Garbage Collection


2006-05-23

§ **[clip] NTT、光が自在に曲がる現象を発見 - 映像機器・プリンタの小型化も?(mycom)

電圧をかけると段階的に屈折率が変化する物質を使って、光を曲げることに成功というお話。おぉ!すばらしい!「現在最も広く利用されている可動ミラーと比較すると、体積は1/100以下、動作速度は100倍以上と、小型化・高速化が可能」らしい。電圧をかけると屈折率が変化する現象は電気光学効果(EO効果)としてこれまでも知られていたんだけれど、今回NTTが作ったのは、電極間の屈折率が段階的に変化する物質。だから、これまでのものに比べて格段に屈折率の変化が大きいんだって。

なんだかいろいろ応用範囲が広そうだよ!たとえば...ドーナツ状に電極を配置したらレンズにならないかな?

cf)光が自在に曲がる新現象を発見 - KTN結晶で超小型・超高速 光ビームスキャナを開発(NTT)

§ **[clip] GAO: NASA's Ability to Meet Future Deep Space Communications Demand Is at Risk

NASAのDeep Space Networkのキャパシティが限界に達しつつある、というお話。アメリカは今後、月への飛行を中心として、有人/無人の深宇宙探査を積極的に行うプランを発表しています。このプランを維持するためには、現状のDSNは能力不足だという調査結果が出たようです。

Deep Space NetworkというのはNASAが擁する深宇宙探査用の通信ネットワークのこと。地球の軌道を離れて他の惑星に向かう探査機と通信を保つためには、地球の自転に合わせて、地球各地の受信アンテナを次々に切り替えていく必要があります。NASAはこのために使う直径26mから70mの巨大なパラボラアンテナを、ゴールドストーン、マドリード、キャンベラに設置しています。火星にいる2台のローバ、火星周回軌道のマーズリコネッサンスオービター、スターダスト等など...みんなこれらのアンテナを使って追跡されています。それ以外にも地球を周回している衛星の追跡をすることもあるし、他国の探査機の追跡の手伝いもしてます(この間、日本のはやぶさがDSNを借りてましたね)。これ以上探査機が増えるとやばいかも...ということですね。

これは、ちょっと深刻な事態かもしれません。探査機を飛ばしても、通信に使える時間や帯域幅が限られてしまうと、ミッションが制限を受けます。あるいは何かトラブルが発生したときに対応が取れなくなってしまうかもしれません。

うー、国家間の貸し借りという形じゃなくて、国際共同とか教育機関/民間運用でもっと柔軟性の高いネットワークが構築できないかなあ。そろそろ、こういうリスクは分散化することを考えた方がいいんじゃないだろうか?

§ **[clip] The space elevator: going down?(Nature)

カーボンナノチューブは、軌道エレベーターに使うには弱すぎる、というお話。現状のカーボンナノチューブの製法では平均で4マイクロメートル毎に炭素原子の欠損が起き、そのために、たとえ長いナノチューブが生成できたとしても、衛星軌道に届くようなケーブルを作ることができない、ということのようです。

Natureはすぐに記事が消えてしまうので、元論文にもリンクしておきましょう。~

cf)On the Strength of the Carbon Nanotube-Based Space Elevator Cable: From Nano- to Mega-Mechanics(arXiv.org)

軌道エレベーターというのは、要するに静止衛星から長ーいケーブルを下ろせばロケット使わずに宇宙へ行けるよね、というアイディア。まあ、技術的にはいろいろクリアしなくちゃいけないことがあるんだけれど、一番問題なのは「ケーブルにかかる張力に耐えられる物質が存在しない」ということ。今の所、唯一可能性があるのが炭素分子が円筒形に並んだ「カーボンナノチューブ」です。実験室のデータでは軌道エレベーターに使える強度を持っていることが分かっています。

が、純粋なカーボンナノチューブは数ミクロンという長さのものしか作られていませんし、寄り合わせて長くしたものも作られていますが、強度が足りないことが分かっています。これまで、軌道エレベーターの研究者はいつか長いナノチューブを精製する技術ができれば、この問題を解決できるとしてきました。今回の研究は、その楽観的な視点に冷や水を浴びせるものです。がーん。

もちろん「うまく寄り合わせれば大丈夫!」という反論もあるけれど、ちょっと旗色が悪そう。まあ、「○○なんて出来っこない」という予測は外れることになってますから...ブレイクスルーがあるといいなあ。2018年に軌道エレベーターを就航させる!と息巻いていたベンチャーがありましたが、もう少し先になりそうですね。生きているうちにプロトタイプぐらいは見られるかな?