Garbage Collection


2007-02-01

§ *Daily Clipping

§ **「はやぶさ」のサンプル回収容器が帰還カプセル内に収納された

小惑星探査機「はやぶさ」の運用チームは、昨年9月から探査機のバッテリーの再充電を行い、1月17日〜18日にかけて、探査機内のサンプル回収容器を帰還カプセルに収納し、蓋を閉じる作業を実施。全ての機器が正常に動作したことを確認した。~

ref.「はやぶさ」試料容器のカプセル収納・蓋閉め運用が完了 (ISAS/JAXA)

きゃー!おめでとうございます!地球帰還に向けてのハードルをまた一つ越えましたね。

なんだ、充電して容器のふたを閉じただけか、と思うかもしれないけれど、実はこのバッテリーの充電は今回の帰還に向けての準備のなかでももっともリスクの高いミッションの一つ。

リチウムイオン電池というのは、実は扱いがとても難しくて、電圧が下がりすぎると次に充電が出来なくなり、逆に充電しすぎると過熱したり破裂したりする危険性がある(一時期各社のノートパソコンが発火したのはこれが原因)。さらにいったん過放電状態になると、かなり不安定になり、内部でショートが起きたり、電圧が過度に上昇して過充電になるかもしれない。

で、はやぶさはイトカワへのタッチダウンの時のトラブルで姿勢を乱し、あちこちに不具合が出ていたけれど、積まれた11個のうち4個が電圧が下がりすぎている「過放電」の状態だったのもその一つ。このまま普通に充電したのでは不具合を起こしたバッテリーが爆発する可能性がある。残念ながら充電するバッテリーを選ぶ機能ははやぶさにはついていない。残りの7つに充電しようとすれば、不具合を起こした電池にも電気が流れる。不具合を起こしたバッテリーが過充電されるのを回避しつつ、残りの7つのバッテリーを充電する方法はあるか?

そこで考え出されたのが「バッテリーが充電しすぎるのを防ぐための回路を使って、バッテリーを充電する」という超裏技。どうやら、この回路がオンになっていると僅かながらバッテリーに電気が流れる。正常だった7つのバッテリーはこの僅かな電流のおかげで機能を保っていたらしい。じゃあ、この迂回用の回路をわざと動作させて少しづつ充電すれば、不具合の起きているバッテリーに負荷をかけずに、正常なバッテリーへの充電が出来るかもしれない。

というわけで、電池メーカーの協力を仰ぎつつ、地上と「はやぶさ」本体でテストをおこない、問題が起きないことを確認。2006年の7月頃から探査機の状態をチェックしながら充電を開始。電圧が上がり過ぎないように細心の注意を払いながら約3ヶ月かけて充電を完了、その後このふた閉じミッションまでのあいだも、電圧を一定に保つために充電を繰り返し行ったとのこと。

順調に行けば、2月の前半にはイオンエンジンの点火が行われ、地球に向けて出発するとのこと。楽しみ!

はやぶさのニュースを聞くたびに、トラブルの後、通信が復活した時の「この探査機が生きていることが奇跡だと思って欲しい」という川口プロジェクトマネージャーの言葉を思い出す。確かに奇跡は起きたのかもしれないけれど、それを生かすことが出来たのは、やっぱりただの運だけじゃないよね。いや、本当にすごいチームだよ。