Garbage Collection


2005-12-14

§ はやぶさ帰還延期

「はやぶさ」探査機の状態について(JAXA)

2度目の着陸の後、燃料漏れトラブルの解消、姿勢の回復、データのダウンロードなどの努力が行われているはやぶさですが、当初の帰還予定のリミットを延長することが決定したようです。この決定により、はやぶさの帰還は2010年ごろに伸びることになります。どうやら、前回の発表の後、再び燃料漏れが起き、探査機の姿勢が乱れたようです。現在復旧作業中とのこと。

コンディションが戻っていない以上、他に選択肢はないでしょう。帰還がのびるということは、機器の耐用年数などの面から見てさらにリスクが高まるということです。どうしても「のぞみ」のときのこと*1を考えてしまいますね。まあ、別の見方をすれば、これで機器の耐用性や長期ミッションに関する貴重なデータが取れるということかもしれませんが。

スタッフの皆さんも、長丁場になりますががんばってください。心から応援しています。

そして...がんばれ、はやぶさ!

*

記者会見より川口淳一郎プロジェクトマネージャーの言葉

今回、サンプルリターンを全世界で初めて試みた。宇宙開発は過去、マスコミの監視の中、びくびくしながら、確実性の高いプロジェクトを実行してきた。しかし宇宙開発には、リスクを取っても先に進むということも必要なのではないか。

高い塔を建ててそこへのぼってみれば新たな地平が見えるものだ。そのような塔を自ら建てるという意識を鼓舞したという点でははやぶさには意味があると考えている。

現状、NASAもESAもサンプルリターンもおそらくプロポーザルを出せないだろう。少なくともはやぶさレベルまでは成功させなくてはならないから。

だからはやぶさ2があるとすれば、これは日本にしかできないだろう。是非ともやりたい。

松浦晋也のL/D: 「はやぶさリンク」:12月14日午前の記者会見
NASAやESAにケンカを売っているつもりはないのですが(笑いが起きる)…ASIMOが走りましたけれど、すぐにあれをやれといってもできない。宇宙開発はポリティカルに進めざるを得ない。税金を使っているので確実性の高いことを追求せざるを得ないのだ。あくまでも個人的見解ですよ(笑いが起きる)。

しかし、これを続けていると、確実な技術を組み合わせて行う宇宙開発が主流になってしまう。オフザシェルフテクノロジーという。アメリカのスターダストはこれだ。これは行政的には非常に考えやすい計画だ。安いし安全。うまくサイエンスの目的に合致すれば非常に効果的である。

しかし、オフザシェルフテクノロジーは、棚の上の出来合い技術がなくなれば、そこでお終いだ。その時に、NASAやESAが、出来あい組み合わせの状態からポリシーを転換できるかどうか。私は難しいと考える。有能な役人であるほど、転換に躊躇すると思う。

しかし我々ははやぶさをやったおかげで、例えば「小惑星への着陸まではできます」とはっきり言うことができる。共同研究の申し込みが多い背景には、我々なら「できる」と言い切れるということがあると考えている。

くれぐれもNASA、ESAの悪口を言っているのではないことを付け加えておく。

松浦晋也のL/D: 「はやぶさリンク」:12月14日午前の記者会見

こういうことを記者会見の場ではっきりいえる人が日本の宇宙開発にいるということが何よりの救いだと思う。

*

これを「失敗」と呼ぶのならば、失敗することから学ぶことの大きさをもっと評価してもいいんじゃないだろうか。もちろん全てにおいて成功を収めるというのはすばらしいことだけれど、失敗をしないために何をすればいいかを知っているというのは、ものすごいアドバンテージなんだ。そして、そのアドバンテージは失敗することからしか得ることができない。

ゴールへの道を見つけるための一番の近道は、最善と思われる道を一つ一つ丁寧にたどっていくことだ。そして、見つけた袋小路の数だけ、後に続くものの道程はより短く、確実なものになっていく。英語の「pathfinder」という言葉は「先駆者」や「開拓者」を意味する。「はやぶさ」はそのために作られた探査機だし、はやぶさチームがやっているのはまさしくそういう仕事だ。これは本当にすばらしいことだよ。

*1 火星探査機「のぞみ」はトラブルでミッションが伸びたために機器に不具合が出て火星にたどり着けませんでした。