっちの方が多いと思う)。もしある日突然、お医者さんが「これからは、患者を安心させるために、あまり確実じゃないこともどんどん口にするようにします」と宣言したら、僕はものすごく不安になるだろう。もし黙ってそんなことをやられたとしたら、もっと困る。僕は誰の言葉を信じればいいんだ?イタコか?
これには異論があるかもしれないけれど、僕は、お医者さんに軽々しく予見を口に出して欲しくない。彼らには「確実に言えること」だけを口にして欲しい。僕がお医者さんに求めるのは「確かさ」であって、確かさを担保にして「癒し」を配ってもらうことじゃない。
*1 もちろん、これは研究の意図を誤解している可能性もある。残念ながらネット上には記事の元になった論文や研究報告を見つけることはできなかった。悪しからず。
> 増田二三生 [宇宙開発はロボットでやるしかないすると安く速く宇宙都市が出来るだろう]
> isana [宇宙都市に住むのは人ですよね。宇宙で人が暮らすためには、宇宙で人が生活するためのノウハウを蓄積しなくちゃいけないはず..]