Garbage Collection


2005-12-22

§ 忘れないうちに書いておこう。

NET EYE プロの視点:研究の失敗に寛容な風土はできるか(12/21)

最初に読んだ時、頭の中で血管の切れる音が聞こえた。
なんだかこう、自分が大切にしていたものを踏みにじられたような気分。
日記のエントリーを書いて、ぼろくそに叩いてやろうと思った。
ふと、「はやぶさチームの人たちには、この記事を見せたくないな」と思ったら、
ぼろぼろ涙が出てきた。ごまかすのが大変だった。

関係者でもなんでもない自分がこんなことを思うのは、
ただただ、おこがましいだけなんだけどね。

やっぱりぼくは、宇宙だとかロケットだとか、そういうものが大好きなんだ。
少なくとも、いい年した大人が、悔しくてPCの前で涙を流せるくらいには。

とりあえず今は、批判めいたことを書くのはやめておきましょう。


僕は応援します、心から。

§ [clip] Daily Clipping

'NASAcast' Provides Audio and Video for the Portable Digital Age (NASA)
NASAがPodcasting/VideoCastingを始めた。わーい!登録、登録。
NASA Podcasting
Science@NASAは前からPodcasting用のRSSフィードを配信していたけれど、今度はNASAのメインサイトがPodcasting/VideoCastingに対応。最近、ニュースリリースに混じって音声ファイルが提供されているなあと思ったけれど、これに向けての布石だったみたい。
Podcastの内容は、科学者やエンジニアへのインタビューとその週のトピックス(NASA TVのThis Week at NASAの音声版)の配信、VideoCastは今のところNASA TVのThis Week at NASAをそのまま配信という感じ。Podcastはトランスクリプトが公開されているし、VideoCastはトランスクリプトに加えてクローズドキャプション付も配信されているので、リスニングが苦手でも大丈夫。
Salty Martian rocks may have formed without seas(New Scientist)
去年、「火星に海があった証拠発見」という大ニュースが火星ローバーからもたらされたけれど、もしかしたら海がなくても塩分を含んだ岩石が形成されるかもしれないよ、というお話。
海の存在の証拠とされたのは、いわゆる「ブルーベリー」と呼ばれる特徴的な生成物と、岩石が「硫酸塩」を含んでいたことによるものだけれど、火山から噴出した水蒸気と二酸化硫黄が反応して硫酸が生成、硫酸と火山灰が反応して硫酸塩を生成、硫酸塩と大気中の酸素が反応という形で、あの特徴的な「ブルーベリー」が生成した可能性がある、ということらしい。噴煙の中でまるで雹が形成されるように、あの形状が形成された可能性があるそうな。
参考)Meridiani Planum "Drenched":Science@NASA 翻訳記事
APOD: 2005 December 20 - Star Trails Above Mauna Kea(APOD)
ハワイ島、月に照らされたマウナケア山と星空の写真。なんとも美しい。
元ファイルは、Gemini Observatoryにある
一見普通の星野写真だけれどキャプションによると、1分間露光した写真を150枚コンポジットして作ったらしい。Gemini Observatoryのページからは高解像度のtiff画像や、動画も落とせる。動画は必見、といいたいところだけれど放送用クオリティのため181MBもある。もうちょっと軽いのを作ってくれないかしら?
非商用、個人利用ないし教育目的ならクレジットをつければ加工・転載も可。
Gemini Observatory Image/Video Usage Policy

§ RSSの著作権

Gemini ObservatoryがRSSでニュースリリースを配信しているのを見てぼんやりと考える。RSSでニュースリリースを配信することの意味って何だろう?いやもちろん便利だからなんだけど。ここで書きたいのはそういう「意味」じゃなくて、その便利さについてのもう少し抽象的なお話。

ふと気づいたのは、これがある意味で「この情報は集約的に取り扱ってもいいですよ」という意思表示になるということだ(「メディアはメッセージ」やね)。アンテナサービスなんかで、ページの更新部分を勝手に切り取ってくるものがあるけれど、あれはあからさまに著作権を破っている(同一性保持権の侵害だよね)。少なくとも僕はあの切り出されたコンテンツを閲覧することには良心の呵責がある。RSSにはそれがない。そりゃそうだ、そのことを意図して配信されているんだから。RSSはリーダーなどを使って、それぞれの項目がバラバラに切り出され、他の配信者のRSSと混ぜて使われることを前提としている。これはとても大きな違いだ。意識的かどうかはともかくとして、RSSを配信するということはそのことを了解しているということだからね。

ただ、そのことに気づいている配信者がどれくらいいるかというと...これは、ちょっと怪しいかもしれない。

たとえば、新聞社各社が参照先としている日本新聞協会のこの声明が新聞社が発行するRSSに適応されるとすると、ちょっと困った事態になる。あるいは、朝日新聞は実際にRSSを配信しているけれど、その"<dc:rights>"タグにはこんなことが書いてある。

"Copyright 2005 Asahi Shimbun. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission."

そしてこのRSSへのリンクが掲載されたページには、同社の「リンクの際は許可を取ること」と書かれた規定にリンクが張られている。

下手をすると、Webサービスとして提供されているRSSリーダーはこれらの方針に抵触する可能性がある。少なくとも、朝日新聞の規定に従うなら、Webサービス型RSSリーダーは、朝日新聞のRSS Feedを公開設定すると、新しいRSSが更新されるたびに朝日新聞に連絡を取らなくちゃいけない。極端なことを言えば、ローカルで動作するRCCリーダーだって、「個別の記事をバラバラに切り離して、他の新聞社の記事と混ぜる」という行為そのものが同一性保持権に抵触している可能性がある。少なくとも、これまでの各新聞社の著作権に対する考え方を見ると、とてもそういう読まれ方を推奨しているとは思えない。でも、RSSはそう使われるのが「普通」だよね。

たとえば、こういういたずらを考えてみよう。各社が配信しているRSSファイルから記事を拾い出して、あたかも一つの新聞であるかのようにレイアウトして出力するRSSリーダー(いえ、ただのブラウザですから再配布には当たりません)、その名も『勇魚の勝手新聞』(ソフトの名前ですよ、もちろん)。そうだ、読者の利便性を考えてWebサービスとして提供しよう。別に特殊な技術は何もいらない、ごく普通のRSSリーダーの表示をちょっといじるだけで実現できる。

さて、これは著作権違反だろうか?見た目は真っ黒だ、どう見ても犯罪。でも中身は普通のブラウザやRSSリーダーがやっていることと何も変わらない。RSSを配信しているということは、RSSリーダーで読まれることを意図しているということだ。『勇魚の勝手新聞』が著作権法に抵触するなら、他のブラウザ/リーダーだって同罪じゃないか。ちょっと極端だけれど、メディアとコンテンツを切り離すというのはこういうことだ*1

RSSの使われ方はその技術が普及するにつれて収束するどころかどんどん多様性を増している。そりゃそうだ、そもそもXMLは「データと表示を切り離す」ことを意図して作られたものだからね。でも、この考え方はこれまでの印刷物を対象とした著作権とは相容れないものなのかもしれない。RSS/XMLはずいぶん普及したし、将来性もありそうだ。なにより楽しいことが沢山できそうな気がする。いつまでも古臭い考え方に拘泥していると...と愚痴るのは簡単だけれど、僕はできれば著作物はフェアに使いたいと思っている。いったいどうすればいいんだろう?

*1 まあ、それを言い始めれば、HTMLだって、文書の構造をタグで指示しただけのものであって、何もそのとおりにレンダリングする必要はまるでない。タイトルタグだけをレンダリングするブラウザがあって、1画面に複数のサイトを表示する機能がついていたとしたら?