Garbage Collection


2006-08-10

§ **[clip] Astronomers Crunch Numbers, Universe Gets Bigger(Ohio State Univercity)

宇宙はこれまで考えられていたより、15%ほど大きいかもしれない、というお話。まじで?!

オハイオ州立大のKris Stanek博士が、新しく開発した計測方法で銀河までの距離を測ってみたところ、これまでの数値より15%ほど遠くにあったらしい。これは宇宙の膨張のスピードを表すハッブル定数が間違っている可能性があるそうな。~

ref.The First DIRECT Distance Determination to a Detached Eclipsing Binary in M33(astro-ph)

これはDIRECTと呼ばれるプロジェクトの成果。遠くの天体までの距離を測るための基準に使っているM31やM33までの距離をこれまでのセファイドと呼ばれる変光星を使う方法じゃなくて、2重星を使う新しい方法で正確に測りなおそうというものみたい。この方法だと距離を測るのがずっと簡単で、ずっと正確になるらしい。

セファイド型変光星というのは、明るさが変わる周期と明るさに関連があって、周期が分かればその星が本来どれくらいの明るさで光っているかが分かる。これを地球から見た明るさと比べれば距離が分かるというわけ。で、新しい方法は2重星の公転周期を測って質量を見積もり、その質量から星の明るさを導き出す。なるほど。

以前はハッブル定数は以前は学者によってばらばらだったけれど、最近ハッブル宇宙望遠鏡(セファイドによる計測)やWMAP(宇宙背景放射の揺らぎとシミュレーションの結果を比べることで算出)で測っていた数値はどんどん精度が上がる方向できていたような気がする。そういえばチャンドラX線望遠鏡がまったく別の方法(ニヤエフ-ゼリドビッチ効果によって前景の高温ガスで宇宙背景放射が歪むのを利用して距離を測定する。なんだそれは?)でハッブル定数を確認していた。~

ref.Chandra Independently Determines Hubble Constant(Chandra X-ray Center)

複数の異なる方法を使って測られた値がほぼ一致していたのに、この新しい方法で測った数字が違っていたということは、この新しい方法に何らかの見落としがあるのかもしれない。あるいは何らかの新しい天文現象や物理現象の可能性もある。もちろん、この結果が正しくて、これまでの数値が間違っているのかもしれない。もしこれが本当なら、すごい発見。もし間違えていたとしても、とても興味深い観測結果であることは間違いない。続報が楽しみ。

§ **[clip] Chandra Independently Determines Hubble Constant(Chandra X-ray Center)

上のエントリで少し触れた、チャンドラがハッブル定数を測ったよというお話。気になったのでちょっと調べてみた。~

ref.Determination of the Cosmic Distance Scale from Sunyaev-Zel'dovich Effect and Chandra X-Ray Measurements of High-Redshift Galaxy Clusters(ApJ)

ここで使われたのはスニヤエフ-ゼルドビッチ効果という現象。これは、宇宙背景放射が前景の銀河団の高温のガスの中を飛び回る電子によって散乱する現象。散乱の量はガスの温度と銀河団の実サイズに依存する。X線で観測すればガスの温度や電子の密度は推定できるから、あとは電波望遠鏡でその天体を観測してどれくらい宇宙背景放射が歪んでいるかを計測すれば天体の実サイズが分かる。実サイズが分かれば地球から見てそれがどれくらいの大きさに見えるかで距離が分かる。なるほど。なんとなーく分かったような気もする。

求められたハッブル定数は76.9km/sec/Mpc。これはWMAPで計測された71±4 km/sec/Mpcの誤差からちょっとはみ出すくらい。まったく違うメソッドで測られたことを考えるなら、かなりの一致といっていいんじゃないかな。

そういえば、「宇宙背景放射の観測は思っていたより当てにならないかも(astroarts)」という話ででてきたのがこのスニヤエフ-ゼルドビッチ効果だった。あれは、結構歪んでるかもしれないから色々考え直さないといけないかもよ、という話だったっけ。

§ **[clip] Record mirror for Euro telescope(BBC)

こちらはESO(欧州南天文台)が建設を計画している、口径45mの超巨大望遠鏡、Extremely Large Telescope (ELT) のお話。どうやら、これ、以前OWLと呼ばれていた100m望遠鏡プロジェクトがスケールダウンしたものらしい。技術的なレビューは通ったものの、予算的に不可能と判断され、30m-60m級のものを作るという形になったらしい。いや、それでも十分すぎるほど大きいんだけどね。建設地は現在選定中。早ければ2010年〜11年にかけて建設を始めるそうな。

§ **[clip] U.S. Space Pioneer, UI Professor James A. Van Allen Dies(SpaceRef)

ジェームズ・ヴァン・アレン死去。名前でピンときた人もいるかもしれない、アメリカ初の人工衛星エクスプローラー1に積んだガイガーカウンターで、地球の周りを放射線帯が取り囲んでいることを発見した人。この放射線帯は太陽からの荷電粒子が地球の磁場にとらえられたもので、彼の名前を取ってヴァン・アレン帯と呼ばれている。この他にも、パイオニア10号で木星の放射線帯を、パイオニア11号で土星に放射線帯があることを発見している。

感謝しよう。彼こそが人工衛星で科学的な観測を行うことの価値を始めて証明してみせた「科学衛星の父」だよ。

心からご冥福をお祈りします。

本日のツッコミ(全1件) [ツッコミを入れる]
> TrackBack (2006-08-23 20:44)

http://quotations.livedoor.biz/archives/50468692.html<br>名言・格言・成功哲学・ことわざを英語で学び、モチベーションも向上!<br>ジェームズ・アレン 環境 【英語の名言・格言・ことわざ】<br>ジェームズ・アレンの英語の名言・格言Circumstances do not make the man, they reveal him. James Allen環境が人間を作るのではない。環境はその人間の本性を明らかにするのだ。            ジェームズ・アレンワ...