Garbage Collection


2004-06-16

§ Music on the net -reprise

友人とチャットで話しながら、つらつらと考える。

僕はこの件については、少し戸惑っている。個人的に、語気荒く「CCCD反対!還流防止法反対!」と叫ぶことに抵抗感がある。何かまとまったことがいえるとは思わないけれど、この戸惑いを表明しておくのは、たぶん無駄にはならないだろう。


CCCDはどうかと思うし、還流防止で輸入CDがターゲットになる(本当にそうなのか?)のも解せない。でも「搾取をむさぼるレコード会社ゆるすまじ」みたいな議論はもっと賛同できない。レコード会社は何もやっていないか?僕はそうは思わない。アーティストを発掘し、売れるかどうか分からない彼らにそれなりに宣伝費をかけて(もちろん新人にそんなに巨額な宣伝費がつくわけじゃないけれど、決して安くはないはず)、人々の目に触れさせ、CDをプレスして...。これだけでも、なかなか大変な仕事だと思う。ミリオンセラーを出せるようなアーティストが、そういう形で利益を新人アーティストに分配しているからこそ彼らがメジャーになっていく可能性もある。


楽曲がすべてネットワーク上で提供され、誰もが自由に自分の作った作品を流通させられる。一見理想的な世界に見えるけれど、本当だろうか?ユーザーから直接アーティストにお金が落ちるような仕組みがあればいい?僕はそうは思わない。想像してご覧よ、アーティストにとってはずいぶん殺伐とした世界じゃないか?たとえば、1曲100円としようか、1万回のダウンロードで100万円。これは大もうけだろうか?このお金で何人が何ヶ月暮らせる?レコーディングや配信のための費用がここから出せる?売れているアーチストならあり得ない数字じゃない。じゃあ、売れてないアーティストは?彼らが売れるためにかけなきゃいけないお金は誰が出す?


だれかが、彼らに「先行投資」をして、育てる必要がある。今の方法がいい方法なのかは分からないけれど、少なくとも今はレコード会社がその役割を果たしているはずだ。聞いたこともない音楽に触れて「あ、いいな」と思う、そういう体験の多くをレコード会社が担っている(彼らはそのためにずいぶん博打をやっている)。日本は世界でもまれに見るぐらい多くの楽曲をCDで手に入れることができる国なんだ。いや、正直悪くない仕事をしていると思うけどなあ。


でも、誰もCDの価格の中にそういう目利き料やアーティストの養育費が入っているとは思っていない。こんなことを言っている僕だってCD買うときに「ああ、この2千幾らかのお金の中に、次世代のアーチストを育てるためのお金が含まれているんだ。うんうん」なんて思わない。頭では分かっていても、結局の所「CDってやっぱり高いよ」とか思っている。このギャップはなかなか埋めがたい。


問題は、状況が変わりつつあるということだ。まず、CDが売れていない。それから合法/非合法問わず高品位の楽曲データがネット上からダウンロードできるようになりつつある。これは、レコード会社の既得権が脅かされるというだけの問題じゃない。レコード会社が持っている「アーティストの利益を再分配する」という仕組みが崩壊の危機に瀕しているということだ。これは、本当に由々しき事態だよ。


まあ、そうはいっても、この状況に対応する方法として、CCCDはスマートじゃないと思う。なにより後ろ向きだしね。他に何か上手い仕組みがあればいいんだけど、今はまだこれという方法はなさそうだ。あ、勘違いしないで欲しい、僕が言っているのはコピーコントロールの方法じゃなくて、楽曲のダウンロード販売で音楽業界全体が成り立ちうる方法のことだ。解決策は価格設定だろうか、あるいはもっと違う利益分配方法があるんだろうか。この楽曲ダウンロードの隆盛が止められないなら、何か他の方法を考える必要がある。今すぐに。


僕はCCCDには反対だ。還流防止が輸入CD規制につながるとすれば賛成するわけにはいかない。やっぱりCDは高いと思うし、もっと気軽にネットから楽曲が落とせるようになればいいと思う。でも、僕が不安なのは、自分が半ば無自覚にアーティストに向かって「パンがないのならば、ケーキを食べればいい」と言っていないかということ。僕がこのことについてどうしても強い口調になれないのは、こういう理由だ。


さて、言いっぱなしじゃなんなので、最後に思いつきを書いておくと、「ネットに常時接続していてネットラジオが聞ける携帯プレーヤーに購入ボタンがついている」というのが僕の考える理想型。


§

参考) Junkyard Review "Music on the net"