Garbage Collection


2006-04-19

§ **[clip] NASA Announces Black Holes Found to be "Green"(NASA)

NASAがチャンドラX線天文衛星の観測によって分かったブラックホールに関する新事実を、4/24の記者会見で発表するようです。なんだろう?ニュースリリースのタイトルは「ブラックホールは緑色」ますます分からん。

The relation between accretion rate and jet power in X-ray luminous elliptical galaxies(astro-ph)~

で、どうやらこの論文に関連した内容らしい。予習をしておこうかな...

「X線による観測データから予測されるボンディ降着率の値と銀河から噴出しているジェットの強さの間に相関関係があった」わっはっは!まるで分からないぞ。えーと、そもそもボンディ降着率ってなんですか?...(1時間経過)...重力とガス圧を考慮したブラックホール周辺の質量降着のモデルの一つ、でいいのかな?うー...(1時間経過)...あー...(1時間経過)...あまり自信が無いけれど、こういうことかなぁ。

ブラックホール近傍のガスは、重力に引かれて落ち込みながらガスの円盤(降着円盤)を形成する。そのガスの大半はブラックホールに落ち込むんだけれど、一部が「あふれて」両極方向に向かって猛烈な勢いで吹き出すことになる。これがブラックホールの「ジェット」と呼ばれる現象。ブラックホールそのものは観測することはできないけれど、このジェットはものすごくスケールが大きくて莫大な電磁波を放射しているので直接観測することができる。

一方、ブラックホール周辺のガスの量はさすがに小さすぎて直接計測することができない。ただ、周辺の天体の動きや、放出しているエネルギー量からブラックホールの質量とかガスの温度や密度を間接的に知ることができる。で、ボンディ(H.Bondy)さんが考えた「ブラックホールの周辺にできるガス円盤のサイズはBHの質量とガス圧のバランスで決まる」というなんともシンプルな理論からブラックホールに落ち込むガスの量を予測することができる。

今回、複数のブラックホールを観測した所、このジェットのエネルギーの「実測値」とこのガスの量の「理論値」に相関関係があった、ということみたい。

これ、何が面白いかというと。一つはブラックホール周辺の様子を解明するすごく重要な手がかかりになるかもしれないということですね。実は、ブラックホールの周りで何が起こっているのかは未だによく分かっていません。ガスの円盤があるらしいということはわかっていますが、どうやって形成されるのかとか、どうやって物質が内部に向かって落ちていくのかとか、どういうメカニズムで電磁波が出るのかとか、どういうメカニズムでジェットが吹き出しているのかなんてことは、まだよくわかっていないんです。

今回、ジェットのエネルギーとガス円盤の圧力がダイレクトに結びついていたということは、ガス円盤が回転していようが磁気を帯びていようが、ブラックホールが自転していようが止まっていようが、あまり関係ないということです。このことはブラックホールの挙動を説明する様々な理論にかなり大きな制限をかけることになります。多くの理論やシミュレーションが再検討を迫られるかもしれませんね。

もう一つは、ジェットのエネルギー量が分かれば、中心にある天体の質量に見当がつくかもしれない、ということでしょうか。これまで、銀河の中心にあるブラックホールの質量を測るには、周辺の天体の挙動を精密に測る必要がありました。これはなかなか大変なんですが、この論文にある相関関係が偶然でなければ、ジェットのエネルギーを測れれば、中心星の質量に目安がつけられるということになります。これはブラックホール探しの強力な武器になる可能性がありますね。

と、憶測交じりの予習はこれぐらいにして、4/24のリリースが出るのを待ちましょうか。で、なにが"Green"なんだろう?

§ **[clip] 「講演と映画の会」、立ち見も出る大盛況

いってきました。いや、今年もとても面白かったです。

平林久先生は今年の3月31日をもって「はるか」のミッションが終了したことを受けて、ミッションに関わった研究者・技術者を紹介しながらミッションの概要を、後半では「はるか」のサイエンスと「はるか2」のお話を少し。プレゼンテーションのあちこちに入れられた自筆のイラストがとてもいい感じでした。

川口先生は、前半ではイトカワ近傍ではやぶさに何が起こっていたかをデータや映像を交えながら克明に描写してくださいました。後半では、サイエンスの成果の一部を紹介、とても面白い事実が次から次へと見つかりつつあるようです。実はここでは書けないような話/資料も出たんですが、もちろんここでは書けません。悪しからず。

最後に、JAXA製作の広報映画の上映。先だって行われたペンシルロケットの水平試射の再現実験のドキュメンタリー。JAXAの若手職員によって組織された実験班の姿を追いながら、プロジェクトの概要を説明するという内容でした。

リンク先では、当日配られたパンフレットが公開されています。とくに「はやぶさ」の資料ははやぶさミッションの何がすごいのかがよく分かるとてもいい資料だと思います。

今年も当日のスライドが公開されるといいんですが...ちょっと無理かな?