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2006-09-25

§ **[clip] M-Vロケット7号機による第22号科学衛星(SOLAR-B)の打上げ実験結果について(JAXA)

9月23日に打ち上げられたSOLAR-Bは無事所定の軌道に乗り、太陽電池パネルの展開をしたとのこと。これを受けてSOLAR-Bに「ひので」という名前が付けられたそうな。

うーん、悪い名前じゃないとおもうけれど、衛星に「現象」の名前が付くというのはちょっと違和感があるなあ。ひので、ひので、ひので...なんかいいような気がしてきた、慣れの問題かな。

§ **[clip] 9月24日付・読売社説(2)[最後のM5]「迷走するロケット開発政策」(YOMIURI ONLINE)

うーん、迷走とはちょっと違う気がするなあ。JAXAの発表を見ている限りは決して方針が揺らいでいるようには見えない、ただ次の一手を打つのが遅すぎるという点を除いては。ただ、これも次の一手を打つ余裕がないという一点に尽きるような気もする。

そんなに複雑な話じゃない。今手元には大型ロケット(H2A)と中型ロケット(MV)がある。そして新しい中型ロケットを開発中(GX)。どれか一つを止めて新しいのを作る。MVはちょうど在庫が切れたところだし、開発を継続するとGXと被る。ここはMVをやめて小型ロケットを一つ作れば、大中小のバランスの取れたラインナップになる。

ただここに、「M-Vがとてもいいロケットだった」「GXがいつまでたっても完成しない」「新しい小型ロケットのコンセプトがいまいち」という事情があるから少し話がややこしい。「次世代ロケットの先行きが見えないのにMVを捨てちゃうのかよ!」という反論が出るのもまあ仕方がないのかもしれない。

理想を言えば、もう少し先んじて小型ロケットの開発に着手していれば、完成するまでの穴が最小限で済んだかもしれない。あるいはM-Vを継続させつつ新しいロケットを作ることができればよかったのかもしれない。ただ、今の予算と人的なリソースでは2機の運用と2機の開発を同時進行するのはかなり難しかったはず(っていうか無理だ)。もう少し計画的に物事を進めていれば...というのは簡単だけれど、こうなってしまった以上ぐだぐだいっても仕方がないよね。

僕は個人的にこのM-Vを退役させて小型の固体燃料ロケットを作るという方針を支持したい。たいした理由はない。なんとなく、そっちのほうが楽しそうだから。

M-Vのプロジェクトマネージャーであり、次世代小型ロケットの開発主任である森田泰弘氏は新しいロケットの開発目標にまず「運用性」「即射性」をあげた(逆に言えば、これがM-Vの欠点であるともいえる)。「安くて信頼性が高く、いつでも欲しい時に打ち上げられる小型ロケット」というのはかなり魅力的なコンセプトだ。なにしろ、大きな衛星はお金がかかる。10年20年という時間をかけて、高機能で大型の衛星を打ち上げるというのもいいけれど、数年の開発期間で小さな衛星を継続して打ち上げるというやり方はすごく魅力的だ。なにしろ回転数が上がれば人が育つ。それは何にも変えがたいリソースになるはず。

それはロケットそのものにもいえることで、新しいロケットの開発を通じて、M-Vの改良という仕事では得られないノウハウや知識が開発チームの中に蓄積される。まだM-Vを作った時のノウハウが失われていないうちに新しいロケットを作り始めるのは悪い選択肢じゃない。10年後、固体ロケットを作れる人間が誰もいないなんて状態になってからじゃ遅いのだ。M-Vで得たものを活かすなら今がチャンスなのかもしれない。

僕は個人的に「M-Vを実際に打ち上げてきたスタッフが、運用のしやすさに主眼を置いて作る小型ロケット」という奴を見てみたい。限られた予算と時間の中でその理想にどこまで近づけるか。前途洋洋というわけには行かないけれど、このロケットがうまくいけば、日本の宇宙開発に新しい展望が開ける可能性がある。悪くない話じゃないかな?

これからも期待してます。がんばってください。

ref.M-Vロケット7号機打上げ成功、次期固体ロケットは2段階で大型化も (MYCOMジャーナル)